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番外編・央央アタック大作戦
五.央央は諦めない【2】
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「……座るか?」
「もう。どうして意地悪言うの? でも、琳哥哥が疲れたのなら、すぐに降りるわ」
「問題ない」
途中、飲食店で空腹を満たした時間を除き、二時辰近く──四時間も背負ってくれているので、さすがに降りようとしたが、晋高は首を振った。保鏢をしているだけあり、体力はあるらしい。
「今更だけど、重くない? 霜北府に来て、最初は緊張していたけど、でもお料理が美味しくて食欲が止まらなかったし、絶対に肥えたと思うの」
普段は食べても二人前までと我慢しているのに、霜北府に来てからは、平気で四、五人前をぺろりと平らげていた。倍以上だ。琳有は、小柄なのにいっぱい食べるから気持ちがいいし、作り甲斐があると褒めてくれるが、食欲が爆発すると、成人男子以上に食べてしまうので、央央自身引いていた。姉の春鶯からは、好きなだけ食べてもいいけど、あなたは誰かが止めないと、いつまでも食べ続けてしまうから、せめて時間を決めなさいと注意されている。
「ああ、重い」
心配になって晋高に尋ねたところ、すぐさま「重い」と返され、央央は慌てふためいた。自分の重さをきちんと把握していなかった。
「やっぱり! もう降りる!」
背中を押しのけ飛び降りようとしたところ、晋高は珍しく噴き出した。
「冗談だ。軽い」
「嘘よ!」
「本当だ。代謝がいいんだろう」
重くないと繰り返した。最初に答えた「重い」というのは、どうやら冗談だったらしい。珍しい。
「嘘だと思うなら、宿屋にある銅鏡で確認するといい。それに、服もきつくないだろう?」
「そうね。緩くもないし、きつくもないわ」
晋高の言う通り、持参した襖裙の着用感はいつもと変わらないし、銅鏡で立ち姿を確認するのもいいだろう。背を測る手段は布製の尺や、木製や竹製の直尺があったが、体重を測る方法はなく、あっても物を測るための天秤しかない。だから見た目や服で判断するしかない。
そんな会話を繰り広げているうちに、ドンという破裂音は響かなくなってしまった。途端に周囲が静まり返った。
「ああ。せっかく綺麗だったのに、琳哥哥と話しているうちに、花火が終わってしまったわ」
花火職人同士の打ち上げ勝負は、歓声の多さで勝敗を決めると耳にしていたものの、央央が聞く限りでは大差なかった。家族や友人と立ち止まり、花火を楽しんでいた人々は、綺麗だったと感想を言い合いながら動き始めている。
「また見られる」
花火が終わってしまい、落胆していた央央を励ますためか、晋高はぽつりとつぶやいた。央央は聞き逃さなかった。
「また見られる……ってことは、半年後の新年の花火も、一緒に見てくれるってこと?」
一緒に見ようと約束してくれたわけではない。また見られると、一言発しただけだ。けれど、口数の少ない晋高の言葉を前向きに捉え、好きなように解釈すると、否定はしなかった。
「……気が向いたらな」
「……うん!」
その後は宿屋まで送ってくれた。朝は元気いっぱいだった央央が、夜になり晋高に背負われて現れたために女将に心配されたが、事情を説明すると足を冷やして手当てをしてくれた。その間、朝にそこそこ大きな粽を五個ぺろりと完食したことから、夜も食べるだろうと倍の十個用意してくれたことを告げられ、央央はありがたく平らげた。
霜北府にいられるのも残り二日。馬車の空きができれば、帝都に帰らなければならない。結局、晋高はいつ帝都に戻るのか教えてもらっていない。
また匪賊に狙われないとも限らないため、帰りの保鏢は晋高か、晋高が空いていなければ伯父に頼むつもりだ。いつも琳家の母屋にいるように見えて、夜間や早朝など、要請があれば出払っているという。央央が帰る予定の日は伝えてあるため、よっぽどのことがない限りは応じてもらえるはずだ。
