騎士物語〜塵芥のための舞台〜

ミイ

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塵芥のための舞台(4)

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「さて、気を引き締めなければ。」王の黒狼に思わず、見惚れていたジークベルトが意識を現世に戻す。

ジークベルトの上官である、アウグストは誠に優れた武人であり、人格者でもあったが優れた、事務官であるとは言い難い。この宴の警備に関しても、宴の実質的な主催者である下級官吏達や、協力して警備を行う近衛騎士団と、細々調整することなどあったが、そういったことはジークベルトが一手に引き受けていた。

「キルヒアイス殿、神殿の巫女様方が舞台の袖にお揃いになられました。」

近衛騎士団の年嵩の騎士がジークベルトに声をかける。

「そのようですね、問題などありませんでしょうか?」

ジークベルトが返す。

「何も、何も。キルヒアイス殿のおかげで、王城のわからずやどもも、大人しいものでござるよ。」

近衛騎士団の騎士隊長の大仰な返答に、ジークベルトが曖昧に笑う。

アウグストが英雄となってから、その威光に預かろうと言うものが増えた。アウグストの部下である自分にも追従や世辞を使うものが多くなり、困ったものだとジークベルトは考えていた。

「始まるようですな」

面をつけた異国の少女が二人、静々と円形の舞台に上がる。円形の舞台の周りには煌々と焚き木が焚かれ、幽玄な雰囲気が漂っている。

「しかし、キルヒアイス殿のお考えは素晴らしい。あえて舞台に仕掛けをおかず、焚き木だけを配するとは…。官吏どもも文句のつけようがないだけではなく、私のような無骨者でも感じ入るような美しさがある…。」

この巫女達による舞は、ワティカニス聖教国の神官団より、宴の余興にと申し出があったもので、王国よりウルスを挟んでさらに東方にある小さな国の舞らしい。王国とウルスの条約が成ればこういった国々との付き合いも出来るのだからという意味もあるのだろう。しかし、この余興に際して、王城の官吏達より無粋な質問が入る。

曰く、どの方を正面といたしましょうか?

この舞には本来少々の舞台飾りがあり、また伴奏者達の座る方向でどちらが正面かは一目瞭然であるらしい。それではいったいどの方を正面に舞を行いましょうかと、打ち合わせにて官吏達より成された問い。

「そんな事はお前達で考えろ」、「騎士団は警護が任務だ」、と怒鳴り返しかねない質問に対して、「舞台飾りはおかなくても良いと考えます、また伴奏者は客席下段の警護の詰所の前に配しては如何か?あそこであれば暗がりで、来賓からは見えないでしょう?舞を踊られる巫女様達にはそれで問題ないか騎士団から確認をいたしましょう。」とジークベルトは穏やかに返したのだった。

「……。」

ジークベルトは失礼にならないように微笑むものの、年嵩の騎士に返答をしない。

その目は舞台の方を睥睨し、万に一つの悪意も見逃さないよう勤めている。その様子を見た、近衛騎士団の初老の騎士は、先程のジークベルトの考えとは異なり、この赤毛の騎士自身への関心を深めるのであった。
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