騎士物語〜塵芥のための舞台〜

ミイ

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塵芥のための舞台(3)

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見事なものだ…。

ジークベントが王の狼に見惚れているとときを同じく、ジュチ・ウルスの文官にして王の側近、宰相補佐を預かるウランフは王国の用意した宴の見事さに感心していた。

そもそもがウルスの狼たちには王城の大広間は狭すぎるだろうからと、王国側から提案を受けたこの場所ではあったが、無論親切心だけではなく、国力の差を見せつけるそんな意図もあったのだろう。

我が王にして、親友バトゥはその黒狼に表れるように風の精霊より強く愛されていて、王国の英雄・聖銀の騎士にも、紅の剣士にも引けを取らないとウランフは思う。

しかし、我がウルスにこのような交渉、宴の準備ができるかと問われれば、否と答えざるを得ない。このような場の準備は当然、国王や英雄達が行うものではない。中級、下級の官吏たちの質、能力がウルスと王国では段違いなのだ。

やはり、我がウルスの向かう道に間違いはなかった…。

ウランフは、ウルスの有力な氏族の出身ではあったが、風の加護をほとんど受けていない。母には異国民の血が流れていて、ウランフにもその血が濃く出たと考えられていた。戦士としての道を断たれたウランフに、父は方々のつてを辿り良い家庭教師を付け、誰に恥じることのない教育を与えてくれた。

「却って良かったかもしれない。」

ウルスには戦士として、才がバトゥに勝るものはいない。しかし文官としての才がバトゥにある訳ではなく、常にその能力は欲せられていた。それにバトゥは子供の頃から好奇心が強く、ウルスの外の世界の知識を知るウランフは、年少の頃からの良き友人と言う立場も手にすることができた。

「俺はバトゥのために死なねばならない。」

ウランフは心からそう信じていた。大戦中、バトゥの父親である先王は心を病んだ。一族であっても猜疑心から処刑し、周辺国に意味のない侵攻を仕掛けるなど、奇行を重ねた。王の病により、王だけではなく、ウルスも滅亡の危機に瀕していた。ウルスが生き残るためには王を除かねばならぬ…。良識ある、いく人かの重鎮達もそう考えてはいたが、心病んでも王は王。受けている風の加護も強大で、生中なことでは、弑することは難しい。人数に頼んでも、事後の対応に問題が残る。

そこで、バトゥが直接、密かに王を弑する、そんな計画が立てられた。この計画にウランフは関わった。と言うよりも首謀者の一人であり、直接バトゥの説得に当たった。

「あんな父でも、父は父なのだ…。」

バトゥは滅多に感情を表に出さない。それでも先王を弑すると決めた後、最後は正気と狂気の端境を行き来する先王について漏らしたバトゥの呟きを聞いたとき、ウランフはバトゥのために死のうと決めた。

しかし、それもしばらく後になるだろう。先王を弑してのち、バトゥを先頭にジュチ・ウルスは大戦を生き延びた。そして今日、大陸一の権勢を誇る王国を相手に国として基本条約の骨子を定めることができたのだ。調印はまだであったが、今後ウルスは新しい時代を迎えるだろう。ウランフは宴の様子を眺めながら、想いに耽るのであった。
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