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第二話 羊皮紙と棒

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 あぁ……なんか気持ちがいい。

 フワフワに包まれて……昔絵本で読んだ雲の中にいるみたいってのはこんな感じかな。

 そっか。
 雲の中ってことはやっぱり死んじゃったのかな。

 でも、こんな気持ちがいいなら早く死んじゃえば良かったな。

 必死に逃げてばっかの人生だったし。

 生きることからも逃げちゃえば良かったんだね。

 あぁ……。

 生まれ変わったら普通の平民がいいなぁ。
 リューネのようにパンとか焼いて……。

「ん………ん?あれ?」

 どうもあの世というのは随分と現実味のある雰囲気なんですね。
 意識もハッキリしています。

 私は上半身を起こしてみました。

「うわっ!」

 すごい!何この……布団なのですか?こんなフワッフワなの初めてです!
 城の布団よりも凄いです!

 それに着ている物もなんだかサラサラです!

 ただ……なんなのでしょうこの臭いは。
 どこかで嗅いだことのある……あ、そうです。
 病院です。


 それにしてもなんだかピッピッピッピッ五月蝿いですね。

 あの世って変な場所。

 それに外が見えるのに風がこないです。
 なんででしょうか。
 あら、太陽が白いです。
 というかあの世にも太陽があるのですね。

 なんだか外を見てたら伸びがしたくなってきました。

「ンーーッた!」

 何?!腕に何か……何でしょう。
 んー……管……かしら。
 それが……

「刺さってる!!わあああ!!!って血があああ!!」

 慌てて抜いたら底から血が溢れてきました!
 何!何なのですか!あの世って何なのですか!

「怖いよぉ……何なのよぉ……あの世ってもっと楽なところじゃないのぉ?布団しか今のところあの世って感じがないよぉ……」

 すると横でガラガラっという音がしました。

『あら、目が覚めました……って何点滴抜いてるんですか!あーもう血が出ちゃって……』

 な?!じょ、じょせいのヤーパ人もどき!

「いや!やめて!寄らないで!酷いことしないで!!」

 慌てて立ち上がろうとしたのですが、

「いっ!!」

 足が、動かない!痛い!!

『あーもう落ち着いて落ち着いて!何があったか判んないけど相当何かあったみたいね。うう……ハロー。アイムノットアンエネミー。アイルノットハームユー。私英語苦手なのよねぇ。通じてるかしら。というか英語でいいのかしら』

 白い服を着たヤーパ人もどきは私に向かって両手を挙げて何やら言ってるがサッパリです。
 だが両手を挙げるのは敵対しないって意味だってお兄様が言っていたの思い出したので、一応大人しくしてみました。

 すると一つため息をついて、ヤーパ人もどきは両手を挙げながら近づいてきました。
 私はヤーパ人もどきが横まで近づくのを待ってから、試しに話しかけてみました。

「あなたは誰ですか?ここはあの世なのですか?」
『へ?これ英語じゃないわね。何語かしら……。うう……困った……。あー……この針、抜いたら、駄目』

 やっぱり通じません。
 ただ女性は、さっき私が抜いた管を持って、それを自分の腕に当てた後また離し、両手をクロスさせました。
 ふむ……。

 管を抜いたら駄目ってことでしょうか。

 私は管を引ったくって、腕に刺してみました。

「いったああ!!!」
『わあーー!何してんの!自分で刺したら駄目ええええ!!』


「おおー……痛くなかった。刺し方にコツがあるのね」
『あーもう何て子よ。どっから来たのか知らないけど点滴を自分で刺そうとする子なんて初めてよ』

 ヤーパ人もどきが点滴を奪って怒鳴ってたので、よくわからないが任せていたら、ヤーパ人もどきが刺してくれました。

 それから気がついたのですが、私の顔には布が当てられていました。
 ヤーパ人もどきはその布を丁寧に剥がすと、私の顔を綿で突いてきました。
 少し痛かったが手当してくれているようでした。

 そこで気がついたのですが、どうやらこのヤーパ人は医者のようです。

 あの世でも体の傷は地道に治すしかないのですね。

 なんだか面白いっ。

「ふふふっ」
『あ、笑ったわね。よかったわ』

 つい笑ってしまったら、医者のヤーパ人もどきも笑いました。
 なんか変な感じです。
 でも、このヤーパ人もどきは酷いことをしないヤーパ人もどきのようです。

「あの、ここは、あの世、ですか?」

 身振り手振りを交えて話してかけてみました。

『んーと……ベッド、天井……かしら。……わからない。あ、そうだ。文字とかなら……ちょっと待ってて。先生も呼びたいから』

 両手を前にして何やら言うと、医者のヤーパ人もどきはいなくなりました。
 待っていろってことでしょうか。

 言葉が通じないとこうも大変だとは思いもしませんでした。


 程なくしてヤーパ人もどきは、同じように白い服を着た老齢の男性と共に帰ってきました。
 医者の仲間?

『この人、私と、同じ、医者』

 顔に出ていたのか、女性が私を見ると、男性を右手で指差して、左手を自身の胸に当てると、その後、両手で自分の頭から腰辺りまで撫でました。
 んー。
 同じだよってことでしょうか。

 すると男性も同じ動作をしました。
 どうやら同じってことで合ってるみたいです。

 すると女性が、今度は妙に白い羊皮紙と細い棒を出して近づいてきました。
 思わず身構えてしまったけど、私はすぐに驚きのほうで身体が強張りました。

『よし書けるわね』
「な、ななな!」

 なんと真っ白の羊皮紙にその棒を当ててグネグネと横に動かしましたら、そこに丸が連なっていたのです。
 これはまさか……筆?筆なの?こんな棒が?!

 女性が私に向かって筆を渡してきました。

『はい。これで文字を書いてくれたら、スマホでその文字調べるから。まあ通じなくてもわかるかなこれは』

 恐る恐る私も同じようにやってみます。

「キャーッ!すごーい!!」

 私はついつい夢中になって自分の名前とかを書き連ねてみました。
 すごい滑らか。
 引っかからない。
 しかもこの羊皮紙、薄い!こんな薄いのに書ける!すごい!

『先生。この文字……』
『僕も知らないな。一瞬ハングルかと思ったけど、全然違うね』
『それになんだか、初めて紙とボールペンを持ったようにも見えるんですけど』
『なっはっはっは。んなわけ無いだろ。あれか?タイムスリップでもしてきたか?なっはっはっは』
『ですよねぇ?でもなんか可愛いわあ。面白いからしばらく見てましょ』

 すごいすごいすごーい!!
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