上 下
17 / 29
本章

16 真原勇斗※勇者視点

しおりを挟む
 俺は真原勇斗しんはらゆうと。高一

 つまんねー授業を我慢して受けてようやく夏休み、ってとこで、こんな娯楽も何もない世界に呼び出された。

 テレビもゲームもスマホもないとか、ありえねーよ。
 文明遅れてんな、この『異世界』は。



 文明が進んでる世界に住んでた俺のほうが、こっちの奴らよりえらいだろ。

 俺って『勇者様』らしいし?



 だからえっらそうに命令してくんじゃねえよ。

 ガマガエルみたいな太ったおっさんが王冠なんかかぶってて滑稽なんだよ。ぐふふ、とか笑っててマジ許して丸。



 ああ、そうだ。そういや娯楽あった。

 俺のこと勇者様~とか言って持ち上げてくるから、若くて可愛いメイドを指定したら何人もこの俺専属になって、どの子もマジ可愛いんだ。

 けどガードが固いんだよなあ。

 胸を触ろうとしてもするりと交わされるし、一緒に風呂に入ろうって言っても聞かなかったふりをされる。ベッドに連れ込みたいけど、何でかあのラブリ、とかいう女がやってきて邪魔するんだ。

「ユウトさま、あたくしだけを構って下さいまし」とか言ってきちゃってさあ!


 俺に気があんのは分かるけど、独り占めなんてそんな態度じゃできっこないだろ?
 せっかくのデカパイ触らしてもくれないじゃんか。

 することさせてくんなきゃ無理だって。


 まあでも、そういうのさえなきゃえらい快適だった。

 なんせ三度の飯はきっちり出てくるし、お茶の時間っていっておやつまである。

 ふかふか羽根布団つきのどでかいベッドで毎日寝られるし、勉強しないでいいし、うっせえ親もいない。




 いつものように可愛いメイドたちの給仕つきで飯食ってると、痩せてるローブ男が部屋に入って来た。召喚された初日に見た奴だ。

 メイドのスカートをめくりあげてパンティ見ようと思ったら、変な半ズボンみたいなのが下着だったってオチ。

 もっとはみケツした下着はけっての。色気ゼロじゃんか。
 
 そんなことやってる最中にノックもせずに入って来たもんだから、さすがにムカつく。



「ノックぐらいしろよなー」

「これはこれは。勇者よ申し訳ありませぬ」
 
 ちっとも表情変えずに謝られてもなあ。スカートをめくったメイドはそそくさと逃げてしまった。くそ。

「で、何?」

「勇者のお力を示して頂く時が参りました」

「へ?」
 

 あー。そういや俺って『魔王を討ち取れ』って召喚されたんだっけ?
 生活が快適すぎてすっかり忘れてた。

 なんだよ、このままずーっとこうしてたいよ。


 魔王ってあれだろ?ゲームとかマンガで出てきて、"世界のはんぶんをやろう"とか言ってくる奴だろ?
 斃すなんて面倒くさいから世界の半分もらっておさらばするのが正解な?


 何でそうゆう話に出てくる勇者って、疑いも持たずすんなり魔王退治なんかに行くんだ?熱血すぎだろ。
 それか、アレか?血にでも飢えてんのか?

 血がドバーとかゼッタイイヤだかんな。




 ……けど、俺の【恩恵スキル】なら簡単じゃね?
 斃すまでもねーよ。降参させりゃいいんだからさ。


 世界の半分どころか全部だってヨユーだろ、ヨユーwww



 せっかくもらったスキルなんだからさー。

しおりを挟む

処理中です...