46 / 52
6その3
しおりを挟む
シャーウッドローズについて気になっていることがある。
しかし「その発言の真意について話すためには、とある資料が必要だわ」と言ってコレットが出て行ってから、早くも一日が経ってしまった。
そこへ、轟くようなノックの音が響いたことで、マギエラは思わず顔をしかめていた。
「ああ、もう。どうしてグレンが先なのよ」
どうせ、実験室の整理整頓がまるでなっていないのだろう。だから、たっぷりの時間を費やしているにも拘らず、目的の資料を探し出せないでいるに違いない。我が生みの親ながら情けないったらない。
「もしかして、コレット女史が来る予定だったのかい?」
千早の問いには、乱暴にパイプを吸って息を吐き出すに留めておく。
「あの男は馬鹿で無能だけれど、ノッティンガムシャーでロビンフッドの遺体が挙がったとなれば、さすがに気付いたというわけね。困ったわ……」
困った。本当に困った。けれども、ミス・キャロリンをグレン警部の手に渡すのは気乗りしない。たとえ彼女が自首したがりのお馬鹿さんでも、だ。なにせ、このロンドンは正直者が報われる街ではないのである。
「チハヤ、キャリーはどこ?」
「ミス・キャロリンかい? 彼女なら、たしか三階の自室にいるとミリアが話していた気がするけど……?」
それがどうしたのかい、とでも言いたそうな顔だ。この人の良い少年も、たいがい呑気なものだが、それを愚痴っても詮無い。彼は何も知らないのだ。
して、ノックの音がしたのは階下にある応接室の方だったように思われた。すると、そろそろミリアがグレン警部をこの部屋に案内しに来る頃だろう。今から部屋を出れば鉢合わせするに違いない。
さて、どう時間を稼いだものか……!
窓を開けて、眼下に警察車両の姿を視認する。運転台には誰もいない。また、つい先刻まで雨でも降っていたのか、後部キャビンには幌が張ってある。朗報だ。
「グレンが来たら『居ない』って言っておいて。お願いね」
そう言ってマギエラは、窓から身を投げた。
しかし「その発言の真意について話すためには、とある資料が必要だわ」と言ってコレットが出て行ってから、早くも一日が経ってしまった。
そこへ、轟くようなノックの音が響いたことで、マギエラは思わず顔をしかめていた。
「ああ、もう。どうしてグレンが先なのよ」
どうせ、実験室の整理整頓がまるでなっていないのだろう。だから、たっぷりの時間を費やしているにも拘らず、目的の資料を探し出せないでいるに違いない。我が生みの親ながら情けないったらない。
「もしかして、コレット女史が来る予定だったのかい?」
千早の問いには、乱暴にパイプを吸って息を吐き出すに留めておく。
「あの男は馬鹿で無能だけれど、ノッティンガムシャーでロビンフッドの遺体が挙がったとなれば、さすがに気付いたというわけね。困ったわ……」
困った。本当に困った。けれども、ミス・キャロリンをグレン警部の手に渡すのは気乗りしない。たとえ彼女が自首したがりのお馬鹿さんでも、だ。なにせ、このロンドンは正直者が報われる街ではないのである。
「チハヤ、キャリーはどこ?」
「ミス・キャロリンかい? 彼女なら、たしか三階の自室にいるとミリアが話していた気がするけど……?」
それがどうしたのかい、とでも言いたそうな顔だ。この人の良い少年も、たいがい呑気なものだが、それを愚痴っても詮無い。彼は何も知らないのだ。
して、ノックの音がしたのは階下にある応接室の方だったように思われた。すると、そろそろミリアがグレン警部をこの部屋に案内しに来る頃だろう。今から部屋を出れば鉢合わせするに違いない。
さて、どう時間を稼いだものか……!
窓を開けて、眼下に警察車両の姿を視認する。運転台には誰もいない。また、つい先刻まで雨でも降っていたのか、後部キャビンには幌が張ってある。朗報だ。
「グレンが来たら『居ない』って言っておいて。お願いね」
そう言ってマギエラは、窓から身を投げた。
0
あなたにおすすめの小説
村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~
水無月礼人
ミステリー
子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。
故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。
嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。
不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。
※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。
【アルファポリス】でも公開しています。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる