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番外編 今日もアクアオッジ家は平和です⑱

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 光のあるところには、影が出来る――

 ソルが走り出して悪魔に近づいたかと思うと姿が消える。

 地面に膝をついて荒い息を繰り返していた王子がすぐに気が付いた。【Lv10max影入】の力だと。

 途端に悪魔が変な動きを繰り返した。

"ぐぬぬぬぬ……こん畜生っ!?だ、誰よ、勝手にアタシの身体をぉっ!!"

 ソルが悪魔の身体を影から操ってる!?
 悪魔が必死に抵抗すればするだけ、糸の切れた操り人形のようにヘンテコな動きでジタバタしている。元がバニー姿の変態にしか見えないため、余計に人形っぽい。

 ――とソルの身体が、いきなり影から浮かび上がって天井に叩き付けられた。【Lv10max身体強化】を使う間もなく影から追い出されたのだ。受け身も取れずドサっと地面にそのまま落ちてしまう。

「ぐ……ぅっ!」
 ソルがうずくまってごぼっと血を吐く。

「ソル!!」
 
"アンタら……いくら可愛くたってもう許さない……殺してやるわ……"

 バニーの口が裂けて鋭い牙が剥き出しになった。目が吊り上がり、悪魔の身体が膨れ上がる。と同時に黒い瘴気が(全裸の)悪魔の周りに立ち込めた。
 

「ぎゃー!変態!!」

 メリルが目のやり場に困って思いっきり目を瞑り両手で目を覆いながら叫んだ。

"だぁれが変態よー!この極クソ女があっ!殺してやるわ!!"

 あれ、でもなんか黒いモヤモヤが出てたから大丈夫かも?
 両手の指を開いてすき間から恐る恐る目を開けて覗いてみる。……うん、隠れてる。

 絶体絶命なのに彼女はいつも通常運転だ。


 そのときメリルは見た。

 額縁の中から細く黒い腕が二本伸びてきて悪魔の身体に絡み付き、ジタバタ暴れるのにも構わず引きずり込んでいくのを――

「ダークネス!?」
 ウィルフレッドが叫んだ。メリルも気が付いた。
 闇の精霊が悪魔を元の額縁に引きずり込むと黒い影が躍り出て、ウィルフレッドの影に収まった。

 ダンダン!と何かを叩くような音がして額縁を見ると、さかさまになった悪魔がバニー姿に戻って必死に何もない空間をひたすら叩いている。

"出しなさいよ!このクソガキども!全身の穴という穴から血を噴出させて殺してやるから!!"

 闇雲に叩いていて、悪魔とみんなは目が合うことはなかった。どうやら額縁に閉じ込められているうちは、外の様子は見えないようだ。
 ダンダンと叩く音が一層大きくなって、悪魔が閉じ込められている目に見えない壁のようなものにヒビが入った。悪魔がニヤリと嗤う。


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