63 / 103
第四章
需要はねぇだろうなぁ
しおりを挟む
いやー……うん……。
あっという間に二ヶ月過ぎたよ。
端折るな?
いや、毎日朝からボッコボコにされて、学園行って、終わったら仕事して、帰ってきてまた軽くボッコボコにされ、たまに先生と背中を流し合い、そんな毎日ですよ。
特に語ることはねぇよ。
アオが先生のことを大師匠と呼び始めたくらいだよ。
さて、これから俺はある人物に会う為に、王都のとある喫茶店に来ています。
まあわかるよな。
ソヴィレシア騎士団副団長様だ。
さて、なぜこんなにも会う日が遅くなったのか。
理由は簡単だ。
俺が返事を書き忘れていた。
明日書こ、明日書こ、を繰り返していたらこんだけたってた。
ぶっちゃけ俺が悪い。
んで、返事を書いて二日後に向こうからまた手紙が来て、今日の昼頃この喫茶店に来てほしいと言われて来た。
んでただ待ってるのは暇なのでどうしたものかと思い、王都で流行っているらしい小説を買って、読もうと思っていたのだが。
「ブラヴォー!いやぁ素晴らしいねぇ。パスト君だっけ?今度ギルド経由で仕事として来てもらってもいいかい?」
「いいっすよー!ぜひぜひ!つかこんなとこにピアノがあるなんて、店長も弾けるんですか?」
「若い頃は私も弾いたもんだが、今じゃあからっきしさね」
「そうなんっすか。まあでも若い頃弾いてたんなら、案外パッと思い出すものですよ。よかったら即興で連弾します?」
「んー嬉しい誘いだが、今日はやめておこうかね。少し私も練習しておくから、今度は是非お願いしたいねぇ」
「こちらこそ是非是非」
この喫茶店には奇麗なピアノが置いてあったので、店長のお婆ちゃんに頼んで弾かせて貰っていた。
なかなか良いピアノで、しかもちゃんとメンテしてあったからな。
鍵盤は滑らかで、音も狂っていない。
学園のは俺が調律しているから、微妙に響きがね。
それに、専用の器具がねぇから身体強化した指で無理矢理やってるから微調整もできねぇ。
知ってるか?
ピアノって一つの音につき弦が三本使われていて、しかもでっかいナットみたいなのをハンマーっていう専用のネジ回しでちょっとずつ動かして音を調律していくんだ。
…………つい夢中になってしまった。
悪い、忘れてくれ。
まあとにかく、この喫茶店のピアノはとても良いピアノだということだ。
それから何曲か弾かせてもらい、一息つくと、
「ほぉ、月の光か。花火は弾けるか?」
後ろを向くと、真っ赤な長い髪を後ろで無造作に結んでいる、先生と同じくらいのおば……おね……えさんが、腕を組んで立っていた。
「あー……もしかして、ミリエラ・ヴァーグレスさんですか?」
「いかにも。このわしがミリエラ・ヴァーグレスじゃ。ミリーちゃんと呼んでほしいの」
*****
「改めまして、俺はパスト・オリガです。パストと呼んでください」
「なんじゃかたっ苦しい。敬語はやめろ。わしもお主の前で素でいることにするからの」
「……まじで中身はジジィなのか」
「あれじゃ。手紙で書いた通りTSってやつじゃ」
誰得だよ……。
まあ確かに所作は完全にジジィだな。
おいコラ、カーッってやんな。
身体は女性なんだから別にタンが絡むことねぇだろうが。
「んじゃお言葉に甘えて。普段からその口調でそういう感じなのか?」
「じゃぁさら素で話そうと言ったろうが。普段は全然違うぞ。可愛子ちゃんの前ではちゃあんと、理想のミリエラを演じておる。まあミリエラはわしでもあるから演じるというのは妙な話じゃがな」
「ちなみにその普段はどんな感じなんだ?」
そう聞くと、ミリエラさんは目を閉じで深呼吸をした。
そして、目を開けると……。
「?!」
「どお?一応普段はこんな感じよ?」
なん……だと……。
すげぇ余裕のある女性の雰囲気を出し始めた?!
さっきまでは本当に女性の皮をかぶったクソジジイだったのに、今はとんでもなく色っぽく、それでいて男性的な魅力もある格好良くて綺麗な大人女性になりやがった!
