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Lovely Moon 3
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飽くことなく朱羽と抱き合い、湿ったシーツは皺だらけだ。
朱羽も疲れ知らずで繋げてきて、回数を重ねるうちに九年後のあたしの弱点のすべてを見抜いたようで、そこだけを突いてくるから、何度もイキ続けるあたしは気が狂うかと思うくらいに乱れた。
「はぅぅっ、またイク、イク!」
あたしの恋人はかなり激しい愛し方をするとはわかっていたものの、九年ぶりに味わう彼の身体は、彼の成長と共に激しさと技巧を増したように思う。
「陽菜、イク顔をみせて。……ああ、……たまらないね、本当に」
「激し、朱羽、朱羽――っ」
正常位にて朱羽に容赦なく攻め立てられてあたしの声が枯れると、朱羽は妖艶に笑い、あたしの口に舌先から細く唾液を垂らす。するといやらしいことなのに、あたしは至宝の甘露のようにそれを甘受して、朱羽に染まった気になって悶えるのだ。
ベッドの周りに落ちる、封が切られた銀の袋。
それはすべて朱羽があたしを求めてくれた証拠だ。
今まで繋がることが出来ないままに表面的に快楽を追求した分、今は身体の芯から快楽の波が襲う。
またもや大きな波に身体を取られて果てると、あたしと朱羽は抱きしめ合うようにしながら、はぁはぁと肩で息をして、唇を重ねた。
朱羽はあたしから出ると、避妊具の処理をしているようだ。
あたし達の身体は汗なのか淫汁なのかわからぬくらい濡れている。
「お風呂、入ろうか」
朱羽があたしの前髪を掻き上げるようにして、ちゅっちゅっと啄むキスを顔に落としてきた。
「ごめんね、臭いだろ? 俺、汗だらけだから」
そう苦笑してくるから、あたしは下から朱羽の首筋にくんくんと鼻を鳴らして嗅ぎ、玉状に膨れた彼の汗を舌で舐めとりながら、言う。
「……朱羽の匂いに汗が混ざると、すごくえっちな気分になる。あんなにしても、まだ朱羽に愛されたくなる」
「はは……。俺のお姫様は貪欲だね、どうしてやろうか」
朱羽が笑いながら、あたしの髪の毛をくしゃくしゃにしてくる。
「きゃあああ!!」
こうしたじゃれ合いすら愛おしくて、きゃっきゃと笑い合う。
やがて朱羽が起き上がりベッドから立つ。
官能的な気怠るさを顔に浮かべ、朱羽はすらりとした長身の裸体をあたしに見せながら、両手をあたしの身体の下に差し込み、そのまま持ち上げた。
「なに!?」
「お風呂。一緒に入ろう? あなたと離れてたくないんだ」
そう捨てられた子犬のように寂しげな顔で、だけど色香をぶわりと撒き散らして言われると、あたしは顔を赤らめてこくりと頷くことしかできない。
そのまま浴室へと赴き、あたしが入った湯がそのままになっている浴槽にあたしごとどぷんと入った。
浴槽は六角形のプールのような形をしていて、ドアの正面にあたるところは硝子窓になっている。スポットライトのような照明が絶妙な位置にあり、湯をきらきら反射させ、同時に硝子窓からの景色を浮かび上がらせた。
最初に入った時は背にして気づかなかったが、夜景と星空、そして満月があり、その綺麗さに感嘆の声をあげてしまった。
朱羽は窓がよく見えるように、膝の上にあたしを後ろ向きに跨がらせて、両脇に両手を差し込んだ朱羽の手は、あたしのお腹の前で組まれている。
「満月、大丈夫?」
甘い朱羽の声と湯の温かさに、くらくらしそうだ。
「うん、大丈夫。朱羽のおかげで克服できたかもしれない。こうやって満月の夜景が見れるのなんて本当に久しぶり」
「よかったね。これからは今まで見れなかった分、何度も一緒に見ようね。あ……」
