ニートの逆襲〜俺がただのニートから魔王と呼ばれるまで〜

芝桜

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第27話 ラージヒール

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「そうか、やっぱり自衛隊が……」

  三田たちと再会しお互いに生きていたことを喜びあったあとは、とりあえず落ち着いて話をしようとそれぞれが部屋にある椅子へ腰かけた。

  改めて俺を見た3人はなんか若返ってません? とか驚いていたが、ランクが上がって魔物の肉を毎日2年間食べてたら若返ったと言ったらそういうこともあるかもと納得していた。

  そしてまずは三田たちがどうやって生き延びたのかを聞いてみたんだ。
  そしたらやっぱり自衛隊の人たちが助けてくれたそうなんだよね。

「ええ、刃鬼に見捨てられ馬場さんの号令で出口に向かって走った時に、僕たちは火蜥蜴の火球を足や腕に受けて動けなくなっていました。そして火蜥蜴が僕たちを食べようと近付いてきたところで、広場でヴェロキラプトルと戦っていた自衛隊が追いついてきて助けてくれたんです」

「自衛隊の人たちも大怪我を負ってたのに、残り少ない魔力でスモールヒールを俺たちに掛けてくれて背負ってくれて……」

「初級ポーションも使ってくれました。自分らはそれでなんとか生き残ることができたんです。でも出口までの道のりで多くの自衛隊員が力尽きて……自分らを見捨てていれば助かった隊員もいたはずなのに……」

「そこまで自らを犠牲にして……」

  貴重なポーションまで三田たちに……
  広場でヴェロキラプトルの盾となってくれて、火蜥蜴の群れから三田たちを助けてくれた自衛隊には頭が上がらないな。
  いつか恩返ししたいけど、もう自衛隊は無くなっちゃったんだよな。

  一部の国民から給料泥棒だとか人殺しだとかさんざんなじられたうえに、災害時も無能な政府と一部の団体のせいで誰よりも危険な作業をしてるのに寝床も食事も被災者以下の待遇を受けてた。
  それなのに文句も言わず黙々と国民に尽くして、有事の際はその命を懸けて国民を守ってくれる。

  あんな安月給で、仕事ってことだけでできるもんなのか? 
  自衛隊には尊敬と感謝の気持ちしかないな。
  叶うならいつか馬場さんや浜田たちと共にあのダンジョンで供養してやりたい。

「で、でも……僕たちは命は助かりましたけど……火傷が酷くて四肢を切断するしかなくて……ニートしてる時に親にさんざん迷惑掛けたのにこんな姿で……もう負担掛けたくなくて……だから……」

「お、俺は身寄りがないから……貯蓄も尽きてたし……こんな身体で一人で生きていくのが……」

「自分もお袋には無事だと電話しましたが、とても会えなくて……負担掛けたくなくて。頑張って働いてるって言って……お袋喜んでて……だから……」

「ん? ああ、復讐のことを気にしてんの? 」

「……すみません……みんなで誓ったのに……うぐっ……仇をとるって……すみません……憎い協会の世話になっていて……すみません……すみません……うっ……ううっ」

「お、俺……自分のことを……こんな身体じゃ生きていけないから……協会の取引に応じて……生き恥を……ぐぅぅ……」

「自分も……みんなと約束したのに……憎い協会なのに……毎日悔しくて……でもどうしようもなくて……すみません……みんなに申し訳なくて……」

  こいつらそんな事でずっと悩んで苦しんできたのかよ……
  まあ途中から社会的制裁から物理的制裁に目的が変わったしな。
  やりたくてもできなかったんだろうな。

  ちょっと無理くりだけど言っておくかな。

「勘違いしてるぞ? 俺や馬場さんや浜田にほかの仲間たちが、いつ自分の仇をとってくれって言った? 俺たちは死んでいった仲間のために仇をとろうって誓ったんだ。個人に託された想いじゃない。俺たちのパーティ全体での意思だったんだ。つまり誰か一人でも生き残って仇をとればいいんだよ。そして俺が五体満足で生き残った。だから仇をとる仕事は俺の役目だ。五体不満足だったやつは別に気にしなくていいんだよ。できるやつがやる。それでいいんだ」

