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刻まれた過去
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「でも、安心したでしょう。その連鎖は止まったんですからね」
「ええ。本当にありがたい事です。長年の懸念材料が一つ消えましたから」
「いや、全くワタクシも人助けが功を奏してよかったですよ。はははははっは」
「お前がどうにしたわけじゃいだろうに、偉そうにいいなさんな」
言った所へ、突然電子音が響き渡る。康太のスマホからだ。
「ああ、ごめん。ちょっと、出ていいかな」
もうすでに、閉店時間は過ぎ、客は彼らだけだった。
「いいですよ。お気遣いなく、私もご飯いただきますね」
言って山口は前にだされていた天ぷら定食にぱくついた。
修二もそこには口を挟むことなく目の前のビールグラスを傾けてチビリチビリとやっている。
「そっか、わかった。わかった。今日は帰れないんだね。じゃあ気を付けて」
「何かあったんですか? 」
「ああ、恵のお姉さんが入院しててさ。付き添いで今日はかえれないっていうんだよ」
フィアンセで同棲している恵からかかって来たらしい。
「そうなんですか、付き添いしなきゃならないっていうことは難しい状態じゃないんですか」
「うん、まあね。いや、前に結構な大けがをしてね。一頃は意識不明の重体だったんだけど、どうにか持ち直して目を覚ました。ただね、偶に意識が途絶えるんだってさ。で、また起きるってのを繰り返してる。だから中々退院できない。怪我自体は良くなってるって話なんだけどね」
「うわ、そりゃ本当に大変だ」
確か、そもそも、恵はこの店のオーナーの娘で業務にもかなり携わっていると聞いている。
その上で病人の付き添いを朝までとは、彼女自身の負担も相当に違いない。
「へへへ、本当に病院にいってるか怪しいぜ。浮気でもして遊び歩いてるんじゃないの?」
そこへ修二がまぜっかえすようなことを口にする。彼はあまり恵のことを好いていないのだ。
「修二、お前言っていい事があるぞ。家の店出禁にしてやろうか」
康太は余りの物言いに逆上しかける。日頃ろくでもないことを言ってきても厳しい口調ながら彼のことはかばってきたが、フィアンセを悪く言われるのだけは許せない。
「じょーだんだよ。じょうーだん。そんな怖い顔して怒りなさんなって」
修二もその様子をみて流石に怒らせすぎたかと慌てて茶を濁すような言葉を返す。
間に挟まれた山口は気まずかった。なので、話題を変えようとする。
「あ、あの。でも、それだとお店も大変でしょう。恵さんも出てましたもんね」
「そうなんだよ。しかも、最近一人、バイトが辞めるっていうんでさ。てんてこまいだよ。誰か若くて任せらえるような人が来てくれないかと想ってんだけどね。山さんいい人いないかね」
山口は不動産屋ということもあり、顔が広い、町の情報も色々入ってくる。
「そうですか。分かりました。当たっておきますよ」
そんな話をしている所へまた電子音が響き渡る。
一瞬、また康太のものかと想ったが、それは山口への物だった。
「す、すいません。出てもいいですか」
「ああ、誰もいないし構わないよ」
ありがとうございますといって、彼はスマホを耳に当てる。しかし、
「ああ、はい。はい、はい、え…………。そ、そんな」
その様子を二人共みるともなく見ていたが、明らかに様子がおかしい。
やりとりをしている間にすっかり取り乱し、顔が青ざめている。
ややあって電話をおいた。
「ど、どうしたんだよ。な、なんかあったのかい? 」
「しゅ、修二さん。大変です。た、田村さんが」
「田村? ああ、部屋の前に住んでた人ね。その人がどうかしたんですか? 」
「く、首を吊りました」
「はあ? ど、どこで? 死、死んだんですか? 」
「いえ、今の入居先近くの公園の木でやったそうです。ただ、枝があまり太くなかったらしくて、折れてしまったので落下して助かったと」