朱羽が浴槽の縁に置かれてあった、英語のラベルの小さな小瓶を見つけたようだ。色違いで全部で8つあり、なんなのかよくわからない。
朱羽はそのうちのひとつのキャップを外すと、湯の上に垂らした。
「はい、陽菜。湯を叩くように手をバタバタさせて?」
「え、バタバタ……こう?」
もこもこと膨らんでくる、薄いオレンジ色の泡。
そしてこの匂い……。
「イランイランだよ。いやらしい気分になってきた?」
朱羽の香りが強まって広がる。
目を瞑れば、朱羽がたくさんいてあたしを愛してくれているような、そんな倒錯的な幻想が瞼の裏を過ぎる。
「ふふ、いやらしい朱羽がたくさ……ん……っ」
朱羽があたしの耳をなぶった。
「は……ぁっ」
「そうだよ、俺はいやらしいよ?」
朱羽の舌が耳殻の溝を這い、あたしは身震いした。
あたしが動く度、繊細な泡があたしの身体を愛撫しているようで、迂闊に動けない。
「だけどあなた限定だ。いやらしいあなたに、俺調教されたから」
「調教って……」
あたしの声も知らずに甘くなる。
朱羽の舌が耳の穴から忍んでくる。濡れた舌の音が鼓膜に届いて、思わず朱羽に凭れさせるようにして、甘い刺激に震える。
「俺を……あなた好みの男にして?」
喘ぐような甘い声が聞こえて、ぞくぞくした。
湯より朱羽の息の方が熱い。熱くてのぼせそうだ。
「俺から……この先、離れられないように」
「朱、羽……」
鼻腔に広がる魅惑的なイランイランの香りは、あたしを乱れさせる。
「……あなたから離れられない、俺のように」
甘い言葉と甘い声音が、あたしを煽っていく。
「好きだよ、陽菜。本当に……好きだ」
甘い魔法にかかり、あたしも譫言のように声を漏らす。
「あたしも好き……。どうしていいかわからないくらい」
振り向こうとしたら、顔を出していた朱羽に唇を奪われた。
「ん……」
背中で感じる朱羽の肌と湯に、脳が蕩けそうだ。
あたしと朱羽の、淫らに舌を絡める音が反響する。
いつも以上に気持ちよくて声が止らない。
「陽菜、ん……もっと、はっ、啼い、て」
「んん、ぅん、しゅ……んんっ」
煽られて声を漏らすと余計に、気持ちよさが止らない。
朱羽の手が、湯の中のあたしの乳房を手のひらで優しく弄るようにして、リズムをつけて揉み込んでいく。
泡だらけの水紋が、断続的に広がった。
唇を離した朱羽は、煌めく水面を瞳に映させながら魅惑的に笑う。
「俺の風呂でも、あなたを愛したね」
「うん……っ」
下から掬うようにあたしの唇を再び奪うと、朱羽は両胸の突起をきゅっと指で潰してくる。
身体がびくんと震えたが、朱羽は口づけをしたまま力を入れて蕾を捏ねてくる。
「は、ぅぅんっ」
朱羽があたしの耳元で囁いた。
「びくびくして可愛い。胸だけでイッちゃいそうだね」
声にぞくぞくする。
片手は蕾と戯れ、片手はあたしのお腹を手のひらで撫で、茂みの中に滑り込む。
「はぁあああっ」
喘ぐあたしの顔に嬉しそうにキスの雨を降らせながら、朱羽の手がずっと愛され続けていた花園を往復する。
「とろとろだよ?」
「……っ」
「わかる? ここに俺のが入ったんだ」
朱羽の指が、あたしの蜜壷に浅く出入りする。
そのたびにあたしの呼吸が変化していく。
「この奥はね、熱い襞でうねっているんだ。すごく気持ちよくてたまらなくないから、あなたに味合せてあげたいけど、俺だけの特権だね」
繊細な朱羽の指が深くあたしの中に入っては出ていく。
「ふふ、とろんとした顔をして、そんなに気持ちいいの?」
あたしの荒い息が響き渡る。
「うん、気持ち、いい、の」
蕩けた眼差しを絡め合せて朱羽とキスをしながら、ゆっくり出入りする朱羽の指に合わせて腰を動かすと、朱羽の指ではないごりごりとしたものを秘部は感じた。
手で触ると、愛おしい朱羽の分身だ。
