ニートの逆襲〜俺がただのニートから魔王と呼ばれるまで〜

芝桜

文字の大きさ
23 / 215

第22話 帰宅

しおりを挟む




「そろそろか……」

  俺は1階層にいる魔物をひと通り狩った後に、出口に繋がる通路の前で夜になるのを待っていた。
  マジックテントにあってティナたちの時計に時刻を合わせた懐中時計を見ると、夜の22時を回ろうとしていた。
  ティナたちはもう帝国に着いただろうか? 首輪は俺の錬金スキルで見た目だけはうまく修復しておいたし付いてた魔石の魔力も抜いておいたから、一度外したことはバレないとは思うが……
  一旦この日本の占領軍の子爵に預けられてから帝国に送られることになると思うと言っていたから、案外まだ日本にいるのかもしれないな。

「うっし! 行くか。念のためデビルマスクしていくか」

  俺は心配する気持ちを振り切り、とにかく外に出ないと何も始まらないと思い、空間収納の腕輪からジョークグッズ魔道具であるデビルマスクを取り出した。
  いざ見つかって鷹の目と暗視のコンボで顔を見られた時のために、少しでも顔を隠しておかないとな。

  俺は黒のシャツに黒の革ズボン、黒革のマントに黒のブーツ。黒の目と鼻を覆う仮面に耳の上から蝙蝠の翼が飛び出している自分の姿を見て、これで見つかったら問答無用で撃たれるなと思うのだった。
  なによりはめている指輪と腕輪を隠すために、両手には黒革のフィンガーレス手袋をして手首には包帯を巻いている。
  どこからどう見ても厨二病発症中である。

「闇に紛れるためにこの服を選んだけど……誰も見てないしまあいいや。行こう」

  俺は細かいことは気にせず探知を掛けながら出口へ向かって走っていった。

  そしてダンジョンの出口に出るとすぐに入口がライトアップされた。
  待ち構えていたのか!? 一瞬そう思ったが人の反応は山の下の方にしかない。
  恐らくセンサーに反応してライトが点くやつなんだろうと思い、すぐに飛翔して山の上にある木々に紛れ木の上に降りた。

  山の麓の方では人が動く気配がする。

  それにしても帝国人か? あの赤毛の女ほどじゃないが魔力の密度が濃い……

  俺は滅魔を2年近くほぼ毎日飽きるほど使い続けてきたので、魔力を人よりも感じやすくなっていた。恐らく吸収した魔力は全て一旦俺の身体を通るから、身体が様々な性質の魔力を覚えたんだと思う。
  探知のスキルは弱い魔力を飛ばしてその反射でレーダーのように敵を見つけるスキルだから、その反応の違いで魔物の区別だけではなく、その者の持つ魔力の質みたいなものもわかるようになっていた。

  これは探知をしていなくても、近くにいる人間が相手でもだいたいわかる。
  俺が感じた山の麓にいるであろう帝国の兵士の魔力反応は、ティナたちと比べ異質なものだった。

  魔力のある世界で進化した人間だからだろうか? しかしそれだと獣人やエルフとこれほどにも違いが出るのはおかしい。人間特有の変化なのだろうか?

  俺は気味の悪い反応に首を傾げたが、今はそれどころじゃないとすぐにゲートキーを取り出し木の枝に乗ったまま自宅を思い浮かべ空中にキーを挿し込んだ。
  そして無事キーを回すことができ、輝くゲートが現れた。

  俺はこの目立つゲートをさっさと通り抜け、2年近くいたこの桜島の地と別れたのだった。




「ただいま~。やっぱ真っ暗だな。街灯は点いてないのか。向かいの家は電気が点いてるっぽいから節電か?  」

  ゲートをくぐるとそこは自宅の玄関で、夜ということもあり真っ暗だった。
  自宅は自動引き落としにしていないのでとうに電気を止められてるのはわかっていたが、もう少し外の明かりで明るいと思っていた。
 うちは戸建で道路の街灯が近いこともあり、普段はここまで暗くないだけど街灯が点いてないため真っ暗だ。  
  玄関から見えるリビングの先には向かいの家の灯りが見えたので、恐らく節電かなにかだろう。

  占領されている国だしな。家庭に電気が通っているだけでもありがたいと思わないとだめか。

  とりあえず暗視のスキルを発動しているので行動に問題ないが、暗い自宅じゃ帰ってきた気分がしないので俺は空間収納の腕輪から魔導光球盤を取り出し魔力を通した。
  すると手のひらサイズの厚さ10cmほどの黒い盤から光球が飛び出し、リビングを明るく照らした。

  これはほぼどの骸も持っていたダンジョン探索には必須の照明の魔道具だ。
  結構明るくて移動をしても、この魔導光球盤と一定の距離を保って付いてくるので重宝している。
  ダンジョンは真っ暗ではないが、薄暗くそれほど先の方までは目視できない。
  暗視のスキルも魔力消費が少ないとはいえ、常時発動していると魔力回復速度が遅くなる。
  なので上位の冒険者は必ず持っているらしい。

