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蛇石の封印
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「私、そんなに頭いい方じゃないんだ。今の段階でなんとか授業についていってる感じなんだよ。だから毎回テスト前は必死に勉強している。特に英語は苦手でね。今回は間に合わなかった」
「そ、そうだったの。私、あなたが勉強に苦労しているように見えなかった。元々頭がよくて普通にこなしてるだけなのかなって」
「努力しないで、結果がでることはないよ。君だってそうなんだろ」
「……そうね。私も人並み以上に努力していると思う。なのに、なんであなたもそうだって思えなかったんだろう」
珠代のいうことも分からなくはない。
ひみかは同世代と比べて、あまりにもスマートに見えた。
だから根っからの天才肌だと思う人も多い。自らの才能で全てをこなしているイメージを持ってしまう。
でも、実際はそうではない。自分のレベルを熟知しているだけだ。
何が足りないのか、何を補わなければならないのか。その為にどれだけの事をしなければならないかを実践し続けているタイプ。
「ごめんなさい。確かに一方的だったわね。望月さんが言うように私、嫉妬してたの。でも、それは貴方にじゃなくて」
「ひみに構ってもらってる人達にでしょ」
「ええ。だって、私から始まったのよ。私のお姫様抱っこから始まったんだもの」
入学式の時に貧血で助けられた女子生徒は田所珠代だったのだ。
本当は誰よりもひみかに近づきたいと願っていた。
でも、彼女に助けられた女子生徒第一号という目でみられるのは何だか恥ずかしかった。
他の事で対等に距離を縮められないか。
幸いなことに彼女の成績は学年一位。
ひみかも成績上位だ。
それを口実にして近づいた。
でも、勝負を挑んでも本気になってくれるように見えなかった。向き合ってくれていないように感じてしまった。
それでいらついてしまっていたのだ。
が、
「だから、適わないっていうのは本音だよ。田所さん。学年1位を維持してるなんて君は凄いよ」
ひみかの言葉が突き刺さる。そんな言葉が欲しかったんじゃないのに。
「ううん。ごめんなさい。私、間違ってた。それよりも、言いたいことがあるの。ひょっとして忘れてしまったかもしれないけど、あの時、助けてくれてありがとう」
「忘れるわけないだろ。人前でお姫様抱っこなんて緊張したよ」
あれ以降彼女の中学生活は一変したといっていいかもしれない。
「そ、そうよね。ごめんなさいね。色々と。謝る以外にお詫びする方法も思い浮かばないけど」
そういう珠代にひみかは思案顔になる。
「うーん。そうだな。じゃあ、一つお願い聞いてもらってもいいかな」
「なに?何でも聞くわ。お、お金がかからないことなら……」
珠代は沈んだ口調で俯いてしまう。
「そんな事じゃないよ。あのさ勉強、教えてくれない?テスト間違った部分を復習したいんだよ。協力してくれないかな?」
「え……。そ、それって。二人っきりってこと?」
「二人だけが嫌なら他に人を呼ぼうか」
「ううん!二人だけの方が集中できるものね。も、勿論。それでいいならいくらでもするわよ。いつにする?きょ、今日の放課後でもいいわ」
思わぬ場で掴みかかった幸運を離してはなるまいと珠代は言葉を強くして答えた。
そのやりとり以降、二人は時間のある時に勉強会をする仲になった。結果として珠代が望む関係を築くことができたのだ。
いまりはその様子を見て、(甘いな)と思いながらも収まってよかったと思う。
事程左様に、安満蕗氷魅華は着実に女子生徒から絶大なる人気を得ていたのである。
男性を惹きつける事への忌避感の裏返しでもあるのか、彼女はその立場に敢えて甘んじていたのかもしれない。
そんな訳で彼女の卒業時、女子生徒達がどのような反応を示したかは推して知るべしだ。
「そ、そうだったの。私、あなたが勉強に苦労しているように見えなかった。元々頭がよくて普通にこなしてるだけなのかなって」
「努力しないで、結果がでることはないよ。君だってそうなんだろ」
「……そうね。私も人並み以上に努力していると思う。なのに、なんであなたもそうだって思えなかったんだろう」
珠代のいうことも分からなくはない。
ひみかは同世代と比べて、あまりにもスマートに見えた。
だから根っからの天才肌だと思う人も多い。自らの才能で全てをこなしているイメージを持ってしまう。
でも、実際はそうではない。自分のレベルを熟知しているだけだ。
何が足りないのか、何を補わなければならないのか。その為にどれだけの事をしなければならないかを実践し続けているタイプ。
「ごめんなさい。確かに一方的だったわね。望月さんが言うように私、嫉妬してたの。でも、それは貴方にじゃなくて」
「ひみに構ってもらってる人達にでしょ」
「ええ。だって、私から始まったのよ。私のお姫様抱っこから始まったんだもの」
入学式の時に貧血で助けられた女子生徒は田所珠代だったのだ。
本当は誰よりもひみかに近づきたいと願っていた。
でも、彼女に助けられた女子生徒第一号という目でみられるのは何だか恥ずかしかった。
他の事で対等に距離を縮められないか。
幸いなことに彼女の成績は学年一位。
ひみかも成績上位だ。
それを口実にして近づいた。
でも、勝負を挑んでも本気になってくれるように見えなかった。向き合ってくれていないように感じてしまった。
それでいらついてしまっていたのだ。
が、
「だから、適わないっていうのは本音だよ。田所さん。学年1位を維持してるなんて君は凄いよ」
ひみかの言葉が突き刺さる。そんな言葉が欲しかったんじゃないのに。
「ううん。ごめんなさい。私、間違ってた。それよりも、言いたいことがあるの。ひょっとして忘れてしまったかもしれないけど、あの時、助けてくれてありがとう」
「忘れるわけないだろ。人前でお姫様抱っこなんて緊張したよ」
あれ以降彼女の中学生活は一変したといっていいかもしれない。
「そ、そうよね。ごめんなさいね。色々と。謝る以外にお詫びする方法も思い浮かばないけど」
そういう珠代にひみかは思案顔になる。
「うーん。そうだな。じゃあ、一つお願い聞いてもらってもいいかな」
「なに?何でも聞くわ。お、お金がかからないことなら……」
珠代は沈んだ口調で俯いてしまう。
「そんな事じゃないよ。あのさ勉強、教えてくれない?テスト間違った部分を復習したいんだよ。協力してくれないかな?」
「え……。そ、それって。二人っきりってこと?」
「二人だけが嫌なら他に人を呼ぼうか」
「ううん!二人だけの方が集中できるものね。も、勿論。それでいいならいくらでもするわよ。いつにする?きょ、今日の放課後でもいいわ」
思わぬ場で掴みかかった幸運を離してはなるまいと珠代は言葉を強くして答えた。
そのやりとり以降、二人は時間のある時に勉強会をする仲になった。結果として珠代が望む関係を築くことができたのだ。
いまりはその様子を見て、(甘いな)と思いながらも収まってよかったと思う。
事程左様に、安満蕗氷魅華は着実に女子生徒から絶大なる人気を得ていたのである。
男性を惹きつける事への忌避感の裏返しでもあるのか、彼女はその立場に敢えて甘んじていたのかもしれない。
そんな訳で彼女の卒業時、女子生徒達がどのような反応を示したかは推して知るべしだ。
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