そそり立って存在を主張している。
「ああ、見つかっちゃった」
疲れ知らずで猛っているのが、あたしをまた求めてくれているからだと思うと、嬉しくて愛おしくて……。
あたしは朱羽の手を引き抜くと、真向かいになるようにあたしの身体の向きを変えて腰を浮かし、手で掴んだ朱羽の先端を蜜壷に宛がった。
「駄目だ、陽菜。ゴムつけていないんだ。だから」
朱羽が焦った声を出す。
「欲しい。朱羽の……そのまま、頂戴」
あたしが腰を落とすと、朱羽の先端があたしの中を強く擦り上げるようにして奥へと入ってくる。
「あっ」
短く叫んだ朱羽が苦しげに喉元を見せ、あたしは朱羽のそのままのごつごつとした感触があまりにも良すぎて、そのままイッてしまった。
その間に朱羽は引き抜く。
「大丈夫だと思うけど、子供が出来たらどうするんだよ」
怒りながらも、朱羽も生の感触を忘れられないのか、官能的な表情をして、下でよく絡めなかった分を舌で濃厚に絡めてきた。
「俺、あなたの中で何度も暴発してるんだぞ? 我慢きかなくなるじゃないか」
あたしの腰も朱羽の腰も、妖しげに揺れる。
ああ、素のままで繋がりたい。
こんなに欲情した瞳を合わせて、ようやく奥まで繋がれた夜なのに、あたしの潤った中に入ってくれないなんて。
「挿れて。欲しい」
「子供が出来たら、子供になんて言うんだよ」
泡の中でもぬめった粘液をまとう性器同士が擦れ合う。
暗黙でキスをしながら、互いに摩擦するように動く。
ああ、この堅くて熱いのを中に入れて貰いたいのに。
「……ゴムを使わなかったから?」
冗談だったけれど、色香を放って欲情した顔の朱羽に、額にデコピンされた。
「そういう時は、お父さんとお母さんが愛し合って出来たんだと言えよ」
怒る顔すら、とろりとして。
ああ、そこ。
気持ちいい。
思わず朱羽に抱き、喘ぐ。
「ちゃんと覚えていてくれよ、この先俺達の子供に変なこと言うなよ?」
朱羽の声も乱れている。
「……あたし達の子供が生まれるの前提なの?」
とろりとした目で、朱羽を見ると、朱羽は切なそうな目であたしに入りたいと訴えながら、吐息まじりに言う。
「あなたに、他の男の子供は産ませない」
朱羽が入りたいと、蜜壷の入り口を突いてくる。
互いの息が荒い。
「あなたのこと真剣に想っているから、出来てから結婚するということはしたくない。望んで結婚してから、子供を作りたいんだ」
あたしが中に入れようとすると、そらしてくる。
もどかしい眼差しを絡めて、キスをした。
そんな未来が来たら幸せだね。
だけどあたし、結婚というもので今から朱羽を縛りたくない。あたしは結婚適齢期かもしれないけど、重荷に思って貰いたくないんだ。
ありのままの、今のあたしを愛して欲しいから。
「あのさ……」
下半身の位置をずらして睦み合いを止めると、朱羽はとろりとしながらも真剣な光を目に宿して聞いてくる。
「もしこの先、俺達結婚することになったら、会社、辞められる?」
それは意外な言葉で。
「シークレットムーン辞めて、専業主婦になれる?」
あたしは頭を横に振った。
「あたし働きたい。朱羽と、会社を支えたいもの」
すると朱羽は、なにか諦観したようにふっと笑った。
「……だよね。ただ聞いてみただけ。忘れて?」
あたしが会社を愛しているのを朱羽は知っているはずなのに、なんでそんなことを言い出したかひっかかったが、朱羽が仕掛けてきたキスに夢中になり、それが軽く吹き飛んでしまった。
唇を離した朱羽の顔が苦しげだった。
「――限界。ここから出よう。あなたと繋がりたい。あなたの感触が忘れられなくて」
あたし達は泡を軽くシャワーで落とすと、浴室から出た。
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