荒廃×タバコシリーズ

秋月。

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タバコと遊園地

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タバコと遊園地
配役表 1:1:0
・女♀・・・
・男♀・・・

⚠台本として利用する際の規約⚠
https://writening.net/page?nJG7kt
作者ツイッター@autummoonshiroでも確認出来ます。

──────以下本編──────


ドリームランドという遊園地の前。

二人の男女が立っている。


男:でっけぇ城だなぁ・・・


女:お城なんて初めて見た!


男:嘘を吐け


女:え?


男:ドリームランドの雑誌で見てたろ?


女:・・・・・・

女:本物は初めて見た!


男:当たり前のように言い直すんじゃねぇ


女:じゃあなんて言えばよかったの?


男:さぁ?

男:俺に聞くな、どうでもいい



男はタバコを咥える。

女はそのタバコを取り上げる。



女:ぶっぶー!

女:園内は禁煙でーす!


男:はぁ?

男:んなの知るかよ、返せ


女:ダメでーす、返しませーん!


男:チッ・・・

男:そいつはくれてやるよ


女:あ、ダメダメ!

女:当たり前のように新しいの取り出すなぁ!

女:そういうことするならライターは預かりますー



女はライターを取り上げる。



男:おい、いい加減に───


女:ね、早く中に入ろ?


男:・・・おう


女:ステーキ食べたら返あ上げる


男:ステーキなぁ・・・

男:例の雑誌は?


女:あるよ!


男:出せ


女:はいはい、ちょっと待ってね

女:どーぞ!



女は背中からリュックを降ろすと、雑誌を取り出す。



男:うい

男:えーと・・・丁度あの城の前だな


女:え、直行する気!?


男:タバコ吸いたいから


女:観覧車乗りたい!

女:ね、観覧車!

女:観覧車観覧車観覧車!

女:かーんーらーんーしゃー!


男:だー!

男:うるせぇな!

男:観覧車なんて何処にあるんだよ?


女:んー・・・見えないね

女:あ、ほらほら、雑誌雑誌!


男:えーと・・・?

男:ああ、あの城より奥に本当はあるんだな


女:そしたらステーキは通り道?


男:って事になるな


女:それじゃあ仕方ない、先にステーキに付き合ってあげようじゃないか


男:どっちもお前が行きたいって行ったんだろ?

男:どの立場で言ってんだよ


女:へへーん、この立場!


男:あー、はいはい、そーかよ

男:んじゃ、さっさと行くぞ


女:あ、ちょっと置いてかないでよ!



男は言いながら直ぐに歩き出す。

女はリュックを背負い直して男の後を追う。



男:結構いっぱい土産屋があるんだな


女:そりゃあ遊園地ですから!


男:来た事ないんだろ?


女:ない!

女:初めて来た!


男:んじゃ、知った様にいうな


女:知ってるもん!

女:沢山話で聞いてきた!


男:そうかよ

男:・・・色々覗きたいトコだが、後回しだな

男:荷物が重くなる


女:そうだねー

女:お店がいっぱいあると探しがいがあるよね


男:ああ、まだまだお宝が眠ってるかもしれねぇ


女:お菓子とか?


男:そんなとこ

男:さて、と

男:いざ目の前に来るとこの城でけぇな


女:入ってみたいな~!


男:ダメだ

男:ステーキ屋は・・・


女:ケチ!


男:ケチで結構

男:お、あれだな?

男:城の前とは思えん看板だな


女:そうなの?


男:・・・ほんと世間知らずだな


女:えっ、何で?


男:何でもだ

男:入るぞ



男、ステーキ屋の中を覗き込む。



男:誰もいないな?


女:うん、人の気配がしないね


男:んじゃ、失礼しますかね


女:なんか、この建物玉ねぎ臭~い


男:ん?

男:・・・確かに臭うな

男:こりゃガス管死んでやがるな


女:どういうこと?


男:ぁ?

男:・・・何が分かんねぇんだ?


女:全部


男:は?


女:全部!!


男:チッ・・・

男:いいか?

男:肉を焼くのには火を使うんだ

男:その火をこの店ではガスを使ってつけてた

男:だが、ガスってのは漏れると爆発したりする

男:火事になったりするって事だ

男:そこでガスに臭いをつけて、漏れたら分かるようにする


女:その臭いがこれ?


