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フワリと一瞬身体が浮いた感じがして瞬きをすると、いつの間にか僕達は高さ10mの石壁近くにある薄暗い雑木林に立っていた。
まぁ…厳密に言うと僕はアヤさんに抱っこされた状態なんだけど、それは置いといて。
「ここは『シーリア』の西門近くだよ。門を通らずに城下町へ【転移】する事は原則として禁じられてるから、今日はここから街に入ってまずは食事をしよう。それから宿を取ってお泊まりして、明日はのんびり観光でもしようよ」
「宿!?」
「うん。せっかくの異世界だし、宿屋とかにも泊まってみたいんじゃないかと思ってね」
す、凄い!
晩ご飯を食べに来ただけだと思ってたのに、お泊まりして観光だなんて…何だか旅行みたいだ。
僕は林間学校も修学旅行も家の都合って奴で行けなかったから、楽しみで思い切り目を輝かせてしまった。
「そんなに楽しみ?」
「はい!とっても楽しみです!」
「んじゃ、シーリアで一番の、私が常宿にしている宿屋に泊まろうか。泊まるからには広いお風呂に入りたいし。
この世界ではね、お風呂が余り普及していないんだ。だからそれなりの宿じゃないとほとんど入る事が出来ないんだよ。
まぁ温泉や銭湯みたいな場所もあるけど、基本的には湯治を目的として作られてるに過ぎないし、この世界の人達には残念ながら、寝る前にお風呂って感覚がないからねぇ」
「……いいん、ですか?」
街一番の宿だなんて聞かされて萎縮した僕に、アヤさんは極上の笑みを浮かべて言った。
「もちろん。こう見えて私は一時期ブラック企業も真っ青な労働条件で、お金なんか使う暇もなく働かされ続けていたからね。だから金銭の事なんて全く気にしなくても大丈夫なんだよ」
「もしかしてアヤさんって今……物凄くお金持ちなんですか?」
思わず真顔で聞いてしまった僕に、アヤさんは笑いながらも頷いた。
「うん。二人で普通に使ってたら、死ぬまでに使い切れないくらい…ってのは多分オーバーだけど、お金に全然困ってないのは本当だから安心してくれていいよ。日本円で言う所の一億とか二億とかって端金じゃない程度には持ってるから」
あ…あやさんッ……
億って付いてて端金ってのは有り得ません。
有り得ませんから!
僕はアヤさんの金銭感覚に頭を抱えていると、西門に向かって歩き出したアヤさんが利き手を空ける為に僕を右腕に座らせた。
「僕、自分で歩きま「却下」す。え?」
「昼間ならともかく、夜の街なんて危ないからこのままだよ」
そんな、言ってる言葉に被せてまで…
「それに、私がイツキをずっと抱っこしてたいの。だからダメだなんて言わないでよ、ね?」
可愛らしく小首を傾げ、真剣な面持ちでおねだりされた僕は真っ赤になってコクコクと頷いた。
あ…あざといぃ!
イケメンがこんな事するとか、あざと過ぎるぅ!
でも、ちょっと嬉しい。
クソぅ…
僕は複雑な気持ちで一杯になりながら、脱力して西門までぐったりアヤさんにくっ付いた状態で運ばれて行ったのだった。
まぁ…厳密に言うと僕はアヤさんに抱っこされた状態なんだけど、それは置いといて。
「ここは『シーリア』の西門近くだよ。門を通らずに城下町へ【転移】する事は原則として禁じられてるから、今日はここから街に入ってまずは食事をしよう。それから宿を取ってお泊まりして、明日はのんびり観光でもしようよ」
「宿!?」
「うん。せっかくの異世界だし、宿屋とかにも泊まってみたいんじゃないかと思ってね」
す、凄い!
晩ご飯を食べに来ただけだと思ってたのに、お泊まりして観光だなんて…何だか旅行みたいだ。
僕は林間学校も修学旅行も家の都合って奴で行けなかったから、楽しみで思い切り目を輝かせてしまった。
「そんなに楽しみ?」
「はい!とっても楽しみです!」
「んじゃ、シーリアで一番の、私が常宿にしている宿屋に泊まろうか。泊まるからには広いお風呂に入りたいし。
この世界ではね、お風呂が余り普及していないんだ。だからそれなりの宿じゃないとほとんど入る事が出来ないんだよ。
まぁ温泉や銭湯みたいな場所もあるけど、基本的には湯治を目的として作られてるに過ぎないし、この世界の人達には残念ながら、寝る前にお風呂って感覚がないからねぇ」
「……いいん、ですか?」
街一番の宿だなんて聞かされて萎縮した僕に、アヤさんは極上の笑みを浮かべて言った。
「もちろん。こう見えて私は一時期ブラック企業も真っ青な労働条件で、お金なんか使う暇もなく働かされ続けていたからね。だから金銭の事なんて全く気にしなくても大丈夫なんだよ」
「もしかしてアヤさんって今……物凄くお金持ちなんですか?」
思わず真顔で聞いてしまった僕に、アヤさんは笑いながらも頷いた。
「うん。二人で普通に使ってたら、死ぬまでに使い切れないくらい…ってのは多分オーバーだけど、お金に全然困ってないのは本当だから安心してくれていいよ。日本円で言う所の一億とか二億とかって端金じゃない程度には持ってるから」
あ…あやさんッ……
億って付いてて端金ってのは有り得ません。
有り得ませんから!
僕はアヤさんの金銭感覚に頭を抱えていると、西門に向かって歩き出したアヤさんが利き手を空ける為に僕を右腕に座らせた。
「僕、自分で歩きま「却下」す。え?」
「昼間ならともかく、夜の街なんて危ないからこのままだよ」
そんな、言ってる言葉に被せてまで…
「それに、私がイツキをずっと抱っこしてたいの。だからダメだなんて言わないでよ、ね?」
可愛らしく小首を傾げ、真剣な面持ちでおねだりされた僕は真っ赤になってコクコクと頷いた。
あ…あざといぃ!
イケメンがこんな事するとか、あざと過ぎるぅ!
でも、ちょっと嬉しい。
クソぅ…
僕は複雑な気持ちで一杯になりながら、脱力して西門までぐったりアヤさんにくっ付いた状態で運ばれて行ったのだった。
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