姫君の憂鬱―悪の姫君と3人の王子共―

Chiyuki.

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#5 偽装恋人大作戦!?

Ep.24 いい奴だ

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Ep.24 いい奴だ

完璧に整えられた庭園は美しく、ここにも生活の温かみがまるでない。
ありえないくらい広居場所のはずなのに、背の高い外壁が囲うそこはものすごく窮屈に感じる。

――日本三大庭園とかってこんな感じじゃなかったっけ?

わーぉ、池もある。錦鯉とか泳いじゃってるし、赤い橋も掛かってる。こっちは松?

立派~。何もかも立派……ははは……。

ずっと黙っている金髪に、間が持たなくて無駄に庭をキョロキョロ見てしまう。

旧校舎の中じゃほとんど私と金髪が喋ってるようなものだから、この状況に戸惑いを隠せない。

もう見るところもなくなって、いつもと真逆のカッチリ落ち着いたスタイルの金髪を横目に見る。

七三で髪を後ろにアップしているから、白い肌がよく見える。大きな猫目は今は伏し目がちで、ちょっとアンニュイ。

(ちゃんとしてれば、すこーーしは見られるのに。)

…………まあまあまあ、人類で1番美しいのはこの私だけどね!!!

不覚にも金髪を褒めるようなことを思ってしまって、勢いよく首を横に振った。


「ウチの家さぁ……。」

金髪への肯定を振り払ってる間に、金髪が重い口を開いた。

「ガッチガチの懐古主義なんだよ。
“跡取りは絶対に長男”。“女は良妻賢母であれ。3歩下がって男を支えろ”ってクソみたいな家なんだよ。」

「ああ、なんかそうっぽいね……?」

金髪父の威圧的な言動を思い出し、納得して頷く。

金髪は憎らしそうに、苦しそうに池を見つめている。

「俺は生まれた時から跡取りとしての教育を受けてて、わがままどころか口答えも一切許されず育ってきた。
今までも父親の言う通りの学校通って、習い事して…大学もその後の進路も全部決められててさ。

――だから高校生活くらいは最初で最後の好きにさせてくれって言って、色々条件ついたけどまあ、今ってワケ。」

なるほど。それで学校ではチャラチャラ、キャンキャン、わーわーだったのか。

家では出せない自我を、あの場所旧校舎で発揮してたってことね。

「好きにしてる3年間で状況変えようと思ってたけど、入学早々婚約話を持ち込まれるし。
……結局跡取りの立場からは逃げらんねぇか。」

俯いて自虐気味に笑う金髪。

(……あ、悲しそうだ。)

立派だけど温度のない庭園を背景に立ち尽くす金髪が、ひとりぼっちに見える。
……もしかして、ずっとそうやって独りで我慢してきたのだろうか?

普段の強気な態度とのギャップに胸がモヤモヤして、それを振り払うように私は金髪の手を取った。

「な゛っ……!?離せよ、ブス……!」

唐突な私の行動に、金髪は驚いてちょっと赤くなる。

すぐに振り解こうとするのに抗って、夏なのに冷やりとするその手をギュッとキツく握りしめた。


「まだあと2年半はあるよ!バカ。」

その言葉に金髪は目を丸くして固まる。
暗い表情を一先ず吹き飛ばせたことに、私は気が良くなってにんまりと笑った。

「婚約者問題は今解決できないかもだけど、跡取り問題は卒業までまだまだ時間があるからどうにかなるかもしれないし!
あんな強引なこと言われて黙って言うこと聞くなんて私だったら絶対しないんだから!」

金髪を置いてけぼりにして、私はあーだこーだと言いながら1人作戦を考える。
金髪はその様子を唖然としてずっと見ている。

一筋の光明が差した――そんな予感に、金髪の目に光が戻っていく。

そして、しばらく間の抜けた顔を晒した後、何かを吹っ切るようにため息をつく。
いつもの気の強さを取り戻して片微笑むと、覚悟したように私の手を握り返してきた。

「たまにはいいこと言うじゃねーか、ブス。
……でもそれなら尚更、今婚約を破断にしなきゃならねーんだよな。」

金髪は幾分清々としたような顔をしながら、そう言った。

聞けばお相手は現在高校3年生の名家のご令嬢らしく、まさに今進路を決める只中にいるらしい。

「俺との婚約話が決まれば、当然進路もそれに沿ったものになる。
もし、その人にやりたいことがあったらどうする?
自分の行きたい道を歩くことも許されず、好きでもない男を支える準備をしろなんてそんなの、不憫すぎるだろ。」

他人のことを思って痛々しげに笑う金髪を見て、今までのコイツの下手くそな優しさをぶわっと思い出す。

そして、悔しいけどやっぱりこう思うのだ。

(広瀬真は、いい奴だ。)
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