僕、勇者サマの養い子になりました

160.

あんまりなアヤさんの態度に表情を凍らせてしまったシェーラさんを見て、僕はアヤさんの腕の中でオロオロしてしまうと、どうやって伝えたらいいのか分からずに俯いてしまった。

こんな事、気が付いたからって僕からアヤさんに伝えちゃったらダメだよね？
やっぱり本人が直接っていうのが重要なんだろうし。
でも……

考えれば考える程、どうしたらいいのか分からなくなって、そして何故か少しだけ、胸がモヤッした僕は結局何も出来ないままでいると、アヤさんが僕の背中をポンポンしてから撫で始めた。

「どうしたの？さすがに気が付いちゃった？でもイツキは気にしなくてもいいんだからね？私は色々と分かってて・・・・・この態度なんだから」
「ッ！？」

僕は驚いて顔を上げ、アヤさんの顔を凝視してしまった。
すると、少し困った顔をしてアヤさんが苦笑いを浮かべた。

「私はね、イツキが思っててくれてる以上に実際は性悪で腹黒なんだよ。何せ中身は40過ぎたオバサンなんだから、今までの経験を踏まえて色々と狡い小細工もするし、色恋に対しての熱量も普通の10代の男とは全然違うからね。アレ・・に対しての塩対応も後で発生するかも知れない面倒を回避する為にやってる事だし」

わざと……だったの？
シェーラさんの気持ちに気付いてて？
でも…
どうして？

僕は泣きそうな顔で遠ざかるアヤさんを見詰めているシェーラさんをチラ見してから、何となく責めるみたいな視線をアヤさんに投げてしまった。

だってシェーラさんを見てるだけで胸が痛くなるくらい、本当にアヤさんが好きなんだっていう切ない目をしていたから。

「シェーラが真剣だからこそ、優しくしたりしないんだよ。だって私がシェーラをそういう意味で・・・・・・・好きになる事は絶対ないからね」

絶対に？
人の気持ちは変わるものなのに、絶対なの？

「あのね、そもそもシェーラは私の娘より年下の女の子なんだよ？美人だろうが可愛かろうが、恋愛感情なんて抱く訳がないでしょうに。イツキだって今いきなり男から……例えばレオやウールドから『好きだ！俺の彼女になってくれ』って肉欲込みの告白をされたらどう思う？イツキからしたら父親に近いだろう年のオッサン達だけど、私からするとそんな感じに近い感覚なんだよ」

お……おぉう…
それは確かに恋愛感情以前の問題かも知れない。
どんなに二人がイケメンでも、オジサン達を恋人にって言われたら想像も出来ないし。
ていうか、ぶっちゃけ年が近いくても離れてても、同性でも異性でも、恋人なんて僕には全く想像出来ないんだけどね……