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第六章
やめまーす!
しおりを挟む「解せぬ……」
「あらどうしたのパスト君」
「アオのお母さん」
中庭でレジャーシートを敷いて曇り空を眺めていると、アオのお母さんがやってきた。
「やぁね。ユリって呼んで頂戴よ」
ゴス服の少……女性は断り無しにレジャーシートの上に土足で上がった。
「ユリさん、靴は脱いで下さい」
「あらごめんなさい」
すぐに靴をポイッポイッと脱ぎ、俺の前に来て座った。
「それで?なんか浮かない顔してるけど」
「いやぁ、俺の何が悪かったのかなぁと……」
「はい?」
「ああ、さっきアオと組手したんですけどね」
俺は先程の顛末をアオの母さん……ユリさんに話した。
*****
「師匠何してるんですか?」
「腹ごなしの軽い運動」
朝から、しかも寝起きに食いすぎたので少し胃もたれしたのだ。
肉とか肉とか肉とか。
なので中庭を借りて軽く体を動かすことにした。
ふと気になったのは、ドラゴン肉が無かったことだ。
何故なのか聞いてみたところ、美味くて乱獲したことがあり、それ以来制限しているそうだ。
まず殆どこの国でドラゴン肉は食えないそうだ。たとえ王族だとしても例外なく。
って話が逸れた。
そう運動。
いやあ四年間のブランクはデカイね。
今はパストとして存在しているから、バランスとかは問題ないけど、前みたいにキレが全くない。筋力とかはアオによる時間遡行で眠った時と変わらなくても、頭の中の感覚っていうのかな。それが完全に矛盾している。
「じゃあ組手しましょう!」
「お、じゃ頼むわ。四年ぶりだからな。お前強くなってるだろうし、勝てるかな……」
「ふっふっふー。今日こそ師匠を地面に叩きつけて差し上げましょう」
いつも俺がやってたもんな。
「オッケー。んじゃここでいいよな」
「はい!いつでもどうぞ」
「……着替えなくていいのか?」
着流しのままだぞお前。
俺はとっくに着替えてるけど。
「この方が動きやすいんですもん。それより早く早く!」
「嬉しそうで何より」
少しお互いに離れる。
四年前のように俺の合図と共に組手は始まった。
「構えて……始めっ!」
そして俺は地面に仰向けに倒れた。
横にはアオが正座しており、片手は俺の後頭部に添えられている。
「…………あれ?」
辛うじて見えたのは、俺の横に現れたアオの存在だけ。
何をされたとかどんな顔とかそんなものを認識する前に俺はこの状態になっていた。
「ついに……ついに師匠を……」
そんなアオさんはボロボロと泣いている。
「アオさん?なんか強くなりすぎてませんか?」
「大師匠と母上、父上のおかげです」
つまり化物クラスの人たちに四年間絞られたと。
そんで生き残ってるのだから、そりゃ勝てないわー。
いや勝てるとは思ってなかったよ。そこまで舐めちゃいないさ。
なんせ四年間俺はサボってたんだから。
けど見えないって……。何されたかわからないって……。
「あー……アオさんや」
「はいなんでしょうっ?!」
なんか褒めてくれって表情してるけど俺はまぶこう言った。
「お前、弟子卒業。俺はお前の師匠やめるわ」
弟子より弱すぎる師匠はありえねぇよ。
*****
「そしたらアオのやつ、泣きながらどっか走っていったんですよね。捨て台詞に『死んだ目のまま死んじゃえ!』だそうです。オタク、娘さんにどういう教育してるんすか」
「そうね。二年前にここに来てからは、私と主人とクーテちゃんとで、ミッチリ鍛えたわよ」
何をした。つかクーテちゃんて……。
「あ、先生は今どちらに?それにアオの父さんも」
そういえば会ってなかったということに今更気がついた。
「クーテちゃんは学園があるから長期休暇にしかここには来ないのよ。主人は人界会議に出るためにベルクレスタね」
「人界会議?」
「ええ。魔界とのことで色々とあるのよ。それよりアオちゃんのことよ!あなた如きが人界魔界天界の話に首を突っ込む必要無いでしょ」
如きは酷くない?如きだけど。
つか天界まであんのかよ。
「……霊界とかありそう」
「あら知ってるのねってだからそんなことはどうでもいいの!」
あるんだ。
「いやでもですよ。弟子より弱い、いや弱すぎる師匠ってありえないでしょ。師匠を超えたな我が弟子よってことでサラバってするのは普通だと思うんですが。それに俺が育てたわけじゃないですし」
大体先生が家に来たあたりからは、先生が師匠みたいなもんだったし。
教えることなんざ、ネットで齧ってこっちで地味に鍛えた中途半端な格闘技程度だったが、こちらで化物クラスの人たちに実戦で鍛えられた格闘方法を教えてもらっている。
魔法だって異空間魔法くらいしか教えられないのに、今や余裕で使いこなし、さらに親に教えることができてる始末。
完全に教えることが無くなってるよ。
「そうねぇ。無いわねぇ」
「でしょ?だから卒業って言ったのに、死ねは無いですよね」
「んーまあそれは後でお仕置きするとして……。アオちゃんはあなたの弟子であることが重要またいなのよ。師匠と呼ぶのは後にも先にもあなただけって決めてるみたい」
なんじゃそりゃ。
「師匠は一生師匠ってことよ」
やっぱりよくわからん。
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