  馬場さんもあの時、俺に自分の仇を取ってくれなんて言わなかった。そんなこと思っていないからだ。
  みんな死んでいった仲間の仇を取ってくれと託していった。それは個人にではなく生きている仲間全員にだ。
  だからできるやつがやればいいんだ。
  
「個人ではなくパーティの……で、でも仲間の仇を取るどころかその仇に養われて……口をずっと噤んでいることを条件に僕たちは……」

「何言ってんの? 探索者協会のせいでそんな身体になったんだ。生活の面倒を協会がみるのは当然だろ。三田たちは当然の権利を行使しているだけだ。むしろ全然賠償としちゃ足りないよ」

「そ、それは……」

「選択肢が無かったんだろ? 協会が居直って面倒なんかみないと言えば困るのは三田たちだもんな。面倒を見て当然のことを人質に三田たちを脅迫したんだ。3人はなんにも悪くない。堂々としていていいんだ」

  面倒を見て当然のことなのに、それを交渉材料にして三田たちを苦しめやがって。
  楽に死ねると思うなよ。屑どもが。

「た、確かにそうですが……僕たちは約束を……」

「約束を忘れたことは無かったんです先輩。それなのに協会の施しを受けているのが情けなくて……」

「仇を取りたいのに取れなくて……悔しくて……」

「あーウジウジうるせえ! 俺が生きてるから俺がやればいいんだって! そうか、そんな身体だから後ろ向きなんだな。馬鹿みたいにゴブリンに突っ込んで行っていたお前ららしくねーんだよ! ほらっ! 鈴木! こっち見ろ! 」

「え? 自分ですか? 」

「とりあえず目を治すか……『ラージヒール』 」

  俺は鈴木の眼帯をしている右目を限定してラージヒールを掛けた。
  部分的なものなのに魔力の消費は同じかよ……でもここを出るまでに腕が生えてたら目立つしな。

「うっ! な、なんだこの……目が……うっ……」

「ま、まなぶ! 」

「お、おい! ズッキー! 」

「大丈夫。おとなしく見てろって。欠損部位が復活する回復スキルだ」

「え!? そ、そんなスキルがあるんですか!? 」

「嘘だろ……」

  このラージヒールはティナたちと話している時にそれとなく聞いてみたら、とんでもないレアスキルだった。現在帝国で最高の回復スキルはミドルヒール らしく、ラージヒールは過去に数人しか使える者がいなかったらしい。
  その話を聞いて俺は顔が引き攣り、とてもじゃないけどティナたちに使えますと言うことができなかった。
  もし帝国にバレたら監禁回復マシーンにさせられると思ったからだ。

  さすが90階層のボスの持つ宝箱から出たスキルだ。当時はポーションの2等級で部位復活するから、ゲーム能で回復スキルでもそういうのあって当たり前に思っていたが、90階層のボスを倒して手に入れたスキルだってことをすっかり忘れてたよ。

  ヴリトラの宝物庫で吸収のスキルと一緒にあった結界のスキルも、無限魔力で結界張りまくれて相当やばいスキルだしな。覚えた時に思った通り、俺の魔力ランクが高くなればなるほどチート化していくよこれ。
  今はアニメ脳を駆使して多重結界を張る練習をしているところだ。

  ああ、ちなみに2等級ポーションもレアアイテムのようなんだ。
  確かに古代ダンジョンの遺品には5本しかなかったけど、下層のボス部屋や通路の宝箱にも全部で30本はあったから、もしかしてそこまでレアじゃないかもと思ってたらやっぱりレアだった。
  あのダンジョンの難易度がそれだけ異常だってことなんだろうな。
  普通に魔鉄の短剣やインゴットに、オリハルコンの槍やインゴットが宝箱にあったしな。

  そんなことをつらつらと考えていたら、どうやら鈴木の目の違和感が無くなったようだ。

「ちょっと待ってくれ…………いいよ。鈴木、眼帯を取ってゆっくり目を開けてみてくれ」

「は、はい! 」

  俺は鈴木の目が眩まないようにテレビと電気を消して、部屋のカーテンを閉めてから鈴木に目を開けるように言った。
  鈴木は既に目の存在を認識しているんだろう。期待半分怖さ半分って表情で眼帯を取り、ゆっくりと目を開けていった。
  
