転生しました。

さきくさゆり

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第三章

本気でやりますよ。戦闘になんかならないけどな。

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 ヤバイと言いつつ、異空間にほっぽりこんでた浴衣を着たからトランクス一丁問題は無事解決した。

 さて……マジにここどこだろ……。

 んー……よし、久しぶりにやるか。

 まずは周りの魔力を取り込んでってなんか濃くね?
 なにこの濃度。
 まあおかけですぐに同化魔法を使えた。

 そいえばこの魔法って魔術なんだっけ。
 どーも定義がわからん。
 今度色々実験するか。

 そのまま同化した魔力を放出して気配察知魔法……魔法術を使う。
 実はこの魔法術、敵の気配だとかだけではなく地形だとかがある程度わかるのだ。

 さーてここはどこやー…………うせやろ……。


 俺がいる場所はだだっ広い入り組んだ迷路のような空間にいること。
 迷路のような空間……なんというか思い当たるのは一つしかない。


 俺はおそらく、ヨンの迷宮の何処かにいる!


 酔っ払った俺何してんだ……。


 *****


 あれから一時間、俺は目覚めたところで飯を食べつつ先生への言い訳を考えていた。

 いや、絶対逃げ出したとか思われてるし、もし思われてなくても前日に記憶がなくなるほど酒飲んだのがバレたらシャレにならねえからさ。

 まあ、いい案なんて全く出なかったんだけど。


 さて、ここがヨンの迷宮のどの階層かはわからんが人が全然通らないことから、結構上層にいるんだろうと思う。
 あ、でも最上階って結構人いるはずだよな……まさかまだ夜ってことか?
 だから人が来ないとそういうわけか。
 なるへそ納得。

 俺どうしよ。
 どの辺かわからんけどソコソコ上層ならせっかくだし最上階まで行っちゃおうかしら。
 にしてもさすが最弱ダンジョンだな。
 酔っ払った状態でもここまで来れちゃうんだから。
 ま、本気で自重しないなら戦闘なんかせずに終わるしなぁ俺。
 魔物とかマトモに戦ってないんだろうな。


 俺はパパっと片付けてから、せっかくなのでと最上階を目指すことにした。
 とりあえずこの迷路階層はさっきの気配察知魔法……魔術……気配察知魔法術でゴールまでの道筋は見えている。

 まずは身体強化。

 そのままダッシュ。

 すれ違う魔物はなんの魔物か確認すらしない。
 接敵と同時に異空間魔法術で消す。
 この時、固定せずに発動させれば何処かに消し飛ぶ。
 たまにミスって足が残ったり、首だけ消えたりなどはご愛嬌。

 そんなことをしながら約三〇分でゴール。
 あー疲れた。
 ここがゴールね。
 結構広いな。
 学校のグラウンドくらいある。

 さてこの階層のボスは何かな?


 階層のボスポップ場所がその階層のゴールになってて、ボスを倒すと階段が現れたり、ワープゾーンのようなものが現れたりして次の階層に上がれる……と本に書いてあった。

 お、なんか光った。
 広場の真ん中あたりで光と柱が上っていく。
 その柱が細くなって消え、代わりにでっかーい魔物さん。
 そして、俺の頭の中で声が響く。

『『『我々の名前はオルt「うるせえ消えろ」

 俺は異空間魔法術で出てきた魔物の頭を丸ごと消し去った。
 残った身体は思い出したかのように倒れた後、少し光ってから粒子になって消えた。


 お、階段だ。
 さーて次はどんな階層かなぁ。
 そいえばさっきの魔物ってなんだったんだろ。
 まいっか。


 *****


 あれから七時間経過した。
 俺はガンガン進めて、今は迷路の階層から数えて八〇階層目である。
 いやーたまにボスを確認してると面白いくらいゲームのようなのが出てきたわ。
 ヤマタノオロチとか頭落としても復活するから逆に身体だけ消したら八つの頭がボトボト落ちてきてちょっと笑えた。

 そのノリでここのボスがどんなのか確認しようと思ったんだけど……。
 やめとけばよかった。
 今俺は全力で逃げ回ってる。

 ここで俺の弱点を上げておこう。


 一つ、いくら身体強化しててもベースはただの普人族。

 理論上は確かに際限無く身体強化ができると言っても、それは理論上の話。
 取り込める量が増えなければ意味がないし、もし大量に取り込めたとしても、結局のところ普人族の限界を超えることは不可能だ。
 まあ、限界は神クラスだからそこまでできるなら弱点なんてなくなるけど。

 一つ、異空間魔法術は意識的にしか発動できない。

 なんでも消し去る異空間魔法術は俺がここに発動すると決めてからじゃないと発動できないのだ。
 自動発動できる方法を考えてはいるが、へトリーの話を聞く感じじゃおそらく魔法の部類に入るのだろうな。
 それは置いといて、意識的にしか発動できないということはつまり俺が認識するより速く動かれたら手詰まりってことだ。


 俺が戦闘なんかにならない理由はここにある。
 異空間魔法術を当てられないレベルのやつにはどう足掻いたってかないっこない、つまり勝負にならない。
 身体強化したところで逃げ回るのがせいぜいだ。


 そして今俺が何から逃げ回っているかというと。

『フハハハハ、逃げてばかりいないでかかってこないか!』
『うるせえ!いい加減疲れやがれ!!』

 凄まじい速さで俺のことを追いかけ回して来るのは、三メートルくらいの銀狼。

 ファンタジーではお馴染み『フェンリル』です。

 うん、ポップと同時に発動してれば良かったのに、何が出るか気になってしまって……。
 前口上聞いてからスタート。

 速すぎて当たりませんでした。

 ありえねぇ。
 ここって思った時には既に懐に入ってきてるわ、とんでもねえ水球を口から連発してくるわ、かと思えば口を凄まじい速さで開閉しながや回転突撃してくるわまあとんでもない。


 そんで今は逃げ回って、フェンリルのスタミナ削り中なんだが俺が疲れてきた……。

 どうするか……。

 一個方法があるにはあるが……やるしかないよな……。


 俺は身体強化を部分強化に切り替えた。

 そして、

 ーードクシャアアア!!

 うーわ我ながらすっげえ音。

 でも、

「づーがまえだあ」

 おーおーフェンリルビビってるっへーいへいへい。

『き、貴様!何を考えている!』
『気にすんな』
『は?!ふざけ……』

 俺は体を張ってとっ捕まえたフェンリルを異空間魔法術で上半身を消し飛ばした。


「ゲボハッッッ!」

 あークソきっつい。

 さっさと治そ。


 まず、フェンリルの頭突きを食らった腹を時間遡行魔法術で治す。
 内蔵完全にやられてたな。
 次に踏ん張るために使った結果、複雑骨折した足を治す。
 次に受け止めて飛んでった右腕とひしゃげた左腕を治す。
 最後にボロッボロの浴衣を直してっと。


「復活!疲れたあ!!」

 出てきた階段を尻目に、俺はここで少し休憩することにした。



★★★★★


パストにとっての戦闘とは、拮抗した戦いのことを指しています。
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