転生しました。

さきくさゆり

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第六章

エイプリルフールに嘘をつける余裕が欲しい

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「ってことがあってな。パストってなんでこんなに虐められるんだろうな」
「なんか虐めというよりもクラス中巻き込んだ喧嘩に見えんだけど。…………つかこのお茶なんだようめぇな」

 恭介が久しぶりに家に来たのでのんびりお茶を飲みながら話していた。

「お兄ちゃんもそう思う?」
「ああ」

 なんだよ二人して。

「あれだよ。やり返さずにいれば良かったんだよ」
「は?泣き寝入りしろってか?」
「違う違う違う違う。つかお前の夢の話なのになんでそんなマジな顔すんだよ」
「和樹…………」

 なんだよ二人して。

「そうじゃなくて、こっちからは何もしなければ完全に被害者として色々と出来たんじゃないの?って話よ」
「そうそれ!」

 あー……そゆことね。

「いやだってやられたらやり返したいだろ」
「…………なんかパストとお前の性格が似すぎてて怖いよ」
「そりゃ俺の夢だからな」

 つか本当にあったパストの話だし。

「まあまずドブからさらった泥を机に入れるのはどうかと思うわ」
「えー。最初はアオのバイト先の生ゴミをぶち込むことも考えたんだぜ?でも生ゴミより泥の方がダメージキツイかなぁと」
「大して変わんねぇよ!」
「いや泥の方がやばいよお兄ちゃん」

 死ぬほどつまんねえ兄妹漫才は置いといて。

「とりあえず先に手を出してきたのはアッチ。しかも喧嘩で負けたくせに俺の条件を無視したのもアッチ。なら多少の仕返しは大目に見てくれてもいいだろ」
「その仕返しがやり過ぎなんだっての……」
「っていうかそんなことより私聞きたいことがあるんだけど」

 突然花梨が右手を挙げた。

「はいどうぞ花梨さん」

 なんとなくのってみる。

「なんで夢の話なのに私が出てこないんですか?」
「夢だからです。以上」
「嘘だ!!」

 やめろよ。
 お前のそれは前科がある分怖いんだよ……。

「でも夢なら俺達が出てこないのってホント変だよな。まるで小説の異世界行ったり来たり話みてえだし、案外本当の話だったりしてな」

 ナッハッハッハッと豪快に笑ってるとこ悪いが、花梨の顔が般若になってんだけど。

「ねぇ本当に異世界の話なの?だとしたら和樹は女の人と三人で暮らしてるってことよね?」
「へ?あーそうだな。ってこれ夢だからな!」
「なんで夢なのに私が出てこないの?」
「ゆ、ゆめだから……」
「私を出してよ」

 俺は恭介の方に視線を向けた。
 だが恭介はニコッと笑うと、

「俺、これからデートだから!」
「おまっふざけんなっ!」

 逃げやがった!

「ねえ和樹。そろそろ私達の関係についても色々と話したいんだけど」
「夢の話からそこに行き着くかな?!」
「だったら私を夢に出して!私も暮らしたい!和樹と異世界で遊びたい!」
「いや遊んでねぇから!学業と仕事だけでたまにしか遊べてねぇから!」

 最近のお仕事はドブさらい。

「なら私も仕事手伝う!異世界つーれーてーけー!」
「来たって何もできねぇだろ!無理なものは無理!つかあっちじゃ魔法とか使えなきゃそこそこ危険なんだからな!」

 猛獣や魔物の類いは確かに人里にはあまり降りてこないとはいえ、存在していることは確かだ。
 そして結構ガチ目でヤバイ。

 異空間魔法で即殺できるから俺は問題無いが、普通ならそんなに簡単にはいかない。だからオーガだとかは討伐以来を出してプロになんとかしてもらうことになる。ドラゴンもそう。

 …………そう考えると案外俺もチート野郎と言えなくもないのか?

「…………ふーん」

 なんか急に大人しくなったな。

「なんだよ」
「やっぱり和樹のその話、夢じゃないでしょ」
「は?夢だよ」
「来たって何も出来ないとか、魔法が使えなきゃそこそこ危険とかさ。なんでそんなリアルなわけ?どうせ夢ならそのうち出してやんよくらい言うよね和樹なら」
「…………いやあまりにもリアルな夢だからな。リアルに話してしまったのも仕方ないと思うよ、うん」

 それでもジト目を向けてくる花梨。

「あのね?和樹って昔から妙に寝付き良かったよね」
「へ?あ、あーまあ良かったよ」
「しかも寝たらなかなか起きないからよく私とおにいちゃんでいたずらしてたよね」
「したな。鼻と口塞がれた時はマジで焦った」

 死ぬかと思ったのに小鳥遊兄妹はゲラゲラ笑ってやがった。

「そうなのよね。何やっても起きないわけじゃないのよね」
「そりゃそんな漫画みたいなやつではないな」
「あのさ。二ヶ月くらい前に私一度焦って救急車呼んだことあったわよね」
「あーあったなそんなこと」

 アッチで過ごした後、地球に帰ってきたときのことだ。
 起きたら病院だったからホントびっくり。
 お母さん達には号泣されるし、病院での精密検査で入院する羽目になるしで超大変だったわ。
 あの時はしょうがねぇからパストには少し遠出の仕事を受けたことにして外泊してもらった。

「その後何度も同じ様にになってたからさ。私、和樹が寝ている間に色々とやってみたのよ。起きた時はケロッとしているけど、やってる間には全く起きる気配が無いのが不思議だったのよ」

 何をした。

「でも納得したわ。寝ている間は異世界に行ってるんだね」
「…………熟睡しているんだ。ほら一年寝続けたせいで癖になってんだよ」
「それでね、この間は熱湯をかけてみたのよ」
「あの火傷お前のせいか!!」

 とある朝起きたら右足の脛に火傷を負っていたのだ。
 あれは焦ったよ。すぐ治したけど。…………治しちゃったよ。

「なんで火傷消えてるのかなぁって思ってたの」
「思ってたのじゃないから。火傷は死ぬからな」

 刃物の次は熱湯とか、隔離されんぞ。

「魔法で治したの?」
「魔法?こら花梨。そんなことを言ったら本当に隔離されちゃうぞ。ほらお茶でも飲みなさいよ」
「誤魔化すってことは肯定と取っていいよね?」

 これは無理だな。いや逆に開き直ってみれば……。

「そ、そうだよ!おれ魔法が使えてさ!異世界と地球を行ったり来たりしてるんだ!」
「そっか。正直に話してくれてありがとう。それじゃあ話を戻すね。アオさんって人とクーテさんって人ととはどこまでいってるどんな関係なの?」

 どうしよう…………。終わらないよ?
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