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番外編 今日もアクアオッジ家は平和です⑩
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そのあと試着室兼縫製室に移動して、ウィルフレッドとメリルは出来上がってきた制服の試着を行い、最後の手直しをしてもらう。この仕組みを作ったのはメイベルが初めてだそうだ。今では大半の服飾店はこの形式を取っている。
今までだと、縫製室が購入者の目に触れるのは非常にだらしない、という扱いだったらしい。今は技術職人と言ってお針子さんたちは立派な職として認められ始めているけれど、ちょっと前までは購入者の目の届くところにいるなど以ての外。裏方の仕事を買う人に見せるなんて、という扱いだったみたいだ。
でもメイベルはそういう垣根を取っ払って、縫製室そのものを今までの雑多な空間ではなく、作業のしやすいシンプルで見目の良い空間に作り上げた。
試着室も服を着替える小部屋には扉が付いており、人の目に触れることはない。鏡を多く広くして、購入者が色んな角度から服をチェックすることが出来るし、手直しも縫製室ですぐ終わる。時間の節約にもなるし、侍女や付き人をたくさん連れてくる貴族たちにもこの広い試着室は好評だった。
すぐに冬になるので必須のコートも軽くてとても暖かい。
顔も背丈も似ているアクアオッジの双子が制服を着ると対のマスコットのようで非常に可愛く見えるらしく、お針子さんたちからやんやの喝さいを浴びる二人だった。
「メリル……何だか他の男にはその姿を見せたくない気がする。何故そう思うのか分からないけれど」
「メリルお嬢様……。おみ足が見えすぎでは……ああっ、なんて煽情的なんだ……」
メリルの背筋がぞわぞわ~っとする。
王子とソルがなんだか変なことを言い出したけれどメリルは黙っておいた。
制服を馬車に積み込んでタウン・ハウスに帰宅する。
どうやって領主館に持ち帰るのかって?帰路はドラゴンだから護衛は必要なくなる。
ソルのスキルに【Lv10max影入】というスキルがあって、これは任意の人の影に入り込めるスキルだった。
ソルが持つ荷物も全部一緒に入り込めるのでかさばる荷物の運搬にはもってこいなのだ。
【収納スキル】を持っている人も世の中にはいるけれど、そんなに容量は大きくないらしいしね。
なんだか【隠密スキル】の使い方が決定的に間違っている気もするけれど、アクアオッジ家は誰も気にしない。ソルももう考えるだけ無駄だと悟った。それにメリルお嬢様が幸せならば他のことは別に気にならない。
だがソルは考える。『誰の影に入って帰ろう?』
まずアクアオッジ辺境伯夫人アドリアナ様はよろしくない。そんなことをしたら雇い主である現辺境伯ザカリ―様にぶっ飛ばされる。【Lv10max握力】(ソルは知らないけれど)これのせい。
あの方の腕の力で殴られたら、いくら【Lv10max身体強化】を持っていてもしばらくはベッド生活だ。
Lv10同士の勝負の行方は今のところ誰にも分からない。
残るは必然的にウィルフレッドかメリルになるのだが、ウィルフレッドの影の中には、真夜中以外は常に闇の精霊が入っていた。いわば先客。一度ソルがウィルフレッドの影の中に入ったとき、闇の精霊は緊張したのか、隅っこでプルプルしっぱなしだったらしい。【Lv10max暗殺技術】スキルのせいだろう。
その話を聞いたときさすがに気の毒に思えたので、出来ればメリルお嬢様の影の中に入りたいところだ。
…だがアンドリュー第三王子がそれを許すとも思えない。
「め、メリルの影の中に入りたいだと!?」
今にも王子の声が聞こえてくるような気がする。思春期メンドくさいな。
どうしたものか。今から苦悩するソルであった。
◇ ◇ ◇
今までだと、縫製室が購入者の目に触れるのは非常にだらしない、という扱いだったらしい。今は技術職人と言ってお針子さんたちは立派な職として認められ始めているけれど、ちょっと前までは購入者の目の届くところにいるなど以ての外。裏方の仕事を買う人に見せるなんて、という扱いだったみたいだ。
でもメイベルはそういう垣根を取っ払って、縫製室そのものを今までの雑多な空間ではなく、作業のしやすいシンプルで見目の良い空間に作り上げた。
試着室も服を着替える小部屋には扉が付いており、人の目に触れることはない。鏡を多く広くして、購入者が色んな角度から服をチェックすることが出来るし、手直しも縫製室ですぐ終わる。時間の節約にもなるし、侍女や付き人をたくさん連れてくる貴族たちにもこの広い試着室は好評だった。
すぐに冬になるので必須のコートも軽くてとても暖かい。
顔も背丈も似ているアクアオッジの双子が制服を着ると対のマスコットのようで非常に可愛く見えるらしく、お針子さんたちからやんやの喝さいを浴びる二人だった。
「メリル……何だか他の男にはその姿を見せたくない気がする。何故そう思うのか分からないけれど」
「メリルお嬢様……。おみ足が見えすぎでは……ああっ、なんて煽情的なんだ……」
メリルの背筋がぞわぞわ~っとする。
王子とソルがなんだか変なことを言い出したけれどメリルは黙っておいた。
制服を馬車に積み込んでタウン・ハウスに帰宅する。
どうやって領主館に持ち帰るのかって?帰路はドラゴンだから護衛は必要なくなる。
ソルのスキルに【Lv10max影入】というスキルがあって、これは任意の人の影に入り込めるスキルだった。
ソルが持つ荷物も全部一緒に入り込めるのでかさばる荷物の運搬にはもってこいなのだ。
【収納スキル】を持っている人も世の中にはいるけれど、そんなに容量は大きくないらしいしね。
なんだか【隠密スキル】の使い方が決定的に間違っている気もするけれど、アクアオッジ家は誰も気にしない。ソルももう考えるだけ無駄だと悟った。それにメリルお嬢様が幸せならば他のことは別に気にならない。
だがソルは考える。『誰の影に入って帰ろう?』
まずアクアオッジ辺境伯夫人アドリアナ様はよろしくない。そんなことをしたら雇い主である現辺境伯ザカリ―様にぶっ飛ばされる。【Lv10max握力】(ソルは知らないけれど)これのせい。
あの方の腕の力で殴られたら、いくら【Lv10max身体強化】を持っていてもしばらくはベッド生活だ。
Lv10同士の勝負の行方は今のところ誰にも分からない。
残るは必然的にウィルフレッドかメリルになるのだが、ウィルフレッドの影の中には、真夜中以外は常に闇の精霊が入っていた。いわば先客。一度ソルがウィルフレッドの影の中に入ったとき、闇の精霊は緊張したのか、隅っこでプルプルしっぱなしだったらしい。【Lv10max暗殺技術】スキルのせいだろう。
その話を聞いたときさすがに気の毒に思えたので、出来ればメリルお嬢様の影の中に入りたいところだ。
…だがアンドリュー第三王子がそれを許すとも思えない。
「め、メリルの影の中に入りたいだと!?」
今にも王子の声が聞こえてくるような気がする。思春期メンドくさいな。
どうしたものか。今から苦悩するソルであった。
◇ ◇ ◇
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