百鬼夜荘 妖怪たちの住むところ

山井縫

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蛇石の封印

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「タマちゃんなんか大泣きしてたしね」

 あの後、田所珠代とひみかの仲は急速に良くなった。

 ぶつかりそうになったいまりとも和解し「タマちゃん」という愛称でよぶような間柄になっていた。しかし彼女はひみか、いまりと別の私立高校に進学。

 だから学校で会えるのは卒業式が最後となる。

「本当だね。いまりが泣かして以来、何度彼女の涙をみたことかわからないけど」

「泣かしたって人聞きわるいな~。ちょっと言い過ぎたって思ってるのに。いじわる」

 いまりが頬を膨らませていうと、

「はは。でも、私の為にいってくれたことだったじゃない?嬉しかったんだよ」

 膨らませた頬を指でツンツンプニプニさせながらひみかが言う。

「も、もう~。やめてよ~」

 対していまりも嫌がるような口ぶりを見せるが顔は満更でもなさそうな顔で返した後、続ける。

「泣かせた女の数でいえばひみの方が圧倒的じゃない」

「それこそ人聞きが悪いよ。惜しんでくれた人がたくさんいたのは事実だけどさ」

「ボタンとかネクタイくださいって迫られたりもしてたじゃん」

「といっても数がないからね。一つはタマちゃんに。もう一つはいまり、君にあげただろ」

「まあ、誰かにあげたっていった方が渡せない理由になるもんね。弾除けにされたわけだ。タマちゃんだけに」

「……………………」

 二人だけの部屋に天使が舞い降りる。

 一瞬の間があってひみかが咳ばらいをした後に答えた。

「こほんっ。そんなつもりはないんだけどね。タマちゃんにも君にも目一杯親愛の情を込めて渡したつもりさ」

「それなら嬉しいけどね。アタシはひみからボタン貰えてうれしかったよ。宝物いれに大事にしまってあるんだ。こないだも取り出して眺めちゃった」

「そっか、じゃあ渡して正解だったな。離れている時もそれで私の事をそばに感じてくれているなら、それだけで幸せだよ」

「ん、もう~。しゅきしゅき~。大しゅき~」

 いまりはひみかへの愛情がマックス全開となりそのままダイブ。

「おっと。気にかけてくれてありがとう」

 対してひみかは優しく抱きとめ、いまりのウェイブがかった髪を撫で上げる。

「ふみゅ~」

 いまりは謎の言葉をあげながら至福の顔で暫くその手に身を任せていた、その撫でる手が止まり最後ポンポンっと軽く叩かれる。彼女は一瞬その時間が終わるのを惜しむかのような顔を見せた後、話題を変える。いや、戻すといった方がいいか。

「で、ネクタイはあゆにあげたんでしょ」

「上げたというより交換だね。あゆみのネクタイは私がもらって、私のを上げたんだ」

「因みになんだけど、女子からネクタイのプレゼントってどういう意味かしってる? 」

「ああ、意味とかあったんだっけ。聞いたことあるようなきがするけどなんだったかな? 」

「あなたに首ったけ。片時も離したくないって意味なんだって」

「なら、よかった。私の想いと大きく変わらないからね」

 いつもこれだ。ひみかにあゆみへの想いを聞くと好意があるとの返答が100%返ってくる。 
 しかし、

「ぶっちゃけて聞くけどさ。あゆのこと男の子としてちゃんと見てるの?」

 そここそが確信。ひみかが自分の立場に悩むことは分かる。

 あゆみとの関係が微妙なのも理解できる。

 更に自分は、漫画や映画で見たことのある焦れったい恋模様を見るのが大好きだ。

 それにしたって、じれったい。

 せめてひみかの想いをはっきり知りたかった。

 そもそも、あゆみが知るべきことなのかもしれないし、二人の関係だ。

 誰かが首を突っ込むことでもない。

 でも、流石に聞きたかった。中学から高校に変わるこの時期だ。

 一旦はっきりさせておきたいという衝動が抑えられないのだ。

 「勿論、男の子だっていうのはわかってるさ」

 ひみかは表面上落ち着いているようだった。

 「じゃあ、こ、恋の相手として意識したりは……」

 ごくりっ。
 唾を飲みこむ。

 「それは……」

 と、そこで突然。

 「キャー」

 表から悲鳴が聞こえてくる。
 
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