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刻まれた過去
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「つまり、岩田という人の家系はそもそも首吊りの木と因縁があったことですな」
「そう言うことになります。あまりに話が広がりすぎていて飲み込めているわけではないんですが」
「それより、山さん。お前さん、随分詳しいな。それだけの事を調べるのも大変だったろう」
「いえ、私が調べた訳ではありません。岩田さんはその事実をしってショックを受けたようですが、だからと言って他所へ移り住むことはしませんでした。岩田家の末裔としてその地で最期を全うしようと決意したそうなんです、が……」
時代が下って新駅開発が持ち上がった。山を切り崩し土地を全て作り変えるということだ。
その為彼の家にも立ち退き要請が下り、交渉役となったのが山口の父親だった。
初め岩田は渋っていたらしいし、理由すら言わなかった。
自分はこの地を離れるわけにはいかないのだというばかり。
しかし、山口の父親が足しげく通って粘り強く交渉した。
その結果、彼が話したのが先の内容なのだという。
「と、言うことは親父さんは事情を知っていたわけだ」
「はい。ただ、元々合理的な思考の人でしたし、開発の期間を遅らせるわけにはいきませんからね」
なんとしてでも川崎源吾を今の家から出さなければならない。
そこでこういう提案をした。
「あなたをこの土地から追い出すつもりはありません。この後に建つマンション部屋を用意します」
「なるほど、それであのマンションに移り住むことになったわけだ」
「ええ。しかも、首吊りの木に関しては神社の神主を呼んでお祓いをすると約束したそうです」
そして、実際に工事前にはお祓いを実施したという。岩田もそこに同席した。その時初めて首吊りの木の実物を見る事となったわけだ。
「しかし、結果として岩田源吾は部屋で首を吊った」
聞いていた修二は呟くようにいった。
「はい。しかも……」
「何か、他にもあったんですか? 」
「岩田さんは高齢で独居状態だったので、発見には少し時間がかかりました」
ある日管理会社から連絡があった。
岩田の義理の息子から義父と連絡が付かない。尋ねてもでてこないので心配だ、部屋を確認させてほしいとの要請があったのだという。
そのため、不動産屋として立ち会うために山口の父親が現場に行き、遺体を発見したのだ。
「親父さんは話を聞いてたんだもんな。中々ショッキングな話だよ、そりゃ」
「勿論、それもあるんです。が、それだけじゃなりません。彼は机の上に乗ってカーテンレールを使ったようなんです。その机にあるものが2つ置いてありました」
「二つ? 」
「ええ。一つは枯れた木の枝でした」
「はあ? え……と、それって」
「それをどこから持ってきたかは、わかりません。ですが、状況から考えると……」
「例の木の枝をもってきちまったってことですか? うーん……」
「因みにもう一つは?」
「それは分厚いノートでした」
ひょっとしたらそこに遺書でも書いてあるかもしれない。親族が中をみたがそのような内容ではなかったのだが、
「父も断って内容をみさせてもらったそうです。すると、それは首吊りの木について調べた調査ノートだったんです。実は最近父の遺品を改めて整理したらそれが出てきまして」
ノートは一度警察が押収した。その時、父が遺族に断り戻ってきたら引き取らせてほしいとの約束をしたのだという。
「なるほど、それであれだけ詳しかったのか。因みにその枝の行方は? 」
「そちらはわかりません。恐らく処分されたのだと思います」
遺されたノートを父は隅から隅まで詳しく読みこんだという。
だからといって、霊や祟りを信じていたわけではない。
話の内容を聞けば、合理的説明だって付けられるからだ。
首吊りの木の来歴に岩田の家系が絡んでいたとすれば、彼の実両親もそれをしっていたかもしれない。それが意識的か無意識的かは分からないが心中場所の選択に影響を与えたと考えられるのではないか。
岩田自身もそうだ。ある意味彼は憑りつかれていたのかもしれない。
それは首吊りの木の祟りという超常的なものにではなく、自分自身の「木への恐怖」が彼を縛り非業の最期を遂げさせた。
であれば、これで最期だろう。彼の死をもって首吊りの木の祟りは終了したと想ったのだが、
「しかし、その後二度続けて起きてしまいました。それでも、父は合理的説明を捨てることはできませんでした。だから、そんなことがある訳ないと身をもって証明しようとしたんでしょう」