できることならば、晋高と帰路に就くことが最善だ。しかし、楚月が休暇を与えているので、休んでほしい気持ちもある。あと二日あるので直前まで悩むことにした。
「もう。どうして意地悪言うの? でも、琳哥哥が疲れたのなら、すぐに降りるわ」
「問題ない」
途中、飲食店で空腹を満たした時間を除き、二時辰近く──四時間も背負ってくれているので、さすがに降りようとしたが、晋高は首を振った。保鏢をしているだけあり、体力はあるらしい。
「今更だけど、重くない? 霜北府に来て、最初は緊張していたけど、でもお料理が美味しくて食欲が止まらなかったし、絶対に肥えたと思うの」
普段は食べても二人前までと我慢しているのに、霜北府に来てからは、平気で四、五人前をぺろりと平らげていた。倍以上だ。琳有は、小柄なのにいっぱい食べるから気持ちがいいし、作り甲斐があると褒めてくれるが、食欲が爆発すると、成人男子以上に食べてしまうので、央央自身引いていた。姉の春鶯からは、好きなだけ食べてもいいけど、あなたは誰かが止めないと、いつまでも食べ続けてしまうから、せめて時間を決めなさいと注意されている。
「ああ、重い」
心配になって晋高に尋ねたところ、すぐさま「重い」と返され、央央は慌てふためいた。自分の重さをきちんと把握していなかった。
「やっぱり! もう降りる!」
背中を押しのけ飛び降りようとしたところ、晋高は珍しく噴き出した。
「冗談だ。軽い」
「嘘よ!」
「本当だ。代謝がいいんだろう」
重くないと繰り返した。最初に答えた「重い」というのは、どうやら冗談だったらしい。珍しい。
「嘘だと思うなら、宿屋にある銅鏡で確認するといい。それに、服もきつくないだろう?」
「そうね。緩くもないし、きつくもないわ」
晋高の言う通り、持参した襖裙の着用感はいつもと変わらないし、銅鏡で立ち姿を確認するのもいいだろう。背を測る手段は布製の尺や、木製や竹製の直尺があったが、体重を測る方法はなく、あっても物を測るための天秤しかない。だから見た目や服で判断するしかない。
そんな会話を繰り広げているうちに、ドンという破裂音は響かなくなってしまった。途端に周囲が静まり返った。
「ああ。せっかく綺麗だったのに、琳哥哥と話しているうちに、花火が終わってしまったわ」
花火職人同士の打ち上げ勝負は、歓声の多さで勝敗を決めると耳にしていたものの、央央が聞く限りでは大差なかった。家族や友人と立ち止まり、花火を楽しんでいた人々は、綺麗だったと感想を言い合いながら動き始めている。
「また見られる」
花火が終わってしまい、落胆していた央央を励ますためか、晋高はぽつりとつぶやいた。央央は聞き逃さなかった。
「また見られる……ってことは、半年後の新年の花火も、一緒に見てくれるってこと?」
一緒に見ようと約束してくれたわけではない。また見られると、一言発しただけだ。けれど、口数の少ない晋高の言葉を前向きに捉え、好きなように解釈すると、否定はしなかった。
「……気が向いたらな」
「……うん!」
その後は宿屋まで送ってくれた。朝は元気いっぱいだった央央が、夜になり晋高に背負われて現れたために女将に心配されたが、事情を説明すると足を冷やして手当てをしてくれた。その間、朝にそこそこ大きな粽を五個ぺろりと完食したことから、夜も食べるだろうと倍の十個用意してくれたことを告げられ、央央はありがたく平らげた。
霜北府にいられるのも残り二日。馬車の空きができれば、帝都に帰らなければならない。結局、晋高はいつ帝都に戻るのか教えてもらっていない。
また匪賊に狙われないとも限らないため、帰りの保鏢は晋高か、晋高が空いていなければ伯父に頼むつもりだ。いつも琳家の母屋にいるように見えて、夜間や早朝など、要請があれば出払っているという。央央が帰る予定の日は伝えてあるため、よっぽどのことがない限りは応じてもらえるはずだ。
できることならば、晋高と帰路に就くことが最善だ。しかし、楚月が休暇を与えているので、休んでほしい気持ちもある。あと二日あるので直前まで悩むことにした。
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