転生しました。

さきくさゆり

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第三章

なんだこの空気

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 おかしい……。

 いくらなんでも人がいなさすぎる。
 というか俺が最初にいたところってかなり下層だったらしいし……。
 あと、本に載っていた帰還陣が無いことに今更ながら気がついた。


 もしかしてさ……ここってさ……ヨンの迷宮じゃ……ない?


 だとしたらさ……ここってさ……。


 俺は考えるのをやめて、異空間から買っておいたケバブを出して貪り食うことにした。


 ケバブを食べ終わってお茶飲んで一息。

 そして俺は帰ることにしました。


 全力で。


 *****


 あれから数時間……休み休みしつつも全力疾走してついに……、

「帰ってきたああああああ!!!」

 生きて帰れた!
 そして案の定、ダンジョンの入り口には人っ子一人おらなんだ。
 あーやっぱなって思ったわ。

 時間はどうも日が落ちる直前のようだ。
 俺はとりあえず宿に向かうことにした。
 アオと合流するためだ。


 歩いているとだんだん人が増えていく。
 と思った矢先、

「うおっ?!」

 いきなり肩を掴まれグリンっと振り向かされた。
 肩を掴んできたのは……誰だこの女。

「パ、パストくん!無事だったんだね!ボ、ボクは心配で心配で……。アオちゃん達も昨日の居酒屋のところにいるはずだから行こう!早くしないと捜索隊が編成されちゃう!」
「は?な、なんだお前?捜索隊?何言ってんだ?」
「もしかして、記憶が飛ぶほど恐ろしい目に……あーとにかく早く!!」
「いやちょ、待てよ。待てって引っ張るなって力強っ!」

 なんかよくわからんが、俺は黒髪の女に、物凄い強さで引っ張られながら走った。


 着いてみると俺が昨日いた居酒屋。
 中に入ると、

「あ、師匠」
「ん?アオなにしてんの?」

 つかあれ?
 チェニックとリーシャもいるじゃん。
 リーシャは涙目だし、チェニックは口を開けて馬鹿面晒してる。
 それになんか人いっぱいいるし……。

「おいアオ。これどういうことだ?」

 小声でアオに聞く。

「あー師匠ってば相当酔ってたって話でしたからね。覚えてないんですねやっぱり」
「なにがあったんだ?」
「……おいパスト」

 突然背後からとっても低い女性の声がしました。

「……こ、こんばんは先生」
「おおこんばんはパスト。私の言いたい事がわかるか?」
「…………すっぽかして申し訳ございませんでした」

 その瞬間思いっきりぶん殴られた。
 まさか殴られると思わなかった俺はもろに食らってしまい、近くのテーブルに突っ込んじまった。

「なにすんですか?!」

すぐに立ち上がって先生に文句を言った。

「貴様は何をしたかわかっているのか?!」
「だから罰をすっぽかしたからでしょ?だからって殴ることないじゃないっすか!」
「そんなことで殴るか馬鹿者!!」

 なんだってそんなブチ切れてんだ。

「あ、記憶失うほど飲んだからですか?まあそりゃ確かに悪いですけど……。まあ殴られるか」
「……貴様は本当にわからないのか?」

 えー……。
 なんなんだよ……。

「貴様はさっきまでどこにいたのかわかってないのか?」
「……あー……ヨ、ヨンの迷宮にイタヨウナキガスルナー」
「本当にそう思って言ってるのか?」
「…………いいえ」

 やっぱりか……。

「貴様は酔ったままゼロの塔に単身で突撃したんだよ。なんの装備も持たずトランクス一丁でな」

 マジか。
 俺最初から裸単騎だったのかよ。

「あーそれで俺、一人で爆睡してたんすね……」
「貴様はそれがどういうことかわかってるのか?」
「え?笑い話でしょ?」

 瞬間また殴られそうになったがぎりぎり躱す。

「なんで殴るんすか?!」
「なんで殴られたのかまだわからないのか!!」
「そりゃ酔ったまま突っ込んじまったことは悪いなあと思いますし、罰をすっぽかしたことも悪いとは思います。でも殴られるほどのことじゃないと思うんですけど……」

 先生は顔を真っ赤にして歯を食いしばったかと思ったら、

「貴様は……」

 と言ったきり黙り込む。
 なんなんだよ……。
 意味がわからない。
 酔ってすっぽかした程度でそんなに怒らんでも……。
 でもどうもそこじゃないらしいし……。
 勝手にゼロの塔に突撃したことでもないみたいだし……。

「師匠」
「なんだ?」

 アオが近づいてきて、袖を引っ張ってきた。

「私は師匠がそう簡単に死ぬと思ってなかったんであんまり心配してなかったんですけどね。他の人たちは物凄く心配してたんですよ」
「は?心配?なんで?」
「ゼロの塔は死んだらそれまでなんですよね?そんなところに酔ったまま行くなんて自殺行為と言われてもおかしくないですよ」
「まあそりゃな。それで?」
「みんなは師匠が死んじゃったんじゃないかって心配してたんですよ。それなのにヘラヘラと笑って帰ってきたら怒るのも当たり前でしょう?」

 は?

「俺の心配なんかする人いたの?」

 つい口をついて出た言葉。
 その言葉を聞いたこの場にいた奴ら全員の顔つきが変わった。

「え?なんでみんなそんな……えーなんだよ。俺が死んでも関係ないだろ。まあ、先生の場合は監督不行届きで罰せられるから怒られるのはわかるけどさ。ここにいる奴らほとんど昨日会ったばっかの奴らじゃん。なんでみんなそんな……そんな……」

 そんな可哀想な奴・・・・・を見る目で俺を見るんだよ。

「……アオ、帰るぞ」
「はい師匠」

 俺はアオを連れて宿に帰った。
 外は日が完全に落ちて、一昨日と同じように街灯で明るくなっていた。
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