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4話 ウィンド・エルクドイ辺境伯 1

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「エルクドイ辺境伯……申し訳ございません! このような粗相を……!」


 私はルクレと一緒に自分の馬車を降り、エルクドイ辺境伯の馬車へと走った。辺境伯と話すのは初めてになる為、念のために謝罪から入ったのだ。エルクドイ辺境伯は北の大地……国境線を領地にしているお方、一般の伯爵よりも地位が上になるからね。

「気にしなくても大丈夫だ。ええと……貴方は……」

「はい、エルクドイ辺境伯。クロード伯爵の娘、リュシュナと申します」

「クロード伯爵の……なるほど。こうして会うのは初めてだったか?」

「はい、左様でございますね。以後お見知りおきを」

「ああ、こちらこそな」


 エルクドイ辺境伯は馬車がかち合ってしまったことについては、全く気にしている素振りを見せなかった。それどころか、優しく対応してくれている。

「街中で馬車がずっと待機していても迷惑になりそうだ……まずは隅の方にでも移動させようか」

「は、はい! 畏まりました……!」


 そのまま私の馬車は、エルクドイ辺境伯に先導される形で、直進して行った。驚いたのは、エルクドイ辺境伯が後退してくれたということだ……なんというか、本当に申し訳なかった。





「まあ、この辺りなら目立たないだろう」

「そうですね」


 私とエルクドイ辺境伯は、先ほどまでの道から離れ、芝生のある場所へと移動していた。


「街中に貴族令嬢が一人で来るなんて珍しいものだな。何か用事があったのか?」

「いえ、用事という程ではないのですが……少し、国民の生活を視察したいと思いまして」

「ほう、それは殊勝な心掛けだ」

「ありがとうございます、エルクドイ辺境伯」


 エルクドイ辺境伯は私の視察に理解を示してくれているようだった。そういえばエルクドイ辺境伯はなぜここに居るのかしら? なにかしらの急用があるなら、すぐに馬車で出て行くはずなのに……。


「実は私もちょうど、王都の視察をしていたところだ。目的としては、リュシュナ嬢と同じということになるな」

「そうだったのですか……?」

「うむ、だからどこかへ急いで向かわなければならないということはない」


 なるほど……そういうことだったのね。


「地方の村々は勿論のこと、この王都でも貧富の差が激しくなっている。その辺りの改善案が生まれれば良いと考えていてな」


 エルクドイ辺境伯は遠い目をしながら、王都の街並みを見渡していた。この場所は少し高い場所にあるので、見渡しやすい。エルクドイ辺境伯は私とおそらくそこまで年齢は変わらないはず……この年齢で当主になられているなんて、本当に凄いことなんでしょうね。
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