男:そういう事だ

男:ここじゃ、肉は焼けないな

男:危険すぎる


女:え、じゃあ、ステーキは!?


男:おあずけだな

男:おい、発火するものがあると危ないからライター返せ


女:危ない?


男:爆発して死ぬぞ


女:え!?

女:は、はい!


男:よろしい

男:んじゃ、出るぞ


女:うん・・・


男:後は城の奥の観覧車だったな


女:うん・・・


男:行くぞ


女:うん・・・


男:うだうだすんな!

男:別の所でもステーキは食える


女:え、いや・・・

女:その・・・


男:なんだよ


女:それ持ってたら死なない?


男:ははっ!

男:死ぬかよ



男はタバコを取り出すとライターを着火する

一瞬強い火柱が立つ



男:あっち!


女:きゃあ!!!


男:ああ!?

男:大袈裟な反応すんなよ

男:ちょこっとガスが残ってただけだ


女:・・・お、驚かせないでよ


男:別に驚かそうとしてねぇよ

男:(タバコ吸って吐く音)


女:禁止って言ったのに・・・


男:ルールは破る為にあるんだ

男:・・・どうせもうあってないようなもんだろ


女:・・・確かに

女:ね、早く観覧車行こ!


男:忙しいやつだな



二人観覧車の前まで移動する。



男:ここが観覧車、か・・・


女:何もないね


男:(無言でタバコを吸う)


女:雑誌にはあんなに大きな観覧車が写ってたのに

女:何もない・・・



女はうっすらと涙を浮かべる。



男:(無言でタバコ吸う)


女:家でお母さんがよく遊園地の話をしてくれたの

女:ウチの遊園地はすごいのよって


男:おい


女:観覧車が特に凄いんだって教えてくれたの

女:夢だったの、観覧車に乗るのが

女:話に聞いた景色を───


男:おい!!


女:・・・何?


男:お前の身の上なんか知ったことか

男:勝手に喋り出すんじゃねぇ

男:・・・それより、あれ見ろ


女:お城の影・・・?

女:大きな鉄の箱?


男:ありゃ、多分ゴンドラだ

男:来い



男はタバコを投げ捨てる。

二人、ゴンドラに近付く。



男:わりと綺麗な状態だな


女:これは?


男:ゴンドラだっつの

男:雑誌で観覧車は見たろ?

男:あれで回転してる人が乗る乗り物がこれだ


女:じゃあ、これが観覧車?


男:まぁ、そう捉えることも出来るな


女:凄い・・・!

女:なにもなくなかった!!

女:観覧車だ、観覧車だよ!!!

女:乗ろ?ね、乗ろ?


男:落ちたゴンドラか・・・

男:扉が歪んでなけりゃ入れるが・・・お、開くな



ゴンドラの中に入る。



男:たまたまこいつだけ綺麗に残ってるとはな

男:運が良い


女:で?


男:でって?


女:どうしたらこれは動くの?


男:は?


女:お城を上から見れるって聞いたの!

女:観覧車の頂上から見下ろすお城が絶景なんだって!


男:・・・動かねぇよ


女:え?


男:この観覧車もう壊れてるんだ

男:動くことはない

男:もう、一生な


女:そんな、嘘でしょ?


男:ホントだ


女:まーた揶揄って・・・


男:揶揄ってない


女:・・・・・・


男:観覧車ってのはゴンドラだけで動くわけじゃねぇんだ

男:ワリぃな、こればっかりはどうにもならん


女:───どんな景色だったんだろ


男:ん?


女:上から見た景色は、どんな景色だったんだろ


男:綺麗だったんじゃねぇか?


女:ホントに?


男:知らねぇよ

男:けどな、これから知ることも無い

男:なら、最高に綺麗な景色だったって思っとけ

男:夢は、夢のままでいいんだ



女、無言で男に抱きつく。



男:ぬぁっ!?


女:ありがと、ここまで連れてきてくれて


男:・・・おう


女:ありがとう、観覧車に乗せてくれ


男:・・・おう


女:・・・ありがとう、母と同じ景色を見せてくれて


男:イイ夢、見れたかよ


女:・・・うんっ!



そのまま女は男にキスをした。



女:(モノローグ)

女:初めてのキスは、タバコ匂いがして最悪だった

女:このキスもこの先に誰に知られることもない

女:だからこのキスは、この世界で一番の、最高の、何よりも素敵なキスなんだ




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