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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
185話
しおりを挟む「…出ない…なんで?!龍司…!どうしよう…きっと龍司になにかあったんだ!龍司はきっと俺に知らせてくれているんだ…!!ルカ…急いでルカに言わなきゃ…!」
仕事中だと分かっていても、コールさえならなかった事は今までになかった。
繋がらないと言う事は、携帯の電源を切っていると言う事。
仕事ならば、取引先の会社やルカ達からの連絡もあるはずだから出られない事はあったとしても、電話を切っていると言う事はないはずだ。
(きっと龍司の身になにかあったに違いない…っ!さっき聞こえた声は、きっと俺に助けを求めている龍司の声だったに決まってる!)
龍司に貰ったティーカップが割れた事で確信が持てた。
画面をスライドさせ、履歴からルカの名前を探すと携帯を耳に当てる。2回目のコールでルカはすぐに出てくれた。
『はい、ルカでございます。湊様、いかがされましたか?』
「ルカ!!!りゅ、…龍司が…!龍司が危ないんだ!龍司はどこに仕事に行っているの!?龍司に電話しても、電源を切っているみたいで繋がらないの!ふっ…ッ…ひっく…ルカっ…どうしよう…龍司が…ッ!龍司が!!!」
受話器越しに聞こえた高めのルカの声にホッとしながらも、頭の中は龍司の事でいっぱいで上手く言葉にして伝えることが出来なかった。
ちゃんと説明しなければルカには伝わらない。
そんなことは分かっている。だけど不安や焦り、龍司を失うかもしれないという恐怖で涙が溢れてきて声が震えてしまった。
『湊様!落ち着いてください!どうか落ち着いて…落ち着いてください。…龍司様が危ないとはどういう意味ですか?』
「はぁ…はぁ…はぁ…ご、めん…」
過呼吸になりそうになって、ルカの言葉に何度も何度も深呼吸を繰り返した。
溢れてくる涙を手の甲で拭うと、胸元の服をきゅっと掴む。
心の中で、大丈夫と何度も自分に言い聞かせるように繰り返すと、少しだけ落ち着いてきた。
「龍司の身が…多分危ない。なにがどう危ないかは分からないけれど…虫の知らせってやつなのかな?さっき龍司の声が聞こえた気がして…初めは気のせいかと思ったんだけど、食器棚に合ったグラスと龍司から貰ったティーカップがいきなりヒビが入って割れたんだ。そしたら急に胸騒ぎがして…龍司が危ないって直感的に思った…。仕事中だって事は分かっているけど、龍司に電話をしても電源が切られているみたいで繋がらない…いくら仕事中だとしても、取引先の人とかルカ達からの連絡だってあるはずだから、電源を切る事なんてないはずだよね!?」
『…ま…さか…ッ…』
ルカの震えた声が湊の耳にはっきりと届いた。
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