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愛のスパルタ特訓
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「その、お前の知っている碧と、俺が同じかもしれないって……どういう意味だ?」
ようやく、碧が本題を切り出した。この状況で彼に話すのは、碧に半ば「好きです」と告白をしているようなもので、波音には大変な勇気が要る。だが、変な考えだと馬鹿にされようとも、波音は彼に話しておきたいと思った。
「言っていませんでしたが、私の好きな『碧兄ちゃん』は、十年前に亡くなっているんです。交通事故で」
まさかの吐露に、碧は信じられないとでも言いたげに、目を丸くして波音の顔を見た。亡くなった相手に対しての恋心をずっと引きずっていることも、茶化すことなく受け入れてくれている。波音の話を真剣に聞いてくれている証拠だった。
「そう、だったのか……。その件については、からかうようなことをして、悪かった。でも、どうして、それで俺に結びつく?」
「名前だけじゃなくて、二人は年齢も同じなんです。それに、碧兄ちゃんが亡くなった頃、碧さんはこの世界に来ているみたいで、時期が重なります。でも、こう考えた一番のきっかけは、この前碧さんが寝言で『兄貴』って言っていたことです」
「それが、大和ってやつかもしれない、と?」
「はい。深水大和。ものすごく仲の良い兄弟だったんです。何かちょっとでも、ピンと来ませんか?」
碧は額に手を当て、難しい顔をした。暫し思い出そうと試みていたようだったが、結局は首を横に振った。それを見て、波音もしゅんと萎れる。
「その『碧』と俺は、似ているところでもあるのか?」
魂が同じ人間ではないかと疑っているのだから、似たところがあって当然のように思える。碧は、焦れたようにそう聞いてきた。
「……全然、似てないです。性格なら、むしろ正反対。顔も違いますし」
「はあ? それで、俺とそいつが繋がっていると思うのか?」
「強いて言えば、困っている人を放っておけない、お人好しで優しいところです」
「俺は別に、そんなんじゃ……」
「優しいですよ、碧さんは。見ず知らずの私を、こうして拾って面倒見てくださっているんですから。そこは、碧兄ちゃんとそっくり」
波音は、まだ幼かったあの日、『碧兄ちゃん』に声を掛けられたことを思い出した。
『君、一人?』
『波音っていうんだ。本当に波の音が聞こえてきそうな名前だね』
『僕たちと一緒に遊ぶ? 兄貴もいるけど』
『ほら、あっちのお友達のところ、行っておいで。自分から、一緒に遊んでって言うんだ』
もしもまた碧兄ちゃんに会えるのなら、あの時の感謝を伝えたい。だから、目の前の碧がそうであってくれたらと、願う気持ちがあった。
「随分、幸せそうな顔をするんだな」
「え? あ、はい。やっぱり、好きだなあって思って」
「それは俺じゃなくて、死んでしまった碧の方だろ?」
「……そう、ですが。きゃっ」
不意に、碧の腕が波音の腰に伸びてきて、密着するように抱き寄せた。腕と腕、波音の頭と碧の頬が触れ合う。
ようやく、碧が本題を切り出した。この状況で彼に話すのは、碧に半ば「好きです」と告白をしているようなもので、波音には大変な勇気が要る。だが、変な考えだと馬鹿にされようとも、波音は彼に話しておきたいと思った。
「言っていませんでしたが、私の好きな『碧兄ちゃん』は、十年前に亡くなっているんです。交通事故で」
まさかの吐露に、碧は信じられないとでも言いたげに、目を丸くして波音の顔を見た。亡くなった相手に対しての恋心をずっと引きずっていることも、茶化すことなく受け入れてくれている。波音の話を真剣に聞いてくれている証拠だった。
「そう、だったのか……。その件については、からかうようなことをして、悪かった。でも、どうして、それで俺に結びつく?」
「名前だけじゃなくて、二人は年齢も同じなんです。それに、碧兄ちゃんが亡くなった頃、碧さんはこの世界に来ているみたいで、時期が重なります。でも、こう考えた一番のきっかけは、この前碧さんが寝言で『兄貴』って言っていたことです」
「それが、大和ってやつかもしれない、と?」
「はい。深水大和。ものすごく仲の良い兄弟だったんです。何かちょっとでも、ピンと来ませんか?」
碧は額に手を当て、難しい顔をした。暫し思い出そうと試みていたようだったが、結局は首を横に振った。それを見て、波音もしゅんと萎れる。
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魂が同じ人間ではないかと疑っているのだから、似たところがあって当然のように思える。碧は、焦れたようにそう聞いてきた。
「……全然、似てないです。性格なら、むしろ正反対。顔も違いますし」
「はあ? それで、俺とそいつが繋がっていると思うのか?」
「強いて言えば、困っている人を放っておけない、お人好しで優しいところです」
「俺は別に、そんなんじゃ……」
「優しいですよ、碧さんは。見ず知らずの私を、こうして拾って面倒見てくださっているんですから。そこは、碧兄ちゃんとそっくり」
波音は、まだ幼かったあの日、『碧兄ちゃん』に声を掛けられたことを思い出した。
『君、一人?』
『波音っていうんだ。本当に波の音が聞こえてきそうな名前だね』
『僕たちと一緒に遊ぶ? 兄貴もいるけど』
『ほら、あっちのお友達のところ、行っておいで。自分から、一緒に遊んでって言うんだ』
もしもまた碧兄ちゃんに会えるのなら、あの時の感謝を伝えたい。だから、目の前の碧がそうであってくれたらと、願う気持ちがあった。
「随分、幸せそうな顔をするんだな」
「え? あ、はい。やっぱり、好きだなあって思って」
「それは俺じゃなくて、死んでしまった碧の方だろ?」
「……そう、ですが。きゃっ」
不意に、碧の腕が波音の腰に伸びてきて、密着するように抱き寄せた。腕と腕、波音の頭と碧の頬が触れ合う。
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