51 / 56
旅路をなぞる
布石・2
しおりを挟むとはいえ、実のところこれも予定調和の一つというか、多分タイミング的にこうなるだろうと『記憶』からして予想していたことだったので、驚いたとまではいかない。ユエと会話した直後になるかは微妙だと思っていたので、そこはちょっと予想外だったけど。
とりあえず、「……なーんて、ちょっと白々しいか」なんて続けたタキに、「……そうだな、少々」と返す。
「最初から、というわけではないだろうが――見ていたんだろう」
答えのわかっている問いを向ければ、タキは『前』、同じタイミングで現れた時と同じように頷いた。
「なんかあったら出ていこうかと思ったけど、ただ話してるだけっぽかったし、様子見してた」
「……そうか」
あっけらかんと言われるものだから、責める気にもならない。多分、心配してくれた――というとアレだけど、そういう気持ちもあっての行動だろうし、まあいいか。
『前』も私、流してたし。最初の接触自体はいつもどおりの凶器の来襲から始まったことは、言わなければわからないことだし。
「だが、ここで会えたのはちょうどよかった。君に二つほど確認しておきたいことがある」
「? 何だ?」
この『確認』を、シーファはレームの町を離れる前にするようにしていた。一つはタキの答えがその時々で変わるもの、もう一つは『最初』からずっと同じ答えが返ってくるものだ。前者はともかく、後者は今後の指針になる部分があるので、聞いておかないという手はない。
「一つ目の確認だが、……君はまだしばらく私達の旅に付き合ってくれるということでいいのだろうか」
「……あー、なるほど。拠点移動するから再確認ってことか」
タキの言う通り、ある程度レームの町での滞在期間があって、そこからの移動が決まったのと、ここでタキの知り合い……『シウメイリア』(『前』までは『シウメリク』だったけど)に会ったが故の問いだ。
そしてこの問いへの返答は、ひとまずタキがどの程度まで付き合ってくれるかの指標になる。それにシーファが気付いたのは、『旅』を十数回繰り返した後のことだった。
ぶっちゃけタキがここで離脱することもないこともない。『今回』のタキのあれこれを見る限り、その可能性は低そうだけど。
ここで離脱するのか、『旅』の行程の半ばより前にいなくなるのか、少なくとも半ばまでは付き合ってくれるのか、というのがここでの返答で判断できる。
それによって、多少動き方も変わってくるので、シーファはこの『確認』を必須にしていたわけだけど――。
「とりあえず、今のとこ他にやることがあるワケでもないし、もうしばらくはアンタらに付き合うつもりだけど」
「次の町以降も、ということでいいんだな」
「ま、何が起こるかわからねぇし、確定じゃないけどな」
「そうか。わかった」
返答を聞いて、内心ほっとする。
この答え方は、この時点でタキが口にする中では、最長――つまり旅の半ばまで付き合ってくれることが確定の時のものだ。
早々に離脱するよりは、できるだけ長く居てくれた方が戦力的に助かるので、これでひとまず戦闘面では安泰だ。……イレギュラーさえなければ。
イレギュラーについて考えたくはないけれど、『私』が『シーファ』であることが原因なのかそうでないのか、『今回』には既にいくつか『今まで』にない変化が見受けられる。そういう面からしても、タキがいてくれた方が安心するし――何より、『世界干渉力』を保持しているタキに、私の関知しない場所に行かれるわけにはいかない。
ゼレスレイドとの会話で、タキが意識的に揮うことが可能な強さの『世界干渉力』を保持していることを知った時と変わらず――限りなく低いけれど、完全に否定はできないタキ自身に及ぶかもしれない危険と、私自身の利己的で最低な、どうしようもない身勝手な理由故に、そう思考する。
……そう、思考する、のは――。
(……………?)
何かが、引っかかったような気がした。けれど、その何かは思考の端をすり抜けてしまった。
「そして、もう一つの確認だが――」
それよりも今はタキへの確認だ。とはいえ、残る一つの確認へのタキの言葉は、いつも変わりない。
「――君は、ヒトの形をしたものの命を、奪うことができるか?」
「……それがホンモノのニンゲンかそうじゃないかに関わらず、ってことだよな? ああ、できるぜ」
告げる事実とは裏腹に、タキの口調も表情も、軽やかとさえ言えた。
だけどこれは――『何度目』だって変わらない、返答なのだ。
そして答えたタキが、逆にこちらに問い返すのも、何度目だって変わらない。
「――そういうアンタは?」
「……そうせねばならない状況下なら」
「つまり、『そうせねばならない状況下』ってのが起こりうる、ってアンタは考えてるワケか」
「『魔王』――あるいは魔族や魔王の眷属が関われば、そういうこともないとは言えない。だから確認しておきたかった」
『記憶』からすれば、人型の魔族との接触は、多くもないが少なくもない。でも、それだけが理由じゃない。
魔に属するモノ達には、『人間』を利用しようと考えるだけの知能があるからこそ、この確認が必要なのだと、『記憶』が告げる。
――この『旅』の中、どれだけ『シーファ』が回避したいと願っても、『魔王』がそれにこだわる限り ――愉しみを、見出す限り。
必