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第2章 王道ベタネタ(?)×ぐだぐだ日常編
第22話 『寝ぼけた彼の勘違いでドキッ!』なイベントが起こったようです。
しおりを挟む昼休みも終わりにさしかかってきた頃。読んでいた本を閉じて、ちょっと前に休憩室に入ってきたと思うと、ソファに寄りかかって常以上にぼーっとした様子でいるレンリに目を向けた。
「……めちゃめちゃ心ここにあらずって感じだけど、なんかあった?」
「……さっきまで……中庭で、日向ぼっこしてた……んだけど」
昼休みに入った途端、どっかに行ったなとは思ってたけど、中庭だったか。こいつひなたぼっこしながら寝るの好きだもんな。
「――気持ち良くて、眠って」
「うん」
「目が、覚めたら、……あの子、ぎゅーってしてて」
「――は?」
待て待て、ひなたぼっこして眠った流れからなんでそうなる。謎すぎるだろ。
そんな私の困惑をよそに、レンリはぽつぽつと続ける。
「困ってたみたいだった、から。離したら、ふらふらしながら歩いて行って。……顔、赤かったし、体調悪かった……のかな、って。ひとりで行かせて大丈夫だったかな、って……」
「いやいやいや。ちょっと待て整理させて」
「……?」
レンリが首を傾げて、それからこくんと頷いた。よしよし、状況把握には本人に聞くしかないからな、協力的でよろしい。
「まず。目が覚めたのはいつ頃、どれくらい寝てた」
「ん、と……目が覚めた、のは、ここに戻ってくる五分前くらい? だから……二十分くらいは寝てた、かも……」
「その……ぎゅーってしてたとか言ったけど、その前後を詳しく」
「……? くわ、しく?」
「詳しく。起きる前とか起きた後とかでなんか覚えてることとか変わってたこととかあれば」
重ねて問うと、レンリはしばらく首を傾げて記憶を辿ってみていたようだった。そして何かに思い当たったように、小さく「あ、」と零す。
「……猫」
「猫?」
「一緒に、寝てた。のに、いなくなってた。……抱いてた、つもりだったけど。いなくて。代わりにあの子がいた。……『かんな』はいたのに」
「『かんな』って――それまさか猫の名前か」
「うん」
当然の顔で首肯するレンリに、もしかして、と思う。ああすごいヤな予感……。でもこういう予感は当たるんだよな……。
「もしかして、『かんな』以外にも身近な人間の名前手当たり次第につけてるんじゃないだろうな」
「五匹だけ……だけど。ダメ、だった……?」
上目遣いで問うてくる時点で、嫌な予感は当たったに等しい。当たってほしくないと思いながら、推測した内容をレンリに確認する。
「……。『かんな』の時点で三匹は確定として、残り二匹のうちどっちかがその子の名前だったり一緒に寝てたけどいなくなったのがその猫だったりしないよな」
どうか否定してくれと思ったけれど、残念ながらレンリは目を輝かせた。
「すごい……。なんでわかったの」
ああ、うん、何かもう全部わかったわ……。
「……あー、うん。とりあえず、」
「?」
「顔赤かったのは別に病気じゃないだろうから心配しなくていい。ただしばらく顔合わせたら避けられるかもだけど」
「……なんで?」
レンリがこてんと首を傾げる。これは全然わかってないな。
「自分で考え――てもわかんないよなおまえは。でも説明するの面倒っつーかこっちが恥ずかしいからミスミあたりに聞け」
「ミスミ?」
「多分説明には一番適任だから。カンナでもいいけど」
「わかった」
ミスミもカンナも、私が推測できる程度のことならすぐに理解するだろうから丸投げすることにした。
レンリもいい子のお返事をしたので、これについてはもう考えないことにする。
それにしてもうちの幼馴染みたちがすみません。セクハラ案件ですができれば訴えないでやってください。
コイツは――レンリは本当に、本当に情動が薄いだけなんです。
届かない謝罪と言い訳を胸に、溜息を吐く。
「……にしても、目が覚めて好きな子抱きしめてた時点で色々と気付け。病気かなとか心配する前に考えることがあるだろうが。っつーか突き飛ばされたりしないところがあんたのすごいところだよな……まあ抵抗されてても気付かなかった可能性はあるけど」
「よくわからない、けど。……固まってた、と思う」
「……ああ、うん。だろうね。いきなり抱き寄せられたら固まるよね。あんた寝ぼけてる時表情筋緩いし」
普段はわかる人にはわかるか……?程度しか表情が動かないけど、寝てるときはちょっとだけ表情筋が仕事するんだよな、コイツ。
日向ぼっこ好きだし、寝るのも好きだし、動物も好きだし、常とは比べものにならないほど――は言い過ぎだけど、普通にわかる程度には表情筋が動いていただろう。
「それ、……何か、関係ある?」
「多分だけど。……しかしアレだな、おまえらって顔がいいから許されてるところ結構あるよな」
同じ名前の猫と間違えて抱き寄せるってベタすぎだろう。だがしかし顔がいいので『彼女』も照れたり恥ずかしくなったりするだけの反応で終わっているっぽい。首の皮一枚繋がっているんだかなんなんだか。
「……?」
「わかんないならそれでいいって。されたことがセーフだったのかアウトだったのかは本人にしかわかんないし。……っつーか本当相手に同情するよ。あんたらに遭遇するたび精神の消耗半端なさそうだよね可哀想に」
言うと、レンリはしょんぼりと肩を落とした。怒られたと思ったらしい。怒ってはいない。その権利は私にはない。……多分に呆れてはいるけど。
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