「み……見える……目がある……目の周りの火傷もなくなって……こんな……こんなことって本当に……」

「ほ、本当だ……学の目が……火傷も……凄い……」

「せ、先輩……こ、これは……もしかして俺たちのう、腕や足も? 」

「ああ、生えてくるよ。じわじわと生えてくる光景はなかなかにグロいけどね。俺が元に戻してやるよ。今まで辛かったな。もうこんな施設の世話にならなくていいんだ」

  俺がそう言うと三田も田辺も信じられないといった顔をしながらも、目の前で目が治った鈴木を見て自分たちの腕や足も元どおりになると実感したのか大はしゃぎだった。
  俺は慌てて遮音のスキルを発動したよ。

  それからは早かった。俺は3人にマジックポーチをそれぞれ渡し、荷物をまとめさせた。
  3人はマジックポーチを複数持っている俺に驚いていたが、早く歩けるようになりたいなら急げと言ってちゃっちゃと荷物をまとめさせた。

  そしてそのあとマジックポーチを預かり退所手続きをさせに行ったんだけど、協会もまさか出て行くとは思わなかったんだろう。
  3人が自力で生きて行くことに自信がついたので、試しに田辺の実家で共同生活をしてみますと施設長に言ったらめちゃくちゃ引きとめられたそうだ。

  それでもいつまでも協会の世話になってるのも申し訳ないと、約束は守るとか適当なことを言って出てきたそうだ。黙って出ていったら追っ手が掛かりそうだからな。面倒だが仕方ない。

  そして俺は施設の出口で3人を出迎え、田辺を背負い三田に肩を貸して湖の方まで歩いていった。
  そして建物の陰にはいり探知で周囲に人がいないのを確認して、1人ずつラージヒールを掛けていった。
  三田たちは腕や足が生えてくる感覚にうめきつつも、その顔は四肢が元に戻るからか嬉しそうでなんだかアヘッてた。とっても気持ち悪かったから俺はその場をそっと離れた。

  そして5分ほどで三田たちの興奮した声が聞こえてきたので行ってみると、3人がジャンプしたり腕を振り回してたりしてた。
  俺は泣きながら感謝の言葉を述べる3人に、これからどうするか聞いたが愚問だった。
  三田たちは当然復讐すると、俺の手足となって働くとやる気満々だった。
  やっぱりこうなったかと思った俺は、用意していた餞別の300万を空間収納の腕輪に戻した。

  正直期待していたが、もしも普通の生活をしたいと言ったならそれはそれでいいと思っていた。俺はせっかく生き残ったコイツらを危険に晒すのに気が引けていた。
  けどやっぱり身体さえ動けば三田たちも復讐したかったようだ。

  とりあえず今日はもう日が暮れるので御殿場に移動しよういうことになり、何時間も歩く気満々の三田たちをよそに俺はゲートキーを取り出した。
  そして空中に鍵を挿し込み、ここにくる前に確認していた駅近くの廃工場の裏手にゲートを繋げた。
    三田たちは突然現れた光り輝く門に目を丸くしていた。

「これはアニメなんかである転移門みたいなもんだ。これで駅近くまで行ける」

「え!?  転移? 」

「すげー……光ってる……なんなんですか先輩……ネコ型ロボットみたいにポンポンと……」

「ま、魔道具ってやつですか? テレビでもネットでもそんな存在があるなんて見たことないです」

「さっきのスキルもこれもかなりレアなものらしい。安易に人に話すなよ? 身動きが取りにくくなるからさ」

「見たことも聞いたこともないスキルと魔道具ですからね。当然誰にも話しませんよ」

「当然ですよ先輩! 俺たちはそこまで恩知らずじゃないです。逆にこんなことができるなら刃鬼も協会の奴らも殺れるんじゃないかって頼もしく思えてきました」

「自分も誰にも話しませんよ。拷問されたって話しません。でもこれがあれば完全犯罪が……」

「まあバレたらバレたで、これがあれば逃げれるからそうそう捕まらないけどね。さあ、俺が先に通るから合図をしたら続いてくれ」

  三田たちなら大丈夫だと思うが、手足が元に戻ってるからな。そのうちバレるのは仕方ない。
  なるべく三田たちには情報収集だけやらせるつもりだが、その際に顔見知りに見つかるかもしれない。
  三田と鈴木には家族がいる。だからその時は俺のことを話してもらって構わない。俺一人なら逃げ切れる。いざとなればどこかの無人島にでも潜伏すればいいしな。

