±Days 四馬鹿な幼馴染みと巻き込まれ相談役の平凡ではない日常

空月

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第2章 王道ベタネタ(?)×ぐだぐだ日常編

第20話 『いつもと違う真剣な彼にドキッ!』なイベントが起こったようです。

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 諸々考えて、幼馴染みたちと同じ教室に通うことにした。特別クラスだかなんだかについて思うところがないではないけど、他のクラスに所属して、幼馴染みたちが事あるごとに突撃してくる方が目立つし面倒だという結論に達したので。
 ――そう、たとえば教室付属の休憩室でのんびり読書なんか楽しんでるときに、ドバンと扉が開かれるとか、そういう突撃である。

「聞いて聞いてー‼」

 飛び込んできたのはユズだ。扉を思い切りぶち開けるようなことは他のやつらはしないので、第一声が聞こえる前にわかっていたことだけど。
 とにかくなんかめちゃめちゃテンションが上がっていることだけはわかる。主に声のでかさで。
 この状況になれば、読書なんか望めるはずもない。仕方なく本を閉じて応対する。

「うるさい。あと自分の馬鹿力さを認識して周囲のものを取り扱え」

 この休憩室の扉じゃなかったら破壊されてたと思う。本気で。
 ユズは栄養が身体能力を伸ばす方にばかり費やされたタイプなので、注意しておかないと学校の備品とか壊しそうというレベルなのだ。……もう壊したあとで、だからこの休憩室の扉は造りがめちゃくちゃよくて重厚なやつなのかもしれない。

「冷たいっ! 気をつける! まあそれはともかく、聞いて聞いて!」
「だから何をだ。三回深呼吸して声量を落としてそこに座った後なら聞いてやる」
「わかった!」

 直球にうるさいと告げてもテンションに比例した声のでかさが変わらなかったので、指示を出す。素直に言うことを聞いたユズが、すうはあすうはあすうはあと大きく深呼吸して向かいのソファに座った。

「よし三回! あのねあのねっ! 目が合った‼」
「……は?」
「誰か来たなとは思ったんだけど稽古中だからそっち見れなくて! 稽古終わって気配する方見たらあの子が‼ オレのこと見てくれてたってことだよね⁉ しかも目が合ったんだよ⁈ すごくない⁉」
「とりあえずもう1ランク声量落とせ。あと順序立てて話せ。二度言わせるなよ?」

 全然要領は得ないし興奮は落ち着いてないし声量も全体に対して微々たる変化しかなかったので強めに詰めると、ユズは水をかけられた犬のようにしゅんとなった。

「……ご、ごめんなさい……」
「わかればよろしい。で?」

 促すと、ユズは上目遣いにこっちの様子をうかがいながら話し始めた。

「今日の朝、久しぶりに学校の武道場で稽古してたんだけど、途中から誰かが覗いてて」
「うん」
「悪意とかは感じなかったから、気になったけど区切りつくまでそのままにしてて」
「うん」
「稽古終わって誰が覗いてたのか確認したらあの子だった上に、目が合ったのが嬉しくてちょっと調子に乗りすぎましたごめんなさい」
「いや別に二回も謝らなくてもいいけど。もし次やったらそれ相応に対応するだけで」

 言っても聞かない馬鹿に対しては、それなりの態度になるよね?という話だ。
 ユズは何故かぶるっと震えて、縋り付くようにもう一度謝罪を口にした。

「ホントごめんなさい……!」

 ……そんなにこわい顔してたかな。淡々と事実を伝えたのみのつもりだったんだけど。
 まあ、反省を促せたと思えば、悪いことではない。とりあえず、思考をユズの報告内容に戻す。

「――しかし、朝稽古か……」
「……な、なんかまずかった?」
「いや? 多分あんたにとってはよかったんじゃない」
「え?」

 朝の爽やかで清廉な空気。おそらく一人きりでの武道場での稽古。こいつのことだからきちんと道着も着ていただろう。そこを目撃されたということは――。

「あんたが傍から見て真剣に見えるのって、稽古とか試合中くらいだし。多少は印象良くなったかもってこと」
「それってオレがいつもは真剣に見えないってことだよね?」
「否定はしない」
「そこは否定して欲しかったです!」
「無理言うな」

 ユズがボケボケ、あるいは馬鹿っぽく見えないときというのは貴重なのだ。通常形態が脳天気馬鹿なので無理である。

「え、無理なの……?」
「無理。無い袖は振れないんで。……まあよかったな? 目を逸らされる状態からは脱却できるかもよ」

 ……そう、とてもかなしいことに、熱視線を送りすぎて目を合わせてもらえなくなってたからな、こいつ。

「うん! 脱却できるように頑張る!」
「頑張るな。逆効果だから」

 グッと拳を握りしめて気合い十分のユズには申し訳ないが、絶対に空回るのでやめてほしい。

「えええ⁉ オレのやる気全否定⁉」
「否定はしてない。ただ『目を逸らされる』から『避けられる』にクラスチェンジしたいとかじゃないならやめとけってだけで」
「わかったやめます!」
「そうしとけ」

 わりとあっさり空回りの芽を摘み取れた――と思ったのもつかの間。

「……あの、何もしちゃダメってこと? こっちから近付いちゃダメ?」

 おそるおそる訊いてきたユズに、半眼になってしまったのも仕方ないことだろう。

「――二度は言わせるなっつっただろうが」
「ご、ごめんなさいもう言いません!」
「このトリ頭が。全力で懐きに行ってドン引かれた後なんだから自重しろ。もう一回引かれたらもう知らないからな?」
「そ、そんなこと言わないで! 見捨てないでー‼」

 見捨てるかどうかは今後の行動次第である。そこのところもうちょっと釘刺しておかないと、特にユズはやらかしかねないからな……。

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