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第2章 王都クディベルトの姫
神様がいるなら
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少女は河原に座り込み、膝の間に顔を埋めていた。
「よお、どーしたこんなところで」
後ろから声をかけられた少女が振り向くと、そこには知らない男が立っていた。
「お兄ちゃん誰?」
「ん?俺か?俺はな、神様だ」
「神様?」
少女は目を丸くして男を見上げている。
「絶対嘘だ」
少女が、またゆっくりと膝に顔を埋めた。
「なに!?神様の言うことが信じられないのか?」
「じゃあ……神様なら、どーして私は生まれてきたの?!教えて!私なんか生まれてこなけりゃよかったのに」
少女は顔を涙で覆いながら、男の足元にうずくまる様に崩れ落ちた。
「どうした?なにがあった?」
男は腰を下ろし少女の頭を撫でる。
「お母さんが、私のせいで家が貧乏だって。私のせいでお父さんがいなくなったんだって。私のせいで……私の……私なんか死んだほうがいいって……」
「そうか。お前はお父さんに何かしたのか?」
少女が首を振るのを見て、男はまた問いかける。
「じゃあ、お金を盗んだりしたか?」
また首を振る。
「じゃあ、お前のせいなんかじゃないだろ」
「でも……」
「あのな、この世には死んだ方がいい人間なんて山程いるんだよ。お前は誰かに死んで欲しいと思うか?例えばお母さんとか」
今度は、激しく首を振った。
「ううん。お母さんは今は意地悪だけど本当は優しいの。私お母さん大好きだよ」
「そうか、そんな風に思えるお前が死んだ方がいい世の中なんてあってたまるか。神様の俺が保証してやる」
少女は神様という言葉に、まだ引っかかりを覚えている様だった。
「信じてないな、お前。なら見てろ。いくぞ。1.2.3」
そう言った男の手には、ポンっと一輪の薔薇が現れた。
「え!?すごいすごい!!本当に神様なの!?」
「だから言ったろ。俺は神様だって」
「ねえ神様。私、生きてていいの?」
「当たり前だ。生きろ。もし何か辛いことがあったら、助けに来てやる。これで俺を呼べ」
そう言って男は笛を少女に手渡した。
「それを吹けばいつだって俺が駆けつけてやる」
「本当に?」
「ああ、だから二度と死んだほうがいいだなんて言うなよ」
「うん!ありがとう神様!……あれ?神様?」
男の姿は、そこにはもうなかった。
それから少女は何度か男を呼び出した。
まだ幼い時は頻繁に話し相手として呼び出していたが、大人になるにつれその回数も徐々に減っていった。
しかしそれでも、好きな人ができた時。母親が病に倒れた時。結婚。大きな事態には男を呼び出した。
そして最後の呼び出しがあった。
「よお、テレサ。なにかあったか?」
「久しぶりね神様」
この時、出会った時はまだ年端も行かなかった彼女もすでに、30歳を迎えていた。
「前回はなんだ?結婚か?」
「そうだったかしらね。それにしても神様ほんと変わらないわね。今じゃどう見たって私の方が年上じゃない」
「老けたな」
「ちょっと!それはダメ」
2人は同じタイミングで吹き出し笑った。
「子供ができたの」
「そうか。よかったな」
「神様には、ずっと助けられてきたわね。主人と付き合うのに悩んでた時なんて、俺が見定めてやるって決闘を申し込んだり。ほんと無茶苦茶よ」
「あれは、お前があまりにも、ウジウジしてるからだな……」
「ありがとうね神様。初めて会った時私を助けてくれて。主人に聞かれたら妬かれちゃうけど、神様との出会いが私にとって一番の奇跡だと思ってるわ」
「なんだよ急に。気持ちわりぃな」
「これで最後にしようと思う」
「あ?」
男は意味を理解していたが、どうしても聞き返してしまった。
「今まで神様に守られてばかりだったけど、これから母親になるから強くならないと。だから神様に助けてもらうのはこれで終わり」
「そうか」
「あれ?もしかして神様寂しがってる?」
「うるせぇ」
「でも、どうせ神様これからも私のこと見守ってくれるでしょ。私笛で呼んでない時も神様が様子見にきてくれてるの知ってるわよ」
「は!!お前、俺がそんなことするわけ……」
男は顔を見られるのが嫌なのか明後日の方向を向いた。
「でも、この笛はまだ預かっててもいいかしら?もし、私の息子や孫に何かあった時は、助けてあげてほしいの。今まで散々助けてもらっておいて、図々しいとは思うんだけど」
「今更何言ってやがる。あと一つも二つも頼まれんのに大差ねぇよ」
「ありがとう。じゃあこの笛は保存するね」
保存というのはテレサの能力だった。物体を自分の命が尽きるまで、今の状態を保ち続ける能力だ。
「保存なんかしなくても、それは壊れねぇぞ」
「この保存は、私が死んだあとに助けてもらう用だから。私が生きてる間は私が助けるの」
「お前、いつの間にそんなに頼もしくなったんだ?」
「伊達に老けてませんから」
それからしばらく、二人は思い出話に花を咲かせた。
「じゃあな」