流石の修二も今度ばかりは呑気にしていられない。取り乱したように叫ぶ。
「ど、どういうことだそりゃ。さっぱりわからねえ。結局お祓いは失敗だったってのか」
「ええ。本当にありがたい事です。長年の懸念材料が一つ消えましたから」
「いや、全くワタクシも人助けが功を奏してよかったですよ。はははははっは」
「お前がどうにしたわけじゃいだろうに、偉そうにいいなさんな」
言った所へ、突然電子音が響き渡る。康太のスマホからだ。
「ああ、ごめん。ちょっと、出ていいかな」
もうすでに、閉店時間は過ぎ、客は彼らだけだった。
「いいですよ。お気遣いなく、私もご飯いただきますね」
言って山口は前にだされていた天ぷら定食にぱくついた。
修二もそこには口を挟むことなく目の前のビールグラスを傾けてチビリチビリとやっている。
「そっか、わかった。わかった。今日は帰れないんだね。じゃあ気を付けて」
「何かあったんですか? 」
「ああ、恵のお姉さんが入院しててさ。付き添いで今日はかえれないっていうんだよ」
フィアンセで同棲している恵からかかって来たらしい。
「そうなんですか、付き添いしなきゃならないっていうことは難しい状態じゃないんですか」
「うん、まあね。いや、前に結構な大けがをしてね。一頃は意識不明の重体だったんだけど、どうにか持ち直して目を覚ました。ただね、偶に意識が途絶えるんだってさ。で、また起きるってのを繰り返してる。だから中々退院できない。怪我自体は良くなってるって話なんだけどね」
「うわ、そりゃ本当に大変だ」
確か、そもそも、恵はこの店のオーナーの娘で業務にもかなり携わっていると聞いている。
その上で病人の付き添いを朝までとは、彼女自身の負担も相当に違いない。
「へへへ、本当に病院にいってるか怪しいぜ。浮気でもして遊び歩いてるんじゃないの?」
そこへ修二がまぜっかえすようなことを口にする。彼はあまり恵のことを好いていないのだ。
「修二、お前言っていい事があるぞ。家の店出禁にしてやろうか」
康太は余りの物言いに逆上しかける。日頃ろくでもないことを言ってきても厳しい口調ながら彼のことはかばってきたが、フィアンセを悪く言われるのだけは許せない。
「じょーだんだよ。じょうーだん。そんな怖い顔して怒りなさんなって」
修二もその様子をみて流石に怒らせすぎたかと慌てて茶を濁すような言葉を返す。
間に挟まれた山口は気まずかった。なので、話題を変えようとする。
「あ、あの。でも、それだとお店も大変でしょう。恵さんも出てましたもんね」
「そうなんだよ。しかも、最近一人、バイトが辞めるっていうんでさ。てんてこまいだよ。誰か若くて任せらえるような人が来てくれないかと想ってんだけどね。山さんいい人いないかね」
山口は不動産屋ということもあり、顔が広い、町の情報も色々入ってくる。
「そうですか。分かりました。当たっておきますよ」
そんな話をしている所へまた電子音が響き渡る。
一瞬、また康太のものかと想ったが、それは山口への物だった。
「す、すいません。出てもいいですか」
「ああ、誰もいないし構わないよ」
ありがとうございますといって、彼はスマホを耳に当てる。しかし、
「ああ、はい。はい、はい、え…………。そ、そんな」
その様子を二人共みるともなく見ていたが、明らかに様子がおかしい。
やりとりをしている間にすっかり取り乱し、顔が青ざめている。
ややあって電話をおいた。
「ど、どうしたんだよ。な、なんかあったのかい? 」
「しゅ、修二さん。大変です。た、田村さんが」
「田村? ああ、部屋の前に住んでた人ね。その人がどうかしたんですか? 」
「く、首を吊りました」
「はあ? ど、どこで? 死、死んだんですか? 」
「いえ、今の入居先近くの公園の木でやったそうです。ただ、枝があまり太くなかったらしくて、折れてしまったので落下して助かったと」
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