それが仇となったわけだ。死の連鎖は止まらなかった。
「そう言うことになります。あまりに話が広がりすぎていて飲み込めているわけではないんですが」
「それより、山さん。お前さん、随分詳しいな。それだけの事を調べるのも大変だったろう」
「いえ、私が調べた訳ではありません。岩田さんはその事実をしってショックを受けたようですが、だからと言って他所へ移り住むことはしませんでした。岩田家の末裔としてその地で最期を全うしようと決意したそうなんです、が……」
時代が下って新駅開発が持ち上がった。山を切り崩し土地を全て作り変えるということだ。
その為彼の家にも立ち退き要請が下り、交渉役となったのが山口の父親だった。
初め岩田は渋っていたらしいし、理由すら言わなかった。
自分はこの地を離れるわけにはいかないのだというばかり。
しかし、山口の父親が足しげく通って粘り強く交渉した。
その結果、彼が話したのが先の内容なのだという。
「と、言うことは親父さんは事情を知っていたわけだ」
「はい。ただ、元々合理的な思考の人でしたし、開発の期間を遅らせるわけにはいきませんからね」
なんとしてでも川崎源吾を今の家から出さなければならない。
そこでこういう提案をした。
「あなたをこの土地から追い出すつもりはありません。この後に建つマンション部屋を用意します」
「なるほど、それであのマンションに移り住むことになったわけだ」
「ええ。しかも、首吊りの木に関しては神社の神主を呼んでお祓いをすると約束したそうです」
そして、実際に工事前にはお祓いを実施したという。岩田もそこに同席した。その時初めて首吊りの木の実物を見る事となったわけだ。
「しかし、結果として岩田源吾は部屋で首を吊った」
聞いていた修二は呟くようにいった。
「はい。しかも……」
「何か、他にもあったんですか? 」
「岩田さんは高齢で独居状態だったので、発見には少し時間がかかりました」
ある日管理会社から連絡があった。
岩田の義理の息子から義父と連絡が付かない。尋ねてもでてこないので心配だ、部屋を確認させてほしいとの要請があったのだという。
そのため、不動産屋として立ち会うために山口の父親が現場に行き、遺体を発見したのだ。
「親父さんは話を聞いてたんだもんな。中々ショッキングな話だよ、そりゃ」
「勿論、それもあるんです。が、それだけじゃなりません。彼は机の上に乗ってカーテンレールを使ったようなんです。その机にあるものが2つ置いてありました」
「二つ? 」
「ええ。一つは枯れた木の枝でした」
「はあ? え……と、それって」
「それをどこから持ってきたかは、わかりません。ですが、状況から考えると……」
「例の木の枝をもってきちまったってことですか? うーん……」
「因みにもう一つは?」
「それは分厚いノートでした」
ひょっとしたらそこに遺書でも書いてあるかもしれない。親族が中をみたがそのような内容ではなかったのだが、
「父も断って内容をみさせてもらったそうです。すると、それは首吊りの木について調べた調査ノートだったんです。実は最近父の遺品を改めて整理したらそれが出てきまして」
ノートは一度警察が押収した。その時、父が遺族に断り戻ってきたら引き取らせてほしいとの約束をしたのだという。
「なるほど、それであれだけ詳しかったのか。因みにその枝の行方は? 」
「そちらはわかりません。恐らく処分されたのだと思います」
遺されたノートを父は隅から隅まで詳しく読みこんだという。
だからといって、霊や祟りを信じていたわけではない。
話の内容を聞けば、合理的説明だって付けられるからだ。
首吊りの木の来歴に岩田の家系が絡んでいたとすれば、彼の実両親もそれをしっていたかもしれない。それが意識的か無意識的かは分からないが心中場所の選択に影響を与えたと考えられるのではないか。
岩田自身もそうだ。ある意味彼は憑りつかれていたのかもしれない。
それは首吊りの木の祟りという超常的なものにではなく、自分自身の「木への恐怖」が彼を縛り非業の最期を遂げさせた。
であれば、これで最期だろう。彼の死をもって首吊りの木の祟りは終了したと想ったのだが、
「しかし、その後二度続けて起きてしまいました。それでも、父は合理的説明を捨てることはできませんでした。だから、そんなことがある訳ないと身をもって証明しようとしたんでしょう」
それが仇となったわけだ。死の連鎖は止まらなかった。
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