  これはダンジョンのドロップ品としては、上級ダンジョンでちょこちょこ見つかるのでそこまで珍しいものではないらしい。俺も骸から頂いた物と宝箱に入っていた物などで50個ほど持っている。
  でも日本じゃレアアイテムだろうな。
  占領された国は、帝国に忠誠を誓った者以外は上級ダンジョンの立ち入りを禁止されているらしいからな。
  そりゃ力を付けられて反乱されたら堪らないだろう。地球の人口は60億、帝国は3億らしいしな。
  それでも各地で反乱はあるだろうにいったいどうやって統治しているのか……

  俺は歴史の授業で聞いた太平洋戦争の際の欧州諸国による占領政策を思い浮かべ、大量虐殺とかしてんだろうなと想像していた。
  嫌な気分にはなったが、でもそれは戦中戦後問わず幾度も各国で起こっていたことだ。少数民族の弾圧なんて毎日世界のどこか、いや隣国でも起こっていた。不当逮捕に収監。女性は毎日強姦されているなど、ネットやニュースでそのことは知っていた。嫌な気分になりながらも自分にはどうしようもない、関係ないと日本という安全な場所で見て見ぬ振りをしていた。

  俺たちがニート特別雇用法で連れて行かれたことも、世間からはそう思われていたんだろう。ニュースではダンジョンに入れられたなんて一言も報道していなかったけどな。法令が施行されました。終わりってだけだ。

  さすがに目の前で虐殺なんかあったらなんとかしようと思うし、自分の知り合いがそんな目にあおうものなら全力で阻止するよう動くだろう。でも世界のどこかで俺の知らない人たちが受けている仕打ちなら、可哀想だとは思うがどうしようもないし、俺には何もできない。今までと同じだ。

  俺はどうか日本で虐殺とか起こってませんようにと思いながら、明るくなった懐かしの我が家を見渡した。
  特に留守中に空き巣に入られた気配もなく、そのまま2階の自室へと向かった。

「おお~懐かしの俺の部屋……帰ってきたぞー! 俺は帰ってきた! 」

  俺は懐かしの部屋を見て込み上げてくる感情を抑えきれずベッドにダイブした。
  埃が舞った。

「ぐふっ……ゴホッ……あ~窓少し空いてたな。失敗したな。しかし電気が通ってないとパソコンも使えないか……どうやって情報を……駅前にインターネットカフェがあったな。いや、敗戦国なのにやってるか? 普通潰れるか……三井のとこ行くか」

  パソコンやスマホで情報を入手するのが当たり前だったので、俺は電気が通ってないと何もできないことをすっかり忘れていた。
  スマホは新宿で登録した際に探索者協会に没収されたままだし、持っていない。
  そもそもスマホが使えるかどうかもわからない。

  ここから高円寺の駅までは徒歩で20分、今の俺なら走っていけるから10分だが戦争に負けた国だ。相当不景気なはずだ。潰れてるだろうと思い、高校の時の友人の家に行くことにした。
  三井は気さくで頭のいい好青年だ。企業勤めをしていたが、実家の肉屋を継ぐために5年前から実家に戻ってきていて月に一度は一緒に飲みに行ったりしていた。
  三井には俺がニートなのは内緒にしてある。まあ気付かれてたとは思うけど、そういうのには触れてこないいい男なんだよ。エロいけど。

  ゲートキーは6時間置かないと再び使えないので、俺は徒歩で行くことにした。隣の駅だしここからは割と近い。走れば10分掛からなさそうだ。飛べばあっという間だけど、まさか飛ぶわけにはいかないしな。

  そう思いデビルマスクを外して玄関でブーツを再び履き、外に出ようとドア開けたらドアに挟んであったのであろう二つ折りにされた紙が落ちてきた。なんだろうと見てみると、三井からの置き手紙だった。

『心配してる。連絡してくれ』

  俺は少し胸が苦しくなってそのまま玄関の前でしばらく佇んでいた。

  両親も他界して兄弟もいない。親戚とはもう10年以上疎遠で、三井やほかの友人たちも突然俺が連絡取れなくなって心配してくれているとは思っていたけど、日本は戦争に負けて占領されたと聞いた時にそれどころじゃないだろうなとは思っていた。

  それでも家が近いとはいえこうして自宅まで来てくれた。ドアに挟んだってことは何度か帰って来てないか確認しにも来たのだろう。
  それがなんだか無性に嬉しかったんだ。

  俺はそのメモ書きのような手紙をズボンのポケットにしまい、三井の家へと走って向かった。

  会ったら異世界人のエロ本を複写させてやろう。

  そう思いながら。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...