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第2章 王都クディベルトの姫

三蔵法師が昔を思い出すようです

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 「にしてもなんですかあの強さ」

 サクたちが戻った後、三蔵法師一行はサクたちについて話していた。

 「俺がまだ子供の頃に一度、あいつがこの世界に来たんだよ」

 「玄奘殿と、あのサクというお方ではどちらがお強いのですか?」

 悟空の問いに他の二人も興味津々だ。

 「フッ、俺なんかじゃ歯がたたねぇよ」

 「玄奘殿でも……それは凄まじい強さですね」

 「と言っても、本気で闘ったこともないけどな」

 「では、今やり合えばもしかすると玄奘殿が」

 悟空はどうしても玄奘の方が上だと信じたいらしい。

 それもそのはずだった。玄奘はこの一行の長ということもあるが、それは単に玄奘が三人を集めたからというだけではなく、玄奘の強さが四人の中で群を抜いていたからだ。

 「いやいや、言い方が悪かったな。本気で相手なんてしてもらったことがねぇんだよ。そもそも、俺はあいつに闘いを教わった」

 「教わったって、玄奘殿の師匠ということですか」

 「まあ、そんなとこだな。あいつはオレを師匠だと言うがな」

 「どーいうことですか?」

 「まぁ色々あんだよ」

 (にしてもあいつ、ほんと昔から変わらんな)

 玄奘は少し昔を思い出していた。





 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

_______今から数十年前玄奘が、まだ江流と呼ばれていた頃。

 一人で山奥に篭り、修行をしていると突然サクが現れた。

 「ガキンチョこんなとこで何してる」

 「!!。あんたこそ何してる!」

 後ろから声をかけられた江流は、咄嗟に構える。

 「俺か?俺はいろんな世界を周って強いやつを探してんだよ」

 「強いやつ?」
 
 「そうだ」

 「だったら何でここに来た?俺は強くないぞ」

 「なるほど。まだ……か。確かにな」

 自分では言ったが、改めて他人に肯定され江流は少し頭にきた。

 「だからこそお前に会いにきた。お前はまだ強くない。だがこれから強くなるだろ?」

 「ああ」

 江流は力強く答える。

 「俺はお前の修行を手伝ってやる。その代わり、俺に闘い方を教えろ」

 「は?何言ってんだ?」

 「いいからほら、やろうぜ来いよ」

 サクは構えもせずポケットに手を入れているままだ。

 しかし、そんなサクに迂闊に攻撃を仕掛けては負けると、江流は子供ながらに感じ取った。

 「やっぱりお前は強くなる。楽しみだな」

 サクはどこか嬉しそうだった。

 「いくぞ」

 江流は札を3枚取り出すと、一枚をサクめがけて飛ばす。

 札はサクの顔の前で、小さな爆発を起こした。サクの視界を奪い、懐に潜り込むと次の札を構える。

 しかし、サクはそれより速く江流に蹴りを入れた。_____筈だったが、その蹴りは当たらない。

 ユラユラと江流の姿が消える。と、サクの後ろから飛びかかる。

 しかしサクは反応した。振り返り、今度こそ江流に蹴りが入る。

 「ガハッ」

 江流の体が大きく吹き飛ぶ。

 「ほら、どうしたそんなもんか?……!!」

 立ち上がろうとする江流の姿に違和感を覚えた。

 (あと一枚あるはずの札がない?)

 !!

 サクが地面に目をやると、いつのまにか、そこには札が貼ってあり、その札を中心に地面が渦巻き始め、サクの体を吸い込んでいく。

 「すごいな。蹴りをもらうことは覚悟して、こんな仕掛けを……。いや、ほんと楽しみだな」

 そう言うと、サクは土の中で脚を思いっきり蹴り上げた。

 ドンッという音と共に、地面に三メートルほどの大きな穴が空く。

 「バケモンかよ」

 江流は震えてた。

 怯えていたのではない。江流もまた、楽しんでいたのだ。

 「さあ、じゃあこっちの番かな」

 サクのその言葉に江流はニヤリと笑みをこぼした。

 「誰が札は三枚だけだと言ったよ」

 江流の頭上には十数枚の札が浮いていた。江流が指をクイッと動かすと、札が全てサクめがけて飛んでいく。

 「なるほどな。確かに誰も言っちゃいねぇな」

 先ほどの江流と同じように、サクも笑みをこぼすと、大きく息を吸い、勢いよく札めがけて吹き出した。

 サクの吹き出した息は、突風を巻き起こし、札を全て吹き飛ばした。

 「な……嘘だろ……」

 「ま、これから強くなっていこうや」

 江流は後ろから頭にポンッと手を置かれ驚いて振り向くと、サクが楽しそうに満面の笑みで立っていた。

 「ほんと、何者だよ」

 「俺はお前の師匠になる。だからお前も俺の師匠になれ」

 「ハハ、訳わかんねぇや。でも、よろしくお願いします」

 江流は深々と頭を下げた。

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