27 / 36
#テストの結果と夏休み
Ep.26 テスト結果は予想外
しおりを挟む夏休みも間近に迫る7月の半ば。
玄関ホールの掲示板前はたくさんの人で溢れている。
みんなの関心は、ドーンと貼り出された“中間考査の順位表”だ。
今時生徒のプライバシー晒す学校ある~?と思うが、ここは地域一の超進学校。
生徒の闘争心を煽るスパイスとして必要なことなのかもしれない。
「きゃー!H2Oよ!♡」
「今日もかっこいい~♡」
「藤澤さん、今日も美しいなぁ……。」
絢爛豪華な私達の登場に、掲示板に集まる生徒達がサッと道を開けていく。
女共の嫉妬に気を良くしていたすれ違いざまに、噂話が聞こえてきた。
「ねぇ、やっぱりあの2人って……」
「嘘よ!だって広瀬くんが1番アイツを嫌ってるじゃない!」
(疑心暗鬼ご苦労様。)
女共が疑っているのは私と広瀬真の仲だ。
原因は林間学校のバスの寝落ち画像。
意図せずして長期間女共の不安を煽っているらしい。
今も偶然私と広瀬真が並ぶ構図になっただけでこの有様。
後ろには近江涼介と榛名聖もいるのに。
(……っとにくだらない奴らね。)
清楚な笑顔を振りまきながら、心の中で悪態をつく。
せっかくご機嫌だったのに興醒めした。
この間の一件でちょっと見直しはしたけど、口と頭の悪さは変わらないしどうこうなるなんて天地がひっくり返っても有り得ないんだが。
――ま、復讐的には美味しいし、ちょっと遊んでやりますか。
「広瀬くん、早く行こっ?」
広瀬真の腕に自分のを絡めて引き寄せると、女共がわかりやすくたじろぐ。
広瀬真もほんのりと顔を赤らめながら目を三角にして動揺している。
「はっ……!?気安く触んじゃねぇ、ブス!」
「もう、照 れ 屋 さん♡」
嫌がる奴を強引に引き摺って掲示板までの花道を歩いてやった。
――ひと遊びしてスッキリしたし、もういいか。
それより、今日の目当てはテストの順位。
目の前の順位表の中から、“藤澤姫”の文字を探す。
合計点的に10位くらいから見るのが妥当だろうか?
(16位……よし。まずまずね。)
秀才だらけの青藍で、恥かかない様に影で必死こいて勉強した甲斐があった。
1学年200人の中でのこれなら十分過ぎる結果だ。
「ひーちゃんって、お勉強もできるんだね~。」
榛名聖が隣でヘラヘラとそう言った。
「当然!少しでもスペックの高い男を落とそうと思ったら、賢くなきゃダメでしょ。」
「お前のそのモチベーションの上げ方、まじで気持ち悪いわ…。」
得意げに胸を張る私に、広瀬真はゲンナリしている。
「何よ、そういうあんたらの成績はどうなの?さて、どこに名前があるのかな~?…ん?」
見つけたは見つけたが、その順位に私は目を見開いた。そして大声で叫ぶ。心の中で。
んなぁあああああ!?
