縊れ憑きの部屋 百鬼夜荘(闇)

山井縫

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刻まれた過去

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 外食チェーン「ご飯処・蔦正(こはんどころ・つたまさ)」
 週末金曜日。時刻は22:00の閉店間際だったが、

「まだ大丈夫ですか?」
 飛び込んできた40歳過ぎの男。不動産屋の山口だった。

 応対したのは前回と同じく店主の鎌池康太だ。
「おお、山さん。前と随分様子が違うね。元気そうでなによりだ」
「はい、心配事が一つ片付きましたんでね」
 山口は晴れやかな顔を見せながら「春の天ぷら定食で」と続けた。

「あいよ、天ぷら定食一丁! 」と厨房に声をかける。

 と、そこへ別な方向から山口に声がかかる。
「やあ山口さん、その後は如何ですか? 」
 康太の弟、鎌池修二だった。
 相も変わらず兄貴の店に飯をたかりに来ていたらしい。

 それに対し山口は、
「ああ、修二さん。その節は大変お世話になりました」
 言って90度近く深々と頭を下げる。
 あれから実に2週間が経過していた。
 
 お祓いの日の夜。言っていた通り彼は部屋に寝泊まりした。しかし結果として朝まで何もなかったのだ。妙な音もしなければ妙なものを観たりもしない。勿論、今に至るまで首をくくろうなどと言う気も起きていない。つまりお祓いは成功し問題は解決したのである。 
 
「お世話にって、こいつに何かされたのかい? おい、勘弁してくれよ。昔からの友達に妙な真似するんじゃないよ」
 二人のやり取り見て康太心配顔だ。

「いや、妙な真似なんてとんでもない。金鞠あゆみさんを紹介してもらったんです。お祓いの為にね」

 山口はニコニコ顔で修二の方へ顔を向けた。

 それを受けて修二は、
「ほら、例の事故物件だよ。首吊りの」
 したり顔で兄に向って言う。

「ああ、前話していた奴か。そいやあの時あゆみがどうって聞いてたな。でも、あいつまだ中学生だぞ」

「何言ってんだよ。もう4月であいつももう高校生になったよ。それに歳なんざ関係ない。腕は折り紙付きだ。俺も長く付き合ってああいう場面を始めてみたが見事なもんだったよ。ねえ?」

 同意を求めるように山口に向けて言う。

「いや、本当に助かりました。私あれから毎日寝泊まりしているんですが、快適に過ごしております」

 言われて修二はあの部屋に一歩足を踏み入れた時の感覚を思い出したらしく、一瞬毛を逆立てる。

「そ、それはよかった。しかし、もの凄い部屋でしたな。見るからにヤバいのがわかりましたよ。一体なんで部屋だけがあんな事になったんでしょうな」

 あんな恐ろしい瘴気を振りまく土地だ。並々ならぬ因縁があるに違いない。

「ええ。それについても手を尽くして調べました。そして、ある程度の事が分かりました」
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