「後は女の子達に対してすこーしだけ変えてあげれば、結構簡単に落ちるわよ」
そう言って次々と醸し出す雰囲気を変えていくミリエラさん。
そして最後にもう一度最初の女性ミリエラさんになった後、クソジジイに戻った。
「とまあこんな具合でな。どうじゃ?童貞のお主にはちと刺激が強すぎたかの?」
「くたばれクソジジイ」
「ガッハッハッハッ!くたばったから転生しておるんじゃ馬鹿者が!」
「今世でくたばれ」
「生意気なガキじゃのぉ。前世も良くて成人したてってとこか?これだから最近の若い者は。年長者を敬わんかい」
「ぐっ……」
言い返せねぇ……。
「それで?わしになんか用があって会いたがったのか?それとも世間話でもしたくて呼んだのか?」
「世間話兼ちょっとした情報収集」
「なんじゃ。戦争に参加させろとか言い出すのかと思っとったわ」
「は?」
戦争?
戦争あるの?
「知らんのか。レデンから聞いとらんのか?勇者召喚の話。まあそろそろ魔界に突撃するとか言っておったぞ。お主の学園にいた……あー……名前忘れた……。ま、そいつらも参加しておるそうじゃから、てっきりお主も参加させて貰うためにかと思うとったわ」
「まず魔界があるなんて知らなかったわ。それに俺はチートも無けりゃ強い仲間もいねぇしな。戦争に参加なんざしたくねぇよ」
「ま、それがよかろう。戦争なんざ良いことはないぞ」
「ちなみに魔界は何をしたんだ?」
「なんでも、人界の王達の寝室に大量の糞文字で喧嘩を売ってきたらしいぞ」
滅べ魔界。
「この世界にまともな奴はいねぇのかよ……」
「おらんじゃろ。良くも悪くもこの世界は狂っておるからの。狂った世界には狂ったモノしか育たぬよ」
「なんか格好良さげなこと言ってるけど、ジジィも充分狂ってる部類だからな」
「お主も相当じゃろ。家族から化物扱いされても平気な顔で育っておるんじゃから」
「前世の記憶があるせいで、家族として見れねぇからな。他人から化物扱いされても気にしねぇよ。それに本当に化物クラスの奴らはウジャウジャいるしな。ジジィとかよ」
「ガッハッハッハッ!そりゃお主程度じゃ化物に失礼じゃな!ガッハッハッハッ!」
笑いすぎたクソジジイ。
でもなんかスッキリした気分。
あっという間に二ヶ月過ぎたよ。
端折るな?
いや、毎日朝からボッコボコにされて、学園行って、終わったら仕事して、帰ってきてまた軽くボッコボコにされ、たまに先生と背中を流し合い、そんな毎日ですよ。
特に語ることはねぇよ。
アオが先生のことを大師匠と呼び始めたくらいだよ。
さて、これから俺はある人物に会う為に、王都のとある喫茶店に来ています。
まあわかるよな。
ソヴィレシア騎士団副団長様だ。
さて、なぜこんなにも会う日が遅くなったのか。
理由は簡単だ。
俺が返事を書き忘れていた。
明日書こ、明日書こ、を繰り返していたらこんだけたってた。
ぶっちゃけ俺が悪い。
んで、返事を書いて二日後に向こうからまた手紙が来て、今日の昼頃この喫茶店に来てほしいと言われて来た。
んでただ待ってるのは暇なのでどうしたものかと思い、王都で流行っているらしい小説を買って、読もうと思っていたのだが。
「ブラヴォー!いやぁ素晴らしいねぇ。パスト君だっけ?今度ギルド経由で仕事として来てもらってもいいかい?」
「いいっすよー!ぜひぜひ!つかこんなとこにピアノがあるなんて、店長も弾けるんですか?」
「若い頃は私も弾いたもんだが、今じゃあからっきしさね」
「そうなんっすか。まあでも若い頃弾いてたんなら、案外パッと思い出すものですよ。よかったら即興で連弾します?」
「んー嬉しい誘いだが、今日はやめておこうかね。少し私も練習しておくから、今度は是非お願いしたいねぇ」
「こちらこそ是非是非」
この喫茶店には奇麗なピアノが置いてあったので、店長のお婆ちゃんに頼んで弾かせて貰っていた。
なかなか良いピアノで、しかもちゃんとメンテしてあったからな。
鍵盤は滑らかで、音も狂っていない。
学園のは俺が調律しているから、微妙に響きがね。
それに、専用の器具がねぇから身体強化した指で無理矢理やってるから微調整もできねぇ。
知ってるか?
