縊れ憑きの部屋 百鬼夜荘(闇)

山井縫

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連続縊死

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定食チェーン「ご飯処・蔦正(こはんどころ・つたまさ)」
 藤浜市をメインに複数展開する外食チェーンである。
 時刻は22:00の閉店間際だったが、「まだ大丈夫ですか?」飛び込んできた40歳過ぎの男。不動産屋の山口だった。
「ああ、山さん。大丈夫だよ」店長の鎌池康太は笑顔で答えた。
客は奥のテーブル席に一人しかいない。
「ブリ照り定食お願いします。あ、後生を中ジョッキで」言った後、「ふう」物憂げに溜め息をつく。
「はい、ビールお待ちどう。どうしたの?元気ないね」
 二人は同じ高校出身。康太が一つ上。共に写真部所属で先輩後輩関係だ。
ほとんどが幽霊部員。部室にいるメンバーもまともに活動などしていない。
適当に駄弁ったり、本を読んだり、中にはゲームを持ち込んでプレイしたりと、所謂お遊びサークルだった。
 先輩後輩関係といっても緩く、彼ら二人の関係も友人関係に近い。
 山口はその後大学を出て稼業を継ぎ、康太は専門学校を出た後に飲食業へと進んだ。が、その後も付き合いは続き、未だに「コウさん」「山さん」と呼び会う中だ。
 この店舗を新たに出店する際にも山口に相談していたのだ。
  そんな訳で康太は古くから付き合いがある友人の様子がおかしい事に気づいた。
「ちょっと厄介な問題が起きてましてね」
「仕事の事かい?住民トラブル持ち込まれてるとか?」
 集合住宅での、近隣トラブルが起きた場合、不動産屋や管理会社などが仲介に入る事が多い。
「いや、そういうんじゃないんですがね」
 言って山口はグイッとジョッキを大きく傾けると、一気に飲み干し「もう、一杯」言ってトンとジョッキを置く。
「おいおい。どうしたんだい?」
 普段は小ジョッキや焼酎の水割りをチビチビやるタイプ。ビールをあおる所など見た事が無い。
「ウチの親父亡くなってるのは知ってますよね」   
「ああ、一年前じゃなかったかな。まだ、若かったんだろ」
「はい。60歳でした」
「大変だったよな。山さん、丁度出てた時期だろ」
 卒業後、山口は稼業を継ぐつもりで暫くは実家の不動産屋で働いていた。
 しかし、将来を見据えた時。実家の業務範囲だけの経験では不安が残る。一度実家を離れ同業大手の会社で経験を積むことにしたのだ。
父親が亡くなったのは彼が家を離れて7年目の事だという。
「ええ。慌てて家に戻りました。それはもうバタバタで」 
「あの頃は忙しそうにしてたの覚えてるよ。でも、落ち着いてきたんじゃないかい」
「身の回りはね」
「一年を境に疲れがどっと出たとか?」 
 言った後、丁度ブリ照りが配膳される。ビールのおかわりも運ばれ、一旦、会話が止まった。
きつね色に程よく焼き上がったブリの身に大根おろしが添えられていた。独特の香ばしい匂いが漂い食欲をそそる。定食のおかずは他に白菜の漬物にきんぴらごぼう。タコの酢の物になめこ汁というシンプルな構成の定食だ。
山口は「いただきます」言って後は黙々と箸を進め、合間にごくごくとビールをあおる。
そうこうしている内に閉店時間が過ぎた。康太は二人のバイト店員に「いいよ。上がっちゃいな。看板だしちゃっといてくれ」と声をかけた。
「あ、すみません。早く片付けますね」
その様子に気づいた山口は慌てて残りを平らげようとする。
「いいよ。他にお客様もいないしね。ゆっくりやってくれて」
「そうですか。じゃあ、遠慮なく……」
 山口は礼の言葉を述べるがそのまま何か黙考しているようだった。
既に康太は山口が何か言いたいことがあるのではないかと察しをつけていた。でも、余計な声をかけず、彼が話し出すのを待つことにする。
BGMとして一昔前のポップスが流れる中暫し訪れる沈黙。
そこへ、
「お疲れ様でしたー。失礼します」
 という声が聞こえてきた。
 バイト店員二人が声をかけてきたのだ。そのまま裏口へと消えていく。
それを合図にするように山口が言葉をしぼりだすように話だした。
「コウさんは花森町のコーポフラワーフォレストってマンション知ってますか?」
「いや、ちょっと解らないな。どの辺だろう」
 花森町は解る。藤浜市街から東の外れにある地域だ。
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