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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
186話
しおりを挟む(“まさか”…?)
「ルカ、なにか知っているの!?龍司はどこに仕事に行っているの!?アキさんは龍司の秘書だって言っていたよね?アキさんは龍司と一緒にいる!?」
『…それは…っ』
「お願い、教えて!龍司になにかあったら、俺は生きていけない!耐えられない…っ…お願いルカ!龍司が今どこにいるのか教えて!!」
ふいに部屋の入口の方から音がした。
すると、扉のロックが解除される機械音が聞こえる。驚いて扉の方を振り向けば、そこにはルカの姿があった。
まさか1枚扉を挟んだ向こう側にルカがいるとは思わなかったが、今はそんなことはどうでもよかった。
「ルカ!!お願い!龍司が今どこにいるのか教えて!!」
ルカの元に走って行くと、さほど背丈が変わらないルカの両肩を掴んで揺さぶる。
どこか辛そうに唇を噛んだルカが、湊から視線を逸らした。
「…申し訳ありません、湊様。すべてをお話しする事は出来ません…。社長から…龍司様から口止めをされているんです」
「そんな…!」
「詳細はお伝え出来ませんが、お話しできる事もあります。…龍司様は今、月嶋七瀬と一緒です」
「っ…!!」
(七瀬さんと…一緒…?)
「なんで…?龍司は仕事中なんじゃないの…?」
「はい。七瀬さんとは一緒ですが、仕事をされているという事に嘘偽りはございません。ですが、申し訳ありません…。先ほども申し上げましたが、湊様といえどこれ以上仕事の詳細をお話しすることは出来ません…」
「…っ」
「申し訳ありません。湊様…」
ルカを掴んでいた湊の手が、ゆっくりと離れる。
「…仕事の内容を言えないのは分かっているよ…。話せないなら仕方がないし、これ以上は聞かない…。でも龍司の居場所が分かるなら…龍司を…ッ」
また涙が込み上げてくる。
体中に力が入らなくなって、床に座り込んだ湊は涙を流しながらルカに向かって言った。
「…お願い…龍司を助けて…」
今、この間にも龍司の身が危ないかもしれない。
助けを求めているかもしれない。
「湊様。少しお待ちいただいてもよろしいですか?」
「え…」
ルカは座り込んだ湊の背中を優しく擦ると、耳に装着していたBluetoothイヤホンを操作する。
Bluetoothからは、微かにコール音が聞こえてきた。どうやらルカは誰かに電話をしているようだった。
数回のコールのあと、3人の違う声が同時に聞こえてくる。
『Z2だ』
『はい、こちらA01です』
『はぁい、S01よ』
「こちらR2。各自に悪い知らせだ。俺達の嫌な予感は的中してしまった」
感情を堪えた様子でルカが言った。
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