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本章

15 アルスヴィズ

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 今度のお茶菓子はアップルパイだった。

 豪華にホイップされたクリームの入った壺もあって、一つ一つ切り分けた皿にクリームを添えていく。



「あ、そうだ。エルネステイルさん、これお土産です」

 そう言ってアーサー兄さまは、ベルトに装着した革製バッグから取り出した布袋をテーブルに置いた。


 見覚えのある袋だなあ。さすが兄妹?持ってくるお土産までバッチリ同じとは。


「ありがとう。氷砂糖かい?」

 多分、エルネステイルも同じことを思ったんだろう。ふふっと笑った。

「はい。僕をここまで連れてきてくれた、アルスヴィズという名の馬に少し上げてしまいましたが……」

 うんうん。馬って氷砂糖大好きだよねえ。


 アーサー兄さまの言葉でみんなが一斉に息を呑んだ。

 えっ?なになに?どこに驚いたんだろ?

 エルネステイルが我に返る。

「アルスヴィズは古代の神馬の末裔と言われている、魔族の中でもドラゴンに次ぐ最古の種でとてもプライドの高い馬なんだ……乗せてもらってここまで来たのかい?それなら結界の中に容易に入ってこられたことも納得がいくけれど……まさかヒトを乗せることがあるなんてね」

 テーブルに置かれたカップは今度は四つだ。
 セラフィーナが兄さまの肩からテーブルの上に移動してお茶を飲み始めた。猫舌じゃないんだな。



「鳥の視力を借りてこの場所は分かったんですけれど、どうやって行こうかと森の入口に立ってたら、アルスヴィズがやってきて"乗るがいい"って言ってくれたんです。最初見たときは脚が六本あるのでびっくりしましたが、とても速くて途中からスキルで同化してなかったら、身体中打ち枝で傷だらけになるところでした」

 兄さまがフーフーしながらお茶を飲んでいる。猫舌だから。

 それにしてもアーサー兄さまのスキルがどんどん増えていってるような。スキルで同化、ってなんだろ?身体強化とはどう違うんだろ。

「そうか……まさかの自分から名乗りを上げたのか……」
 エルネステイルが独り言のように呟いた。


 

 アーサーがアップルパイを美味しそうに食べて一息つくと、エルネステイルに向き直った。
 現辺境伯の嫡男らしい真面目な表情になっている。


「エルネステイルさん、最近我がアクアオッジ領では緩衝地帯である森を超えて暴走してくる魔獣たちが問題になっています。
 ここにいるみんなが魔族だということは聞きました。魔王が復活して魔王国が建国されたということや、この森に勇者たちがいるということも。
 
 そのせいで魔王がヒトを滅ぼそうとしているというのは本当ですか?」





 ◇ ◇ ◇
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