タッタラ子爵家の奇妙な結婚事情

れん

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子爵令嬢と公爵の政略結婚

跡継ぎ問題と次女の恋

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「ジュラの子か、何なら今母上の腹にいる子が男なら、その子を跡取りにしますよ」

 今ではすっかり開き直ってそんなことを言う始末。
 私の子は公爵家の跡取りにはならない。と言う話だったのに。人生何が起きるかわからないものね。

「それを言ったら六人も子を産む方がありえませんよ」

 生まれちゃうのだから仕方がないじゃない。

 王家も他の高位貴族も、血の濃さが原因で跡取りが生まれにくい、生まれても体が弱いなどの問題を抱えておられていますからね。
 その点、私はどこにでもいるただの子爵家の出身ですから。血の濃さなんてどこふく風でしたのよ。
 さらに、お医者様にはよっぽど相性がいいんだろと言われたわ。

「まぁ、悪いわけはないでしょう。そもそも父上は今いくつだと思ってるんですか。同じ男としてうらやましいぐらいですよ」

 かつて九十六歳でお子を授かった皇帝もいるそうですから、旦那様はまだまだお若いわよ。

「その時の妾は十代だったそうじゃないですか、母上はもう四十ですよ!」

 まぁ、まぁ、まぁ! 淑女の年齢を声高に叫ぶものじゃなりませんわ! ……とは言え、そうなのよねぇ。さすがにちょっと心配だわ。

「でしたらどうぞご自愛ください。シアの嫁入り先のことで相談がありますよ」

 あの子、好きな人がいるんじゃないの? いえ、本人からはまだ聞いていませんけれど、なんといえばいいのでしょうか。そう、母親の勘のようなものですわ。

「平民出身の騎士見習いだそうですよ。さすがに公爵家から嫁に出せる相手じゃありません」

 うーんでも、無理じゃないかしら。長女のこともあるし。タラッタの女はこれと決めた相手に一直線よ? 一途に、愚直に、その人のためだけに生きるのよ?

 男はしっかり捕まえておかないと、糸の切れた風船みたいになるけど。お母様もお父様には苦労されていたようだし、義妹も苦労しているみたいだわ。放蕩癖があるとか、浮気するタイプではなく、こう、いつまでも棒切れ拾って振り回しているタイプなのよねぇ。うちの男どもって。

「ったく、イルドはともかくゼノとチノは、もー、帰ってすら来ない!!」

 本当にねぇ。同じ公爵家に婿入りした次男はともかく、三男と四男は全く帰ってこないわねぇ。
 まぁ、あの子たちはねぇ。便りのないのは元気な証拠ってやつよ。

 そもそもタラッタ子爵家の始まりが、あのあたり一帯がまだ荒れ地だった頃に「ここを俺たちの領土とする。そして誰もが腹一杯食える場所にする」とか言い出した無謀ものたちが大騒ぎして本当に穀倉地帯にしてしまったから、あわてて国が爵位を与えたという話なので、夢追い人と言えばそれまでですが、無駄に人好きするので周囲を巻き込んで話を大きくするタイプなんです。

 今でも農耕期は領民に交じって鍬振ったり、鎌振ったりしているぐらいですからねぇ。
 私脱穀上手いんですよ。って旦那様に言ったら大爆笑されましたわ。もうずいぶんと幼い頃なので、覚えていらっしゃるかはわかりませんけれど。

 そしてタラッタの女は、そんな夢追い人を「やれやれ仕方ないわね」と言いながら後始末や根回しをすることにやりがいを感じるタイプなんです。
 笑いながらも、一緒にやってくれた年上の少年の瞳に惹かれて、気が付けば公爵家夫人ですから、本当に人生よくわかりませんわ。
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