昼休みの旧校舎に、不服を呈する私の声が響き渡る。
「まさかまさかよ!どういうこと!?」
ソファに突っ伏してクッションを殴りに殴る。
その様子を近江涼介、広瀬真、榛名聖が少し離れた丸テーブルを囲んで見ていた。
「広瀬真が1位で、榛名聖が5位!?こんなびっくりバカと年中ヘラヘラに私負けたの!?悔しい!悔しーーい!」
金髪バカと一生ヘラヘラをビシバシ指さして怒りに悶える。
問題の2人は同じ土俵には決して上がってはこない。
広瀬真は口端を引き攣らせてドン引きしているし、榛名聖は他人事の様に笑いながら紅茶を啜っている。
「まぁまぁ~青藍で16位も十分すごいよ~?ひーちゃん。」
5位に言われても嫌味にしか聞こえない。
肩に置いてきた手を叩き落としてやった。
「俺は自由の条件に学年1位キープがあんだからしょうがねーだろ。……ってか聖も多分似た様なもん……」
「俺は違うよ~?ただ出来がいいだけ⭐︎
……まーくんと一緒にしないでね?」
広瀬真の言葉に榛名聖は食い気味に否定を入れてきた。
なんだろ、一瞬榛名聖の空気がピリッとした気が……いや、気のせいか。
――そして、近江涼介はマネキンかってくらい動かない。
私はコイツにも言いたいことがあるのだ。
「っていうか近江涼介!!あのラインナップでなんであんたは47位なの!リアクションしにくい微妙な順位とってんじゃないわよ!」
涼しい顔して1位取ります⭐︎みたいな顔してる癖に、変なところで意外性を出さないでほしい。
鋭い指差しにも、近江涼介は眉一つ動かさない。
少しの沈黙の後、ようやく近江涼介の視線だけが窓の外へ動いた。
「なんでって言われても、俺、勉強得意じゃないし。」
夏の強い光を受けて緑が濃くなった窓の外を、黄昏れる様に見つめる近江涼介の顔は暗く沈んでいる気がする。
(あ、また人間になった。)
ダッサい台詞なのに、遠くを見る視線はなぜか少し切なく見えて。いや、言ってることものすごくダサいんだけど。
完璧無欠なロボットなんかじゃない。近江涼介も血の通った人間なんだ。
――そう思ったら、私の憤りも萎んでそれ以上何か言うのをやめた。
――――
――……
「おかえり、今日テストの結果でたでしょう?ちゃんと見せてね。」
玄関ドアが開く音を聞いて、キッチンでの作業を中断してきたのだろう、エプロンで濡れた手を拭きながら1人の女性が帰ってきた少年を出迎える。
まっすぐで艶やかな黒髪は、あの無表情の男を彷彿とさせるが、その表情は優しく穏やかだ。
「……ん。」
少年は靴を脱ぐ前に鞄から細長い用紙を取り出して渡す。そこに書かれたものを見ると、女性はみるみるうちに笑顔になった。
「49位って…すごいじゃない!“あの”涼ちゃんが有名進学校に行けただけでもすごいのに。
お母さんびっくりしちゃった。」
息子の出来の良さにはしゃぐ姿は子どものよう。
“涼ちゃん”と呼ばれた息子は、その姿を見て少し目を伏せた。
「……そう?じゃ、俺着替えてくるから。」
ようやく靴を脱いで家に上がると、すぐに玄関側の階段を上がって自室に消えてしまう。
女性は慌ててその後ろ姿を追って、階段下から仁王立ちして閉まる部屋のドアに向かって怖い顔をする。
「コラ!ちゃんと手を洗ってからっていつも言っているでしょう?」
――まるで小さな子どもに言うかのよう。
顰めた表情も「仕方のない子ね」とすぐに緩むその姿は、息子を心から可愛いと思っていることを示していた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜
来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———
しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」
100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。
しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。
戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。
しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。
そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。
「100年間、貴女を探し続けていた———
もう二度と離れない」
ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア)
——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。
「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」
ユリウス・フォン・エルム(エルフ)
——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。
「お前は弱い。だから、俺が守る」
シグ・ヴァルガス(魔族)
——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。
「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」
フィン・ローゼン(人間)
——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。
それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。
忠誠か、執着か。
守護か、支配か。
愛か、呪いか——。
運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。
その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。
——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした
月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、私は異世界で――
恐怖と絶望の象徴・魔王の娘として生まれていた。
この世界で魔王の血を引く者は、恐れられ、忌み嫌われる存在。
孤独な運命を覚悟していたはずなのに、なぜか周囲の反応がおかしい。
父である魔王は超美形で娘に激甘。
魔族たちは命がけで守ってくる。
さらに人間側の勇者や王子、騎士までもが、次々と私に惹かれていき――。
どうやら私は、世界一の美貌を持って生まれてしまったらしい。
恐れられるはずだった魔王の娘・セラフィナ・ノワールの人生は、
気づけば溺愛と恋愛フラグだらけ。
これは、
魔王の血と世界一の美貌を持つ少女が、
数多の想いの中から“運命の恋”を選ぶ、
甘くて危険な異世界恋愛ファンタジー。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる