姫君の憂鬱―悪の姫君と3人の王子共―

Chiyuki.

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#初めての〇〇〇

Ep.33 怒りの理由

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午後のHRが終わる頃には私と榛名聖のキス(捏造)が拡散されたようで、教室は私を中心に静かにざわめいていた。

広瀬真は何か言いたそうにこっちを向いたりそっぽ向いたりを繰り返していた。
だけど私はまだ怒っているから無視。

作戦通りに動揺するモブたちに満足して心の中で頷きながら、すまし顔で帰り支度を済ませて私は教室を後にした。

***

校舎を出ようとした時、近江涼介とバッタリ出くわした。

近江涼介が目指すであろう駅と私の家は方向が真逆。
だから「じゃあね。」と挨拶して別れようとしたのに――何故か私たちは並んで歩いている。


「何か用?それとも迷子?駅なら逆方向だけど。」

会話もなしについてくるから、その不気味さについに話しかけてしまった。
近江涼介はいつも通りの無表情で、こっちを見もしないから、今は感情がわからないロボットモードだ。


「別に?図書館寄りたいだけだけど。」

淡々とした返答。何と返せばいいのやら。

「……あっそ。」

そしてまた沈黙。近江涼介との会話ってどうすればいいかわからない。
生温くて不快な夏の風が、狭い路地を通り抜けていく。

「……お前、急に俺が誰かに殴られたらどうする?」

「はぁ?」


唐突なもしも話に思わず大きな声が出た。
意味がわからなすぎて眉間に皺を寄せて困惑を全面に表出する私に対して、近江涼介は無表情で前を見たまま話し続ける。

「“友達“の俺がボッコボコに殴られてボロボロになってる。
――なのに、まぁ気にすんなって言ってたらどうする?」


友達が………ボッコボコ……

強烈なワードに一気に頭が沸騰して、力強く拳を突き上げた。

「ふざけんなぁ!復讐よ!やった奴ボコボコのギタギタにしてくれるわ!
っていうか近江涼介!アンタも少しは気にしなさいよ!!」

拳をそのまま近江涼介の目の前に振り翳してぶん回す。
ずっと前を見ていた近江涼介が、不意にこっちをまっすぐ見てきた。

「真も同じ気持ちだったんじゃねーの?」

予想外に飛び出した名前に、思わず動きが止まってしまった。
近江涼介の私を射抜くような視線は、目を逸らすことを許さない。

「“友達“が不当に傷つけられたら、その傷を自覚してなかったら、怒りたくもなるだろ。」

悔しいような気まずいような、なんとも表現し難いきまり悪さに固く結んだ口がモゾモゾと動く。

広瀬真の言動と、近江涼介の言葉が頭の中で再生されて、答え合わせするみたいに結びついていくのがわかる。

わかる、けど。それを自覚すればするほど気まずくなっていく。

「ここまでわかったらやることはひとつだと思うけど?」

顰めっ面の私の髪を乱すようにグシャリと頭をひと撫ですると、「じゃあお先に。」と近江涼介は歩いていってしまった。

――考えるまでもなく、何をすべきかわかってしまった。
…………けど。

「どうすりゃいいのよ……。」

無理難題に途方に暮れ、乱された髪をさらに崩すように頭を抱えた。
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