20 / 22
第2章 王都クディベルトの姫
三蔵法師が昔を思い出すようです
しおりを挟む
「にしてもなんですかあの強さ」
サクたちが戻った後、三蔵法師一行はサクたちについて話していた。
「俺がまだ子供の頃に一度、あいつがこの世界に来たんだよ」
「玄奘殿と、あのサクというお方ではどちらがお強いのですか?」
悟空の問いに他の二人も興味津々だ。
「フッ、俺なんかじゃ歯がたたねぇよ」
「玄奘殿でも……それは凄まじい強さですね」
「と言っても、本気で闘ったこともないけどな」
「では、今やり合えばもしかすると玄奘殿が」
悟空はどうしても玄奘の方が上だと信じたいらしい。
それもそのはずだった。玄奘はこの一行の長ということもあるが、それは単に玄奘が三人を集めたからというだけではなく、玄奘の強さが四人の中で群を抜いていたからだ。
「いやいや、言い方が悪かったな。本気で相手なんてしてもらったことがねぇんだよ。そもそも、俺はあいつに闘いを教わった」
「教わったって、玄奘殿の師匠ということですか」
「まあ、そんなとこだな。あいつはオレを師匠だと言うがな」
「どーいうことですか?」
「まぁ色々あんだよ」
(にしてもあいつ、ほんと昔から変わらんな)
玄奘は少し昔を思い出していた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
_______今から数十年前玄奘が、まだ江流と呼ばれていた頃。
一人で山奥に篭り、修行をしていると突然サクが現れた。
「ガキンチョこんなとこで何してる」
「!!。あんたこそ何してる!」
後ろから声をかけられた江流は、咄嗟に構える。
「俺か?俺はいろんな世界を周って強いやつを探してんだよ」
「強いやつ?」
「そうだ」
「だったら何でここに来た?俺はまだ強くないぞ」
「なるほど。まだ……か。確かにな」
自分では言ったが、改めて他人に肯定され江流は少し頭にきた。
「だからこそお前に会いにきた。お前はまだ強くない。だがこれから強くなるだろ?」
「ああ」
江流は力強く答える。
「俺はお前の修行を手伝ってやる。その代わり、俺に闘い方を教えろ」
「は?何言ってんだ?」
「いいからほら、やろうぜ来いよ」
サクは構えもせずポケットに手を入れているままだ。
しかし、そんなサクに迂闊に攻撃を仕掛けては負けると、江流は子供ながらに感じ取った。
「やっぱりお前は強くなる。楽しみだな」
サクはどこか嬉しそうだった。
「いくぞ」
江流は札を3枚取り出すと、一枚をサクめがけて飛ばす。
札はサクの顔の前で、小さな爆発を起こした。サクの視界を奪い、懐に潜り込むと次の札を構える。
しかし、サクはそれより速く江流に蹴りを入れた。_____筈だったが、その蹴りは当たらない。
ユラユラと江流の姿が消える。と、サクの後ろから飛びかかる。
しかしサクは反応した。振り返り、今度こそ江流に蹴りが入る。
「ガハッ」
江流の体が大きく吹き飛ぶ。
「ほら、どうしたそんなもんか?……!!」
立ち上がろうとする江流の姿に違和感を覚えた。
(あと一枚あるはずの札がない?)
!!
サクが地面に目をやると、いつのまにか、そこには札が貼ってあり、その札を中心に地面が渦巻き始め、サクの体を吸い込んでいく。
「すごいな。蹴りをもらうことは覚悟して、こんな仕掛けを……。いや、ほんと楽しみだな」
そう言うと、サクは土の中で脚を思いっきり蹴り上げた。
ドンッという音と共に、地面に三メートルほどの大きな穴が空く。
「バケモンかよ」
江流は震えてた。
怯えていたのではない。江流もまた、楽しんでいたのだ。
「さあ、じゃあこっちの番かな」
サクのその言葉に江流はニヤリと笑みをこぼした。
「誰が札は三枚だけだと言ったよ」
江流の頭上には十数枚の札が浮いていた。江流が指をクイッと動かすと、札が全てサクめがけて飛んでいく。
「なるほどな。確かに誰も言っちゃいねぇな」
先ほどの江流と同じように、サクも笑みをこぼすと、大きく息を吸い、勢いよく札めがけて吹き出した。
サクの吹き出した息は、突風を巻き起こし、札を全て吹き飛ばした。
「な……嘘だろ……」
「ま、これから強くなっていこうや」
江流は後ろから頭にポンッと手を置かれ驚いて振り向くと、サクが楽しそうに満面の笑みで立っていた。
「ほんと、何者だよ」
「俺はお前の師匠になる。だからお前も俺の師匠になれ」
「ハハ、訳わかんねぇや。でも、よろしくお願いします」
江流は深々と頭を下げた。