  俺は先に門を通り、探知で人が周囲にいないことを確認して三田たちに合図をした。
  三田たちはワクワクしながら門を通り抜け、そして景色が変わったことに興奮していた。

  それから御殿場駅に向かい、田辺が静岡駅なら繁華街もあるしテレビでまだホテルが廃業しないで残っていたのを見たことがあると言っていたので電車で静岡駅まで行くことにした。
  
  そして静岡駅に着き良さそうなビジネスホテルに4部屋とり、皆で夜の街に繰り出した。
  どんなに不景気でも男の欲を刺激する商売は盛況で、俺たちは2年ぶりに解毒のポーションを片手に欲望渦巻く繁華街を欲望のままに楽しんだのだった。
 

  それからスッキリした俺たちは早めにホテルに戻り、この2年間俺が経験してきたことと今後のことを話し合った。

  転移トラップに掛かり2年近く俺があのダンジョンにいたこと、そこでかなりの高ランクになったこと。
  途中帝国の奴隷階級の子たちを助け、俺も助けられたこと。
  そしてダンジョンで得た色々なレアアイテムを持っていることを話すと、三田たちはあまりのことに声も出せないでいたようだ。
  まさか自分たちが命からがら逃げ出したあのダンジョンに、2年も俺がいたなんて想像すらしてなかったらしい。

  最初はかなり驚愕していたが、しぶとい俺ならあり得るかもというところでなぜか納得していた。
  それよりもなによりも、エルフや獣人の女の子と一緒に生活していたことに血涙を流して羨ましがっていた。
  俺が逆の立場でも血涙流すな。うん。


  そして刃鬼が九州にいるらしいことと、探索者協会の理事会が新宿で3週間後に行われること。そして須々田を既に殺したことも次々と話した。

  朝に木更津のダンジョンの俺たちがいた施設で火災があったというニュースは見たらしいが、それを俺がやって須々田を殺していたことに三田たちはかなり驚いていた。
  そしてダンジョンから出てその翌日に既に復讐を開始していた俺の行動力と、自分たちを比べてまた落ち込んでいた。

  俺はこれからだろと肩を叩き、色々と三田たちが知っている情報を聞いた。
  それによると探索者協会の幹部にはかなりの数の探索者の護衛が付くらしく、協会の本部ビルも昔みたいに容易に入れないらしい。
  そうなるとゲートキーで会議室に現れて、こんにちは灼熱地獄ってわけにもいかない。やる時は相当な大騒ぎになるだろう。ならまずは刃鬼を殺ろうということになった。
  俺一人でやろうとしたが、三田たちが自分たちもやらせて欲しいと言うから困ってしまった。

  あれから2年経っている。当時Cランクだった刃鬼もダンジョンに潜り続けて生き残っていると仮定すれば、それなりにランクも上がってるだろう。中級ダンジョンまでしか入れないようだから、そこまで上がってないとは思うがそれでも三田たちより遥かに強い。
  俺の滅魔で上がったランク分の、魔力で強化された身体能力を無しにはできるしスキルも封じれるが、技量はどうしようもない。俺が凍らせればいいかと思いつつも、今後のために少し三田たちのランクを上げさせることにした。

  そこで昔ネットで見た、青木ヶ原樹海にある中級の死霊系不人気ダンジョンを思い出した。
  交通の便も悪く、いかにもな場所にいかにもなダンジョンだ。探索者協会も樹海の外で入場受付していると聞いたことがある。
  そのことを三田たちに聞いてみたら、このご時世ですら誰も青木ヶ原ダンジョンには入らないそうだ。施設にいた引退した探索者もあそこは無いなと言っていたそうだ。

  目的を達成するために、探索者として活動ができない俺たちには打って付けのダンジョンだ。
  俺は三田たちに明日の早朝に忍び込もうと言い、顔を引きつらせる三田たちに早く寝るように言って自分の部屋へ戻らせた。

  さて、死霊系に俺のスキルがどこまで通用するかな?
  武器は確かミスリルが死霊系には特効があるとティナが言ってたな。
  なら三田たちにダンジョンで手に入れたノーマルのミスリル武器をやるか。

  そして俺は翌日から三田たちのパワーレベリングを開始するのだった。




  

  
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