騎士物語〜塵芥のための舞台〜

ミイ

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塵芥のための舞台(2)

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見事なものだ…。

この宴への感想と同じ感想を、赤毛の騎士、ジークベルト・キルヒアイスがウルスの一団に漏らす。

王国民からは蛮族の国と蔑まれる、ジュチ・ウルスではあったが、使節団の面々からは、確かに深い知性が感じられたし、宴に入ってからも、王国の礼儀作法とは反するものの野卑な行動は見られなかった。

これは、現王バトゥに治世が移ったのち、不遇を囲う有能な人物や、不幸にして魔神大戦により国を失った優秀な官僚などを、国籍や人種に関わらず登用したことの影響も大きいと考えられていて、その事一点をとっても交渉の相手に足りると考えるに十分な根拠であった。

しかし、だからと言ってそれが赤毛の騎士の感嘆の対象とはならない。武人たる騎士の感嘆の対象となるはウルスの巨大な武、ウルスの武官、彼らの一人一人に寄り添う巨大な狼。

草原の国ウルスは元々遊牧民の緩やかな連合体であったが、彼らは風の精霊シルフの加護を受ける。特に加護を強く受けるものには、物心がつく前に、草原の彼方より風の化身たる狼が現れ、それ以降兄弟同然に成長すると言われる。

牛かと見間違えんばかりの狼たちは素晴らしく強靭で、王国の重装騎兵といえども、単騎では相手にならない。今日の狼たちは、特に入念に手入れされ、毛並みが月光に輝くほど美しい。ウルスの武官にとって、狼は王国の騎士にとっての剣と同じ。ウルスの武官達の剣である、この狼達の出席を可能にするため、王城の大広間ではなく、この野外歌劇場にて、条約の最後の交渉も、交渉後の宴も開かれることとなったのだ。

美しい…。

ウルスの狼達は、騎士達に敵意がないことを察してはいるのだろうが、武官達の緊張を感じてか、常に周囲への警戒は怠っていない様子であった。

そんな中、周囲の様子など窺う必要などないかと言うようにゆったりと丸くなり、主に寄り添っている漆黒の狼。周囲の狼達と比べて2回りは小さい。しかし、その存在感は圧倒的で、ジークベルトは誰に教えられることもなく、この狼の主人こそ、王国民より蛮族王と恐れられる、バトゥその人であると直感していた。
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