公爵様は幼馴染に夢中のようですので別れましょう

カミツドリ

文字の大きさ
4 / 59

4話 対面 1

しおりを挟む
「よし、では行くぞ。レミーラ」

「畏まりました、ルック兄さま」


 私とルック兄さまはダースハルク宮殿に向かう為に、屋敷を後にした。


「気を付けていってらっしゃい」

「行ってまいります、母上」

 見送ってくれたのはお母様だ。お父様は仕事で出掛けているらしい。私達を乗せた馬車はそのまま走り去り、屋敷はあっという間に見えなくなった。



「ルック兄さま、ダースハルク宮殿でドレーク兄さまと王子殿下が待っているということなんですが……どういうことなんですか?」

「話した通りさ。2週間くらい前に、ドレーク兄さんが副団長のツテを利用して、お前に気があるお方を探すと言っていただろう?」

「そういえば、そんなことおっしゃってましたね」


「つまりはそういうことさ」


「えっ、そういうことって……まさか……!」


 それしか考えられなかった……だって、ドレーク兄さま以外で宮殿で私を待っているのは王子殿下だけなんだから。

「意外と察しが悪いんだな、レミーラは。まあ、そういうことだ。第五王子殿下であられる、シグレ・クエイルン様がお前のことを気に入っているらしい。と、いうわけで会いに行くということだな」

「そうだったのですか……」


 第五王子殿下のシグレ・クエイルン様とは確かに面識はあるけれど、そこまで仲が深かったとは思っていない。いきなり気に入っていると言われても困ってしまう。確かに王子殿下に好かれている? のは光栄なことではあるけれど。


「どうした? やはり嫌だったか?」

「いえ、そういうわけではないですが、戸惑っています……」

「まあ、婚約解消があったばかりだからな。それに伴う噂話でストレスが溜まっているのも分かる。本日は気分転換のつもりで臨めばいいさ」

「ルック兄さま、もしかして私の気分転換がメインなのですか?」

「いや、どっちもメインではあるよ。シグレ様がお前のことを気に入っているのは事実のようだし。とにかく、会ってみればわかるさ」

「畏まりました」

 既に馬車はダースハルク宮殿目指して進んでいる。どういう理由であれ、第五王子殿下がお待ちしている状況で、それを反故にするわけにはいかないだろう。途中で帰るという選択肢はなかった。


 ダースハルク宮殿に到着したのはそれから、数時間後のことだった。



----------------------


「レミーラ、ルック。来てくれたか、ありがとうよ」

「いえ、ドレーク兄さま。とんでもないことでございます」

「ドレーク兄さん、王子殿下はいらっしゃらないのですか?」


 宮殿内に入った私達を出迎えてくれたのは、宮殿の使用人たちではなく……ドレーク兄さま本人と、騎士団員の方々だった。わざわざ、ドレーク兄さまが私を出迎える為に集めてくれたのかな? だとすると悪い気がしてしまう。

「シグレ王子殿下は客室で待っておられる。では、失礼のないようにな」


 私とルック兄さまは騎士団員に囲まれてそのまま進んだ。物々しい雰囲気だ。


 そして、ドレーク兄さまが案内してくれた客室の扉をノックし、挨拶を済ませた後、私は中へと入る。そこには……紛れもなく第五王子殿下のシグレ様がいた。


「シグレ・クエイルンだ。本日は私の為に、ご足労を掛けて済まなかった。来てくれたことに感謝する」


 明朗快活、ルック兄さまやドレーク兄さまとは別の意味で明るい印象を持ったお方だった。私は彼の一言を聞いただけで、引き込まれた気分になってしまった。

 魅力的な兄が二人いるので、それに似た雰囲気を持つ方には弱いのかもしれない。
しおりを挟む
感想 270

あなたにおすすめの小説

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】

小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」 ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。 きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。 いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》  最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。  そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。 ……約束の時間を過ぎてから。 侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。 貴族の結婚なんて、所詮は政略で。 家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。 なのに…… 何もかも義姉優先。 挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。 挙句の果て、侯爵家なのだから。 そっちは子爵家なのだからと見下される始末。 そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。 更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!? 流石にそこはお断りしますけど!? もう、付き合いきれない。 けれど、婚約白紙を今更出来ない…… なら、新たに契約を結びましょうか。 義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。 ----------------------- ※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します

天宮有
恋愛
バハムス王子の婚約者になった私ルーミエは、様々な問題を魔法で解決していた。 結婚式で起きた問題を解決した際に、私は全ての魔力を失ってしまう。 中断していた結婚式が再開すると「魔力のない者とは関わりたくない」とバハムスが言い出す。 そしてバハムスは、幼馴染のメリタを妻にしていた。 これはメリタの計画で、私からバハムスを奪うことに成功する。 私は城から追い出されると、今まで力になってくれた魔法使いのジトアがやって来る。 ずっと好きだったと告白されて、私のために時間を戻す魔法を編み出したようだ。 ジトアの魔法により時間を戻すことに成功して、私がバハムスの妻になってない時だった。 幼馴染と婚約者の本心を知ったから、私は婚約を破棄します。

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

処理中です...