僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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やがて、城下町に入る為の順番待ちで並んでいる人達を横目に僕を抱っこしたままアヤさんは西門へと辿り着いた。

列に並ばず門までやって来た僕達に、門番の一人らしき青年が急いで走り寄ってくると、アヤさんの顔を見てから大慌てで頭を下げた。

「これはこれは、『蒼氷のゆ「カードを確認してくれ」ぅあッ、はい!その、畏まりましたぁッ」

あわわわわわ…
今、いきなり門番さんが地雷を踏んだよ。
そして最後まで言う前にバッサリと遮られちゃったよ。
怖ッ!!

「申し訳ないが私は称号で呼ばれるのが嫌いでね。出来れば二度目はないと思って気を付けて欲しい」
「はいぃ!こッ、心得ましてごさいますです。以後絶対に気を付けますのでどうかお許しを!!」

アヤさんたら…
そんな無表情で威圧しちゃダメですよ、門番さんめっちゃ震えてますから。
生まれたての子鹿みたいな脚になってますから。

蒼白になった門番さんが、震える手で見せられた2枚のカードを確認すると、滝のような汗をかきつつ涙目でアヤさんと僕を見てから「アヤト様、イツキ様、ようこそ『シーリア』へ。どうぞお通り下さいぃ」と腰から直角に身体を折り曲げて深々と頭を下げた。

アヤさんが「あぁ」と短く返事をして門を通り抜けると、腰が抜けたかのように崩れ落ちて座り込んでいる門番さんの姿が見えた。

あの門番さん…
この後ちゃんとお仕事出来るのかな?大丈夫かな?

僕は心配になってジッと見ていたら、順番待ちで並んでた周りの人達からドン引きの眼差しで見送られていた事に気が付いた。

うわぁ…
これ、アヤさん気付いてるのかなぁ?

腰まで伸びた銀髪を優雅に揺らし、颯爽と歩くアヤさんの背中を見ながらそんな事を考えていると、ツンツンと背中を突かれて前に向き直った。

「どうかした?」
「あの…」
「ん?」
「門番さんが座り込んでたから、気になって…」
「そうなの?」
「はい。それと、並んでた人達に凄く見られてたから…」
「ああ、そういうのは良くある事だから、別に気にしなくても平気だよ。些細な事は気にしなくて大丈夫」

な、成る程。
これはアヤさん的には良くある事で、些細な事なのか…
これが………

僕は変な汗が出てくるのを感じながら、溜め息を吐いて脱力した。
アヤさんはそんな僕の頭を慰めるように優しく撫でつつ、前を歩く人々をサッカーやバスケでディフェンスを抜くみたいに、華麗なステップで追い越して行った。

しかしこの街道では少なくない数の人々が無作為に歩いているっていうのに、凄まじい程のスピードで全く誰にも触れずに進めてるっていうのが恐ろしい。
流石はアヤさん。
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