サクたちが戻った後、三蔵法師一行はサクたちについて話していた。
「俺がまだ子供の頃に一度、あいつがこの世界に来たんだよ」
「玄奘殿と、あのサクというお方ではどちらがお強いのですか?」
悟空の問いに他の二人も興味津々だ。
「フッ、俺なんかじゃ歯がたたねぇよ」
「玄奘殿でも……それは凄まじい強さですね」
「と言っても、本気で闘ったこともないけどな」
「では、今やり合えばもしかすると玄奘殿が」
悟空はどうしても玄奘の方が上だと信じたいらしい。
それもそのはずだった。玄奘はこの一行の長ということもあるが、それは単に玄奘が三人を集めたからというだけではなく、玄奘の強さが四人の中で群を抜いていたからだ。
「いやいや、言い方が悪かったな。本気で相手なんてしてもらったことがねぇんだよ。そもそも、俺はあいつに闘いを教わった」
「教わったって、玄奘殿の師匠ということですか」
「まあ、そんなとこだな。あいつはオレを師匠だと言うがな」
「どーいうことですか?」
「まぁ色々あんだよ」
(にしてもあいつ、ほんと昔から変わらんな)
玄奘は少し昔を思い出していた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
_______今から数十年前玄奘が、まだ江流と呼ばれていた頃。
一人で山奥に篭り、修行をしていると突然サクが現れた。
「ガキンチョこんなとこで何してる」
「!!。あんたこそ何してる!」
後ろから声をかけられた江流は、咄嗟に構える。
「俺か?俺はいろんな世界を周って強いやつを探してんだよ」
「強いやつ?」
「そうだ」
「だったら何でここに来た?俺はまだ強くないぞ」
「なるほど。まだ……か。確かにな」
自分では言ったが、改めて他人に肯定され江流は少し頭にきた。
「だからこそお前に会いにきた。お前はまだ強くない。だがこれから強くなるだろ?」
「ああ」
江流は力強く答える。
「俺はお前の修行を手伝ってやる。その代わり、俺に闘い方を教えろ」
「は?何言ってんだ?」
「いいからほら、やろうぜ来いよ」
サクは構えもせずポケットに手を入れているままだ。
しかし、そんなサクに迂闊に攻撃を仕掛けては負けると、江流は子供ながらに感じ取った。
「やっぱりお前は強くなる。楽しみだな」
サクはどこか嬉しそうだった。
「いくぞ」
江流は札を3枚取り出すと、一枚をサクめがけて飛ばす。
札はサクの顔の前で、小さな爆発を起こした。サクの視界を奪い、懐に潜り込むと次の札を構える。
しかし、サクはそれより速く江流に蹴りを入れた。_____筈だったが、その蹴りは当たらない。
ユラユラと江流の姿が消える。と、サクの後ろから飛びかかる。
しかしサクは反応した。振り返り、今度こそ江流に蹴りが入る。
「ガハッ」
江流の体が大きく吹き飛ぶ。
「ほら、どうしたそんなもんか?……!!」
立ち上がろうとする江流の姿に違和感を覚えた。
(あと一枚あるはずの札がない?)
!!
サクが地面に目をやると、いつのまにか、そこには札が貼ってあり、その札を中心に地面が渦巻き始め、サクの体を吸い込んでいく。
「すごいな。蹴りをもらうことは覚悟して、こんな仕掛けを……。いや、ほんと楽しみだな」
そう言うと、サクは土の中で脚を思いっきり蹴り上げた。
ドンッという音と共に、地面に三メートルほどの大きな穴が空く。
「バケモンかよ」
江流は震えてた。
怯えていたのではない。江流もまた、楽しんでいたのだ。
「さあ、じゃあこっちの番かな」
サクのその言葉に江流はニヤリと笑みをこぼした。
「誰が札は三枚だけだと言ったよ」
江流の頭上には十数枚の札が浮いていた。江流が指をクイッと動かすと、札が全てサクめがけて飛んでいく。
「なるほどな。確かに誰も言っちゃいねぇな」
先ほどの江流と同じように、サクも笑みをこぼすと、大きく息を吸い、勢いよく札めがけて吹き出した。
サクの吹き出した息は、突風を巻き起こし、札を全て吹き飛ばした。
「な……嘘だろ……」
「ま、これから強くなっていこうや」
江流は後ろから頭にポンッと手を置かれ驚いて振り向くと、サクが楽しそうに満面の笑みで立っていた。
「ほんと、何者だよ」
「俺はお前の師匠になる。だからお前も俺の師匠になれ」
「ハハ、訳わかんねぇや。でも、よろしくお願いします」
江流は深々と頭を下げた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる