僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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確かに昨日もアヤさんは凄かった。
凄かったし怖かったんだけど、相手は命を狙って来たグリフィンとか森の生き物達とかだったし…
でもアヤさんにとっては相手が人間でも同じなんだ。
同じ事が出来て…しまうんだ。

それが少しだけ恐ろしくて、でもそんな事をさせたのが自分だと思うと…とても悲しくて。
僕はこれからは絶対に、アヤさんを本気で怒らせないように気を付けよう!
と、心の中で密かに、誰にともなく誓った。

そして僕が漸く落ち着いた頃、この街の警備隊らしき人達がやって来たんだけど、気が付けば事後処理は全てアヤさんが済ませてくれたのだった。
酷く手慣れた感じなのは本人が言っていた通りだったって事なんだろう。

「それではアヤト様、彼奴あやつはこのまま詰所の方に連れて行きますので」
「ああ、手間を掛けてすまなかった。迅速な対応で本当に助かったよ、ありがとうラズ」
「全く、Sランクのアヤト様に絡むような馬鹿者はもうこの街には居ないと思っておったんですが…最近来たばかりの余所よそ者なのでしょうな。ともかく、此度こたびの件は後程のちほどギルドにでもご報告を預けておきますので」
「ああ、宜しく頼む」
「ハッ!それではお疲れ様でございました」

警備隊の人達がビシッと一礼をして、巻きにした髭ゴリラさんを詰所へと引き摺って行くのを見届けてから、僕達は漸く予定通りギルドに向かう事になった。

途中、周りのあちこちからは「素敵ぃアヤト様」とか「流石『蒼氷』だぜ」とか「勇者サマぁ」とかって気になる単語が色々と聞こえてきてたんだけど、アヤさんはガン無視で僕を抱っこしたまま歩き続けていた。

もういっそ清々しい程のシカトっぷりで、僕の方がオロオロしてしまったんだけど、アヤさんは全く気にせずギルドへと歩みを進めたのだった。

「イツキ、ここが『イーリア』の『冒険者ギルド』だよ」

暫くしてアヤさんが、大通りの突き当たりに建っていた四角い大きな建物を指差して教えてくれた。

アヤさんは入り口下にある石階段の手前で立ち止まると、僕の必死の降ろしてアピールをあっさり却下して僕を横抱きから縦抱きに抱き変えた。
右腕に僕を座らせたまま階段を登りきり、自由になった左手で静かにドアを開けて中に入った。

と、そこには…
正にお役所といった風景が広がっていたのだった。

この2階建の冒険者ギルドには1階中央に受付カウンターが4つと大きな買取カウンターが2つあり、サイドには売店や食堂があって、受付カウンター横の巨大ボードにはFからAランクの依頼書が順にたくさん並べて貼られていた。

入り口ドア付近に描かれた館内地図によれば、2階は依頼や会議などに使われる小部屋が幾つかと仮眠室が幾つかと各職員が働く大きな事務室に、ギルドマスターの部屋あるみたいだった。

しかし、称号【異世界転生者】の効果『言語理解』サマは凄いね。
異世界に来て日本語みたいに文字が普通に読めるだなんて、ホント素晴らしいよ。
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