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「さて、すっかり日が傾いちゃったねぇ。お腹も空いてきたし、さっさと家を片付けて出掛けようか」
家を片付けるって…
これ、家の中を片付けるって意味じゃないところがまた、何て言うか……ううぅ…
「まず一回家から出て、この家を基礎や地下室ごと無限収納に仕舞うから、イツキにはもう一度家の中だけじゃなく、地下や周りにも異物が混入してないか最終確認して欲しいんだけど、いいかな?」
「はい、大丈夫です」
「んじゃ、玄関から外に出よう。急いで片付けて出掛けないと、この世界では皆、夜の活動時間が短いからね」
「え!?」
「のんびりし過ぎててお店が閉まっちゃうとマズイから、少し巻きでいくよ!」
「ええええッ!?」
そう言ってアヤさんは僕を肩に担ぎ上げると、玄関に向かって走り始めた。
で、外に飛び出ると、アヤさんは家の四隅にあった結界用の魔道具を調節をして直径100m程の半球体だった結界を1辺の長さが20m程の正方形に変え、家が中心になるよう張り直した。
「ほらイツキ、サクッとお願い」
「あ、はい、じゃあ、視ます」
僕は大慌てでアヤさんの肩から飛び降りると、四角い結界内の異物を探して目を凝らした。
家の中、地下室、地中、家の周辺。
見落としがないように何度も何度も視ながら、細かい場所まで手を抜かずに確認していく。
そして最後に黄み掛かった白色になった腕輪の石を確認してから、僕は目を閉じて気配を探りながら息を殺した。
ーーうん、大丈夫だ。
本当に何も見付からないし、何も感じない。
暫くして納得した僕は大きく息を吐き、目を開いた。
「終わった?」
「はい、確認し終わりました。大丈夫です。結界内に不審物は見当たりませんでした」
「良かった。じゃあすぐに仕舞っちゃうね」
そう言うと、アヤさんは結界にペタリと手を当てた。
「ッ!?」
き、消え、消えちゃったよ家が!!
高さ10m、地下5mくらいの大きな家が周辺の地面ごと、ごっそり真四角の深い穴を残して、一瞬で消えちゃったよ!
僕は呆然として大穴を覗き込んでいると、アヤさんが四つん這い状態の僕をひょいっと背後から抱き上げた。
「はいはい、危ないからそんな風に覗き込まないの!」
「凄い!家がホントに消えちゃった…」
「イツキは今まで私が色んな物を出し入れしてたの、何回も見てるよね?」
呆れたように言われちゃったけど、でも出し入れって言ったって大きさが段違い過ぎるじゃないか!
普通は驚くよ。だって想定してる物や大きさにも限度ってものが……
って、アヤさんだもんなぁ。
普通って枠で考えちゃダメかも知れない。
僕はそう思い直して溜め息を吐いた。
アヤさんが何やら不満そうな顔で僕を見てたけど、僕は小さく笑ってアヤさんを宥めるように頭を撫でてあげた。
お姫様抱っこされた状態でクスクス笑いながらアヤさんの頭を撫で回していると、アヤさんは諦めたように嘆息し、そのまま【転移】でシーリアの街に飛んだのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
とうとう100話目まで書く事が出来ました。
ありがとうございます!!
ここまで続けられたのは本当に読んで下さっている皆様のお陰です。
お気に入り数も気が付けば100を超え、そこから更に増え続けている事に驚きで一杯の日々でございます。ありがたい事です。
これからも頑張って書き続けますので、どうぞ宜しくお願い致します。
家を片付けるって…
これ、家の中を片付けるって意味じゃないところがまた、何て言うか……ううぅ…
「まず一回家から出て、この家を基礎や地下室ごと無限収納に仕舞うから、イツキにはもう一度家の中だけじゃなく、地下や周りにも異物が混入してないか最終確認して欲しいんだけど、いいかな?」
「はい、大丈夫です」
「んじゃ、玄関から外に出よう。急いで片付けて出掛けないと、この世界では皆、夜の活動時間が短いからね」
「え!?」
「のんびりし過ぎててお店が閉まっちゃうとマズイから、少し巻きでいくよ!」
「ええええッ!?」
そう言ってアヤさんは僕を肩に担ぎ上げると、玄関に向かって走り始めた。
で、外に飛び出ると、アヤさんは家の四隅にあった結界用の魔道具を調節をして直径100m程の半球体だった結界を1辺の長さが20m程の正方形に変え、家が中心になるよう張り直した。
「ほらイツキ、サクッとお願い」
「あ、はい、じゃあ、視ます」
僕は大慌てでアヤさんの肩から飛び降りると、四角い結界内の異物を探して目を凝らした。
家の中、地下室、地中、家の周辺。
見落としがないように何度も何度も視ながら、細かい場所まで手を抜かずに確認していく。
そして最後に黄み掛かった白色になった腕輪の石を確認してから、僕は目を閉じて気配を探りながら息を殺した。
ーーうん、大丈夫だ。
本当に何も見付からないし、何も感じない。
暫くして納得した僕は大きく息を吐き、目を開いた。
「終わった?」
「はい、確認し終わりました。大丈夫です。結界内に不審物は見当たりませんでした」
「良かった。じゃあすぐに仕舞っちゃうね」
そう言うと、アヤさんは結界にペタリと手を当てた。
「ッ!?」
き、消え、消えちゃったよ家が!!
高さ10m、地下5mくらいの大きな家が周辺の地面ごと、ごっそり真四角の深い穴を残して、一瞬で消えちゃったよ!
僕は呆然として大穴を覗き込んでいると、アヤさんが四つん這い状態の僕をひょいっと背後から抱き上げた。
「はいはい、危ないからそんな風に覗き込まないの!」
「凄い!家がホントに消えちゃった…」
「イツキは今まで私が色んな物を出し入れしてたの、何回も見てるよね?」
呆れたように言われちゃったけど、でも出し入れって言ったって大きさが段違い過ぎるじゃないか!
普通は驚くよ。だって想定してる物や大きさにも限度ってものが……
って、アヤさんだもんなぁ。
普通って枠で考えちゃダメかも知れない。
僕はそう思い直して溜め息を吐いた。
アヤさんが何やら不満そうな顔で僕を見てたけど、僕は小さく笑ってアヤさんを宥めるように頭を撫でてあげた。
お姫様抱っこされた状態でクスクス笑いながらアヤさんの頭を撫で回していると、アヤさんは諦めたように嘆息し、そのまま【転移】でシーリアの街に飛んだのだった。
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とうとう100話目まで書く事が出来ました。
ありがとうございます!!
ここまで続けられたのは本当に読んで下さっている皆様のお陰です。
お気に入り数も気が付けば100を超え、そこから更に増え続けている事に驚きで一杯の日々でございます。ありがたい事です。
これからも頑張って書き続けますので、どうぞ宜しくお願い致します。
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