姫君の憂鬱―悪の姫君と3人の王子共―

Chiyuki.

文字の大きさ
23 / 36
#5 偽装恋人大作戦!?

Ep22 広瀬の家

しおりを挟む

【広瀬グループ】
明治時代から続く由緒正しい財閥で、現在はリゾート地の経営から飲食業界、医療業界まで幅広く事業展開をしている。その総資産は日本指折りと言われており、現社長である広瀬真一氏は歴代最高の経営手腕を持つと言われ更なる広瀬グループの飛躍に期待が高まっている…………

「お前何してんの?」
「AIの解説読んでる。」

スマホをガン見している私を、金髪は引いた目で見ている。

H2Oの学校内での動向は把握したいから調べるようにしたけど、プライベートなんてまるで興味なかったから知らなかった。
友達いないから噂話も入ってこないし。

「プライベートを知らないなんて友達と言えるのかしら……。
……ハッ、まさか近江涼介と榛名聖の家もこんな感じ!?休み明け聞いてみなくちゃ……!」

何が不思議だったのだろう。金髪は一瞬ぽかんとする。

「……変な奴。」

ブツブツ独り言を呟きながら百面相する私を見て、片眉を下げて可笑しそうにクッと笑った。


広瀬グループのAIの解説を読み切る前に、車は庭園を抜け立派な旅館…ではなく広瀬邸の前にたどり着く。

家も立派すぎるけど、広瀬の歴史がありすぎて長すぎるのよ解説。

いつもブスだのバカだのギャーギャー騒いでるやつに、こんなルーツがあったとは……。

きっと甘々に甘やかされたバカボンボンに違いない。
そうじゃなきゃこんな金髪失礼男に育つわけないもの。

「坊ちゃん、姫さん、着きましたよ。」

ハイヤーさんが恭しく後部座席のドアを開ける。
広瀬真は「ん。ありがとう。」と慣れた様子でエスコートを受けている。
不慣れな扱いに少し緊張しつつ、私もその後に続いた。

(――さて、ここからが本番だ。)

“友達”のために、ぶりっ子力を存分に発揮しなくちゃね。


金髪が家の引き戸を開ける。

(ここは……旅館かな??)

玄関を一歩入った瞬間、空気が変わる。
音が吸い込まれるような静けさ。私が知っている“家”じゃない。

今日の私はどこかの扉が開くたびに驚いている。

なんか本物の木みたいな柱もあるし。
玄関だけでも大人が10人押し掛けてももまだ余るくらいの広さがあった。

「父さん、母さん、帰りました。」

――え、誰??

芯の通った声と丁寧な言葉遣いに、今日イチ驚く。
発したのは紛れもなく隣にいる金髪だ。

今までの口の悪さはどこいった?
キャンキャンうるさい喚き声、忘れたの???

横目でチラ、と金髪を見ると近江涼介を彷彿とさせる無表情。凛々しささえ感じるほどだ。

調子狂うな、と思っていると奥から浅葱色の着物を着た上品な女性がやってきた。

「真さん、おかえりなさい。あら、この方が……。」

「母さん、ただいま帰りました。こちらは“僕”がお付き合いさせてもらってる、同じクラスの藤澤姫さんです。」

僕ゥ!?

「……っ!」

――いけないいけない。 
あまりのキャラ変……変更どころじゃない、中身誰か違うやつ入ってない??ってくらい普段と違う金髪に笑いそうになっちゃった。

心の中で深呼吸してー……。

「初めまして。藤澤姫と申します。あの、これつまらないものですが……。」

渾身のいい子スマイルで会釈して、手土産を差し出す。
どうこの笑顔!近所のお爺ちゃんお婆ちゃんには評判いいんだけど。

私の煌めく笑顔に、金髪母は柔和で落ち着いた笑みを返した。

「まぁ、わざわざありがとうございます。
主人も中で待ってますから…どうぞ、お入りになってくださいね。」

金髪母は受け取った手土産を、側にいたお手伝いさんに渡して私たちを招き入れる。

黒髪で着物が似合う上品美人。控えめなのに少し気の強さを感じるのは、金髪にそっくりの猫目だからだろうか。

金髪と金髪母に続いて、長すぎる廊下を足音も立てずに歩く。

とりあえず、金髪母から心象は良さそうだったから第一段階はクリアか?

――でもなんだろう、この緊張感。
異常さを感じるほどの静寂に、音が鳴らないよう慎重に唾を飲み込む。

背筋をシャンと伸ばして胸を張り歩く金髪の後ろ姿はやっぱり別人のよう。派手な髪色だけが奴であることを示している。
そう思う位の毅然とした立ち居振る舞いの自然さは、一朝一夕で身につくものではないはずだ。

“とっても過保護なんだよ。……お家が。”

――榛名聖の言っていたことは、半分正解で半分不正解なんじゃない?

生活音が一切しない、無機質で張り詰めた異空間。
この嫌な違和感の原因を、私はすぐに知ることになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———       しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」 100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。 しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。 戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。 しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。 そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。 「100年間、貴女を探し続けていた——— もう二度と離れない」 ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア) ——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。 「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」 ユリウス・フォン・エルム(エルフ) ——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。 「お前は弱い。だから、俺が守る」 シグ・ヴァルガス(魔族) ——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。 「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」 フィン・ローゼン(人間) ——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。 それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。 忠誠か、執着か。 守護か、支配か。 愛か、呪いか——。 運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。 その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。 ——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた

桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。 どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。 「もういい。愛されたいなんて、くだらない」 そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。 第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。 そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。 愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。

処理中です...