僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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159.

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あれ?
アヤさん、人から触られるの嫌なんじゃ??

良く考えたら、さっきロルフ様に会った時も、触られそうになって思いっ切り避けてたし。
街中でどんなに凄い人混みでも絶対に誰ともぶつからないし。
更にはシェーラさんのような美人さんの手を払うくらいだから、実は自分から触るのは良いけど触られるのは嫌、とかなんじゃないかと思ったんだけど……

「分かってない顔してまた……ろくでもない事を考えてるな?」

アヤさんが僕を拘束したまま呟くと、耳元で囁いた。

「あのね、私にとってイツキは特別なの。何回も言うけど、イツキだけ・・が特別なんだよ?……今だって私を押し退けて離れて行ったりしたら、本気で泣くからね?」

僕にはアヤさんを押し退ける事なんて(特に物理的には)不可能なんだけど、
……僕…は、触ってもいいの?
本当に?今まで通りに?
我慢してくれてたとかじゃなくて?

口に出しては聞けなかったけど、そんな思いを込めて見詰めると、アヤさんは蕩けそうな顔で笑って頷いた。

「うん、さっきクタ~ってした時みたいに、出来れば常にベッタリくっ付いてて欲しい。それから、また髪を手櫛で梳いてくれると嬉しいな」

そ、それは……
ずっとその状態ってのは……さすがに無理デス、よ?
僕の精神が恥ずかしさに耐えられないですから。
でも…髪は是非また梳かせて欲しいなぁ。
手触りサラッサラで本当に気持ちが良かったからね。

僕はついシェーラさんの存在を忘れておずおず手を伸ばすと、アヤさんの頭をそぉっと撫でた。
気持ち良さそうに目を細めて微笑むアヤさんに安心して、髪を梳くようにして撫で始めると、甘えるみたいに頬を擦り寄せられて僕は小さく笑みを浮かべた。
その瞬間、強い視線を感じて見ると、シェーラさんがまだ右手を伸ばした状態で固まっていて、でも視線だけはこちらに釘付けだったから、僕は驚いてピタリと手を止め硬直してしまった。
そう言えばシェーラさんが居たんだった…

物ッ凄く睨まれてる……気がする。

まぁ、実際は睨まれてなんかいなかったんだけど、シェーラさんの目力めぢからが凄過ぎて、何て言うか…視線が僕の身体のあちこちを貫通している気さえしていた。

じろぎ一つ出来ずに固まっていると、アヤさんが不満気に鼻を鳴らし、僕を庇うように抱き込んでからシェーラさんへと向き直った。

「用がないならもう行ってくれないか?邪魔だから」

ぐはぁ!
何て物凄い直球……

こんな言葉をぶつけられたのが僕だったら、絶対に今頃ブッ倒れてるよ。
吐血して再起不能状態だよ…

案の定、シェーラさんは一瞬泣きそうな顔をして、それからまなじりを釣り上げて自分を鼓舞するかのようにガッチリと腕組みをした。

「何よ!久しぶりに会ったから、この私が一緒にシーリアの街をあちこち回ってあげようかと思ったのに!」
「何故…そんな面倒臭そうな事をしなくちゃならないんだ?仕事でもないのに、私がシェーラとわざわざ街を回る理由なんて全くないだろう?」

シェーラさん渾身(?)のお誘いをバッサリと斬り捨て、気怠げに溜息を吐くと、アヤさんは『もう用は済んだ』とばかりに砂浜から移動する為に歩き始めた。

あ…アヤさん、
僕でも分かったのに、そんな態度…

シェーラさんって、もしかして………
いや、もしかしなくても、
アヤさんの事が…

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