「ええ、最後にこれ。私の力の鍵。笛のお返し」
「ありがとよ」
男は鍵を受け取ると、姿を消した。
「よお、どーしたこんなところで」
後ろから声をかけられた少女が振り向くと、そこには知らない男が立っていた。
「お兄ちゃん誰?」
「ん?俺か?俺はな、神様だ」
「神様?」
少女は目を丸くして男を見上げている。
「絶対嘘だ」
少女が、またゆっくりと膝に顔を埋めた。
「なに!?神様の言うことが信じられないのか?」
「じゃあ……神様なら、どーして私は生まれてきたの?!教えて!私なんか生まれてこなけりゃよかったのに」
少女は顔を涙で覆いながら、男の足元にうずくまる様に崩れ落ちた。
「どうした?なにがあった?」
男は腰を下ろし少女の頭を撫でる。
「お母さんが、私のせいで家が貧乏だって。私のせいでお父さんがいなくなったんだって。私のせいで……私の……私なんか死んだほうがいいって……」
「そうか。お前はお父さんに何かしたのか?」
少女が首を振るのを見て、男はまた問いかける。
「じゃあ、お金を盗んだりしたか?」
また首を振る。
「じゃあ、お前のせいなんかじゃないだろ」
「でも……」
「あのな、この世には死んだ方がいい人間なんて山程いるんだよ。お前は誰かに死んで欲しいと思うか?例えばお母さんとか」
今度は、激しく首を振った。
「ううん。お母さんは今は意地悪だけど本当は優しいの。私お母さん大好きだよ」
「そうか、そんな風に思えるお前が死んだ方がいい世の中なんてあってたまるか。神様の俺が保証してやる」
少女は神様という言葉に、まだ引っかかりを覚えている様だった。
「信じてないな、お前。なら見てろ。いくぞ。1.2.3」
そう言った男の手には、ポンっと一輪の薔薇が現れた。
「え!?すごいすごい!!本当に神様なの!?」
「だから言ったろ。俺は神様だって」
「ねえ神様。私、生きてていいの?」
「当たり前だ。生きろ。もし何か辛いことがあったら、助けに来てやる。これで俺を呼べ」
そう言って男は笛を少女に手渡した。
「それを吹けばいつだって俺が駆けつけてやる」
「本当に?」
「ああ、だから二度と死んだほうがいいだなんて言うなよ」
「うん!ありがとう神様!……あれ?神様?」
男の姿は、そこにはもうなかった。
それから少女は何度か男を呼び出した。
まだ幼い時は頻繁に話し相手として呼び出していたが、大人になるにつれその回数も徐々に減っていった。
しかしそれでも、好きな人ができた時。母親が病に倒れた時。結婚。大きな事態には男を呼び出した。
そして最後の呼び出しがあった。
「よお、テレサ。なにかあったか?」
「久しぶりね神様」
この時、出会った時はまだ年端も行かなかった彼女もすでに、30歳を迎えていた。
「前回はなんだ?結婚か?」
「そうだったかしらね。それにしても神様ほんと変わらないわね。今じゃどう見たって私の方が年上じゃない」
「老けたな」
「ちょっと!それはダメ」
2人は同じタイミングで吹き出し笑った。
「子供ができたの」
「そうか。よかったな」
「神様には、ずっと助けられてきたわね。主人と付き合うのに悩んでた時なんて、俺が見定めてやるって決闘を申し込んだり。ほんと無茶苦茶よ」
「あれは、お前があまりにも、ウジウジしてるからだな……」
「ありがとうね神様。初めて会った時私を助けてくれて。主人に聞かれたら妬かれちゃうけど、神様との出会いが私にとって一番の奇跡だと思ってるわ」
「なんだよ急に。気持ちわりぃな」
「これで最後にしようと思う」
「あ?」
男は意味を理解していたが、どうしても聞き返してしまった。
「今まで神様に守られてばかりだったけど、これから母親になるから強くならないと。だから神様に助けてもらうのはこれで終わり」
「そうか」
「あれ?もしかして神様寂しがってる?」
「うるせぇ」
「でも、どうせ神様これからも私のこと見守ってくれるでしょ。私笛で呼んでない時も神様が様子見にきてくれてるの知ってるわよ」
「は!!お前、俺がそんなことするわけ……」
男は顔を見られるのが嫌なのか明後日の方向を向いた。
「でも、この笛はまだ預かっててもいいかしら?もし、私の息子や孫に何かあった時は、助けてあげてほしいの。今まで散々助けてもらっておいて、図々しいとは思うんだけど」
「今更何言ってやがる。あと一つも二つも頼まれんのに大差ねぇよ」
「ありがとう。じゃあこの笛は保存するね」
保存というのはテレサの能力だった。物体を自分の命が尽きるまで、今の状態を保ち続ける能力だ。
「保存なんかしなくても、それは壊れねぇぞ」
「この保存は、私が死んだあとに助けてもらう用だから。私が生きてる間は私が助けるの」
「お前、いつの間にそんなに頼もしくなったんだ?」
「伊達に老けてませんから」
それからしばらく、二人は思い出話に花を咲かせた。
「じゃあな」
「ええ、最後にこれ。私の力の鍵。笛のお返し」
「ありがとよ」
男は鍵を受け取ると、姿を消した。
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