BLを教えてくれ腐男子先生!

響藍

文字の大きさ
3 / 21

第三話『意外なる一面』

しおりを挟む
「んで、本当は何持ってたんだ?」
「ぐふぉっ!?ゴホゴホ......な、なんだよ急に。」
 食堂についた3人は秀和ひでかずの正面に隆則たかのり、隆則の隣に青也せいやという並びで席に着いた。隆則の唐突な質問に秀和はひどく動揺しながら返答した。
「いや、やっぱり気になるなぁって思って。エロ本だって言い張るぐらいだしそんなに言いたくなら言わなくてもいいけどさ、俺たち親友だろぉ?教えてくれよー?な?」
「そ、それは.......」
 チラリと青也に視線を送る。何故だか青也と目が合った。青也はニコっと笑うと隆則に優しく声をかけた。
「田神先輩、親友だからこそ言えないってこともあるかもしれないですよ?」
 隆則の表情が一瞬陰ったように見えたが、すぐさまいつもの笑顔になったので勘違いだったかなと秀和は思った。隆則は少し身を乗り出していたから青也からは角度的に隆則の表情は見れない、だから後で青也に確認することもできない。
「親友だからこそ言えない、か......ならしょうがないな!言ってくれるまで待つか!」
いや、親友になら言える秘密でもさすがに食堂ここでは話さないだろ。
「まあ、秘密ってその人の中ではとても大きいけど、案外他の人にはどうでもいい時って結構ありますよね。」
「へぇ、例えばどんなのがあるんだ?」
興味津々な隆則をよそに青也は少し困った顔をした。
「例えば、ですか......うーん、例えば......」
少し可哀想だと思った秀和は困ってるだろと隆則を叱った。しかしその直後、青也は何かを思い付いたようでいつもより大きな声で話し始めた。
「わかりましたあれですよ!普段は隠してるけど、本当は可愛いものが大好きで、それがその人の一番の秘密!みたいな!」
ガシャン! 少し遠くで音がした。

 音の方向を向くと、そこには学校で一番モテてるといっても過言ではない、角谷すみや先輩がいた。飲み物のコップを倒してしまったようだ。
「さすがウワサの角谷先輩って感じだな。こんな時でもクールなのかぁ。」
顔が整っていて、背が高くて、頭がいい上にいつも冷静で、表情は硬めだが優しさもあるとのことで、女子の目線を釘付けにしている。だけど彼女を作るつもりは無いらしく、告白する相手を丁寧に断ることでも有名だ。俺でさえ知ってるくらいの有名人だ。
「あれが角谷先輩ですか?」
青也が不思議そうに尋ねた。隆則が答える。
「入学してまだ全然経ってない一年にも、もうウワサ回ってんだなー。そう!顔よし性格よし頭よし、だけど彼女を作るつもりは無いらしい、角谷先輩だ!非公式ファンクラブまであるって聞いたけどそれは本当かよくわかんねぇ。まあ、あっても驚かねーな!」
青也はまた少し困った顔をした。
「え、あー......いや、そういうわけではないんですけど、あの、本当に性格もいいんですか?」
なんでそんな事聞くんだ?と思いつつ秀和は黙っていた。
「ああ。そのはずだせ?性格悪かったら普通ファンクラブがある、なんていうウワサも流れないと思うし。まあ、性格くらい悪くあってもらわないと他の人たち太刀打ちできないけどな!ハハハハハ」

 その後もBL漫画の話題になる事はなく、夕食を食べ終えた3人は食堂を後にした。秀和はそのあと、どちらかの部屋で青也にBLについて教えてもらおうと思っていたが、青也は友人の様子を見に行くようで、階段を更に登っていってしまった。
「なに寂しそうな顔してんだよ部屋隣なんだからいずれ帰ってくるだろ~?」
「そういうんじゃなくて、なんか、期待を裏切られたというか......」
 相手が期待通りに動いてくれない時ってこんな、こう、なんて表現していいのかわかんないけど、モヤ?っとするもんだっけ?
 隆則は少しびっくりした様子を見せたが、その後穏やかな笑みを浮かべた。
「俺は嬉しいよ、ヒデちゃんが誰かに期待できるようになってたなんて。いつもは誰に対しても興味ないです~さようなら~みたいな雰囲気出してんのにな。.......あ、これが子の成長を実感した親の気持ちか!?」
「え、俺からそんな負のオーラみたいのでてんの?」
「え?無意識なの?あ、でも負のオーラというよりは結界みたいな感じ。ヒデちゃんと仲良くなれるやつは相当根気があるやつかヒデちゃんに気に入られたやつだけだろ~。」
「そうなのか?」
「おい自分のことだろ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さっきさ、角谷先輩について色々聞いたんだけど、お前が言ってたような人では無さそうだったぞ?」
青也がそう言うと、春人はるとはムッとした。
「俺の言ってる事が信じられないってこと?」
「その言い方ちょっと漫画っぽいな、見た目は可愛いのに俺様系で下僕めっちゃいるキャラ。ーーおいおい怒んなよ冗談だって!......ただ、俺が言いたいのは角谷先輩がお前に対して態度が悪かったのには何か理由があったんじゃないのかなって事だよ。」
 俺の親友、赤木春人は着ぐるみ作家だ。着ぐるみって言ってもパジャマにするような薄手で可愛らしい見た目のやつを自分でデザインし作成している。動画投稿などもしていて、数千人のファンもいる。昨日、隣の部屋に住んでる角谷先輩に挨拶しに尋ねたら、春人の顔を見るなりドアを閉められてしまったらしい。性格もいいっていう噂が嘘なのか、ドアを閉めたのには理由があったのかはわからないけど、なんだかんだで落ち込んでいる春人をどうにか慰められないかと思っている。そういえばーー
「可愛いものが好きだけど隠してる人いるよねって話したとき、角谷先輩が水を溢して、それで角谷先輩の話題になったんだけど、もしかしたら可愛いもの好きで、春人が可愛いから焦って閉めちゃったとかあるんじゃない?」
まあ、半分冗談だけど。
「マジで?だとしたら本当はめっちゃシャイって事?それは結構なギャップだな。でも、好きなものを好きと言えないのはちょっと愛が足りないんじゃないのか?.......よし!面白そうだから真相を確かめるべく少しちょっかい出してみるか!」
「まあ、いいんじゃない?俺もちょっと興味あるわ。......元気出たっぽくて良かった。」
青也の気遣いに気付いた春人は優しく微笑む。
「おう、ありがとな。ところで青也の方はどう?うまくいってんの?」
青也は少しかしこまりつつ、自信ありげに話し始めた。
「松田青也、ここに報告します。既に2人に接触し、片方はBLについて学びたいと言ってます。」
春人は眉をひそめた。
「接触した、だって?当初の予定では部屋の前にBL漫画を置いとく、とかそういう計画だったよな?何接触なんかしてるんだがあったらどうする!」
「大丈夫!は多分無いし、みたいにはさせないよ。約束する。あ、俺先輩に買い物に付き合って!ってしに行かなきゃだから続きは明日な!」
「あ!ちょっと!まだ話はーー」
 そう言って青也は春人の部屋を後にした。


「方向はどうであれ、もし場合に、お前が自分で自分の首を絞める形になってしまわないかが心配なんだよ。」
春人はそっと呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

処理中です...