僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

文字の大きさ
100 / 165

98.

しおりを挟む
「取り敢えず、中身を視てから考えませんか?」

僕はそう声を掛けると、アヤさんの瞼に外側から1枚ずつ魔道具マジックアイテムの画像を映していった。
単純な構造なので、どうやら2層しかないらしい。
で、まず1層目の外皮なんだけど、植物の根に擬態させる為か、木と土が合わさったような物で作られているみたいだった。

お次の2層目は…
ん?何かの金属に短く文字が刻んである??

見た事のない文字だけど、スキルのお陰か、読めるし意味も分かった。

その意味は…やはり『基点』…だ。

ここがもととなる地点で、基となる場所。
対となる『指針』が起動すれば、指針がどこにあろうとも基点が反応を返すようになっている…みたいだった。

「も~~手っ取り早く壊しておこうよ」
「待って!ダメ!これ…何か変です」
「ん?どういう事?」

アヤさんは握り潰そうとしていた手の力を抜き、掌を広げて見せてくれた。

よ、良かった。まだ壊れたりしてない。

「その綿棒みたいなのですけど、良く見ると薄っすら黒いもやが見えるんです。凄く嫌な感じがするから、壊したら何かある…気がするんです」
「へぇ…呪の類いかな?」
「そこまでは分からないんですけど、何て言うか…その、」
「上手く説明しようとしてくれなくても大丈夫だよ。思い付く単語を並べてくれるだけでも十分だから」
「はい、何となく…ですけど、付いてくる……
違うな。憑いてくる?感じがするんです。言ってて自分でも意味が分からないんだけど、気持ち悪い感じがするんです」
「ふ~ん、成る程。じゃあこれは取り敢えず…」

そう言いながら、アヤさんは無限収納アイテムボックスから栓付きの試験管みたいな物を取り出した。
『不可視、隠蔽、偽装、封印、封魔、封呪』
良く見れば試験管や栓には小さく文字が幾つか書き込まれていて、瞬きするたびにハッキリ見えたり見えにくくなったりを繰り返していた。

「ここに入れとくかな。で、引っ越しぎわに跡地に埋めて棄てて行こうか」

本当はサンスベリアの鉢ごと置いて行っても良かったのかも知れないけど、植物の世話を頼まれた身としては嬉しくて、僕は笑顔で頷いた。

「はい」

でも一応、念入りにじっくりと植木鉢は調べた。
だって後で何かあったら怖いし。

「しっかしイツキは不思議だよね。不穏な気配とかには恐ろしく敏感なのに、自分の魔力は感知出来ないって」

……確かに。
ホントに何でアヤさんに頼まれて調べる時は詳細に色んな物を感じ取る事が出来るんだろう?
謎過ぎる…

「イツキにとって私からの頼み事は一種の暗示みたいになってるのかも知れないね。やっぱり元々は感知出来るのに、今はまだ上手くいってないだけなんじゃないのかな?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...