ピアノって一つの音につき弦が三本使われていて、しかもでっかいナットみたいなのをハンマーっていう専用のネジ回しでちょっとずつ動かして音を調律していくんだ。
…………つい夢中になってしまった。
悪い、忘れてくれ。
まあとにかく、この喫茶店のピアノはとても良いピアノだということだ。
それから何曲か弾かせてもらい、一息つくと、
「ほぉ、月の光か。花火は弾けるか?」
後ろを向くと、真っ赤な長い髪を後ろで無造作に結んでいる、先生と同じくらいのおば……おね……えさんが、腕を組んで立っていた。
「あー……もしかして、ミリエラ・ヴァーグレスさんですか?」
「いかにも。このわしがミリエラ・ヴァーグレスじゃ。ミリーちゃんと呼んでほしいの」
*****
「改めまして、俺はパスト・オリガです。パストと呼んでください」
「なんじゃかたっ苦しい。敬語はやめろ。わしもお主の前で素でいることにするからの」
「……まじで中身はジジィなのか」
「あれじゃ。手紙で書いた通りTSってやつじゃ」
誰得だよ……。
まあ確かに所作は完全にジジィだな。
おいコラ、カーッってやんな。
身体は女性なんだから別にタンが絡むことねぇだろうが。
「んじゃお言葉に甘えて。普段からその口調でそういう感じなのか?」
「じゃぁさら素で話そうと言ったろうが。普段は全然違うぞ。可愛子ちゃんの前ではちゃあんと、理想のミリエラを演じておる。まあミリエラはわしでもあるから演じるというのは妙な話じゃがな」
「ちなみにその普段はどんな感じなんだ?」
そう聞くと、ミリエラさんは目を閉じで深呼吸をした。
そして、目を開けると……。
「?!」
「どお?一応普段はこんな感じよ?」
なん……だと……。
すげぇ余裕のある女性の雰囲気を出し始めた?!
さっきまでは本当に女性の皮をかぶったクソジジイだったのに、今はとんでもなく色っぽく、それでいて男性的な魅力もある格好良くて綺麗な大人女性になりやがった!
「後は女の子達に対してすこーしだけ変えてあげれば、結構簡単に落ちるわよ」
そう言って次々と醸し出す雰囲気を変えていくミリエラさん。
そして最後にもう一度最初の女性ミリエラさんになった後、クソジジイに戻った。
「とまあこんな具合でな。どうじゃ?童貞のお主にはちと刺激が強すぎたかの?」
「くたばれクソジジイ」
「ガッハッハッハッ!くたばったから転生しておるんじゃ馬鹿者が!」
「今世でくたばれ」
「生意気なガキじゃのぉ。前世も良くて成人したてってとこか?これだから最近の若い者は。年長者を敬わんかい」
「ぐっ……」
言い返せねぇ……。
「それで?わしになんか用があって会いたがったのか?それとも世間話でもしたくて呼んだのか?」
「世間話兼ちょっとした情報収集」
「なんじゃ。戦争に参加させろとか言い出すのかと思っとったわ」
「は?」
戦争?
戦争あるの?
「知らんのか。レデンから聞いとらんのか?勇者召喚の話。まあそろそろ魔界に突撃するとか言っておったぞ。お主の学園にいた……あー……名前忘れた……。ま、そいつらも参加しておるそうじゃから、てっきりお主も参加させて貰うためにかと思うとったわ」
「まず魔界があるなんて知らなかったわ。それに俺はチートも無けりゃ強い仲間もいねぇしな。戦争に参加なんざしたくねぇよ」
「ま、それがよかろう。戦争なんざ良いことはないぞ」
「ちなみに魔界は何をしたんだ?」
「なんでも、人界の王達の寝室に大量の糞文字で喧嘩を売ってきたらしいぞ」
滅べ魔界。
「この世界にまともな奴はいねぇのかよ……」
「おらんじゃろ。良くも悪くもこの世界は狂っておるからの。狂った世界には狂ったモノしか育たぬよ」
「なんか格好良さげなこと言ってるけど、ジジィも充分狂ってる部類だからな」
「お主も相当じゃろ。家族から化物扱いされても平気な顔で育っておるんじゃから」
「前世の記憶があるせいで、家族として見れねぇからな。他人から化物扱いされても気にしねぇよ。それに本当に化物クラスの奴らはウジャウジャいるしな。ジジィとかよ」
「ガッハッハッハッ!そりゃお主程度じゃ化物に失礼じゃな!ガッハッハッハッ!」
笑いすぎたクソジジイ。
でもなんかスッキリした気分。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【長編版】悪役令嬢の妹様
紫
ファンタジー
星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。
そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。
ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。
やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。
―――アイシアお姉様は私が守る!
最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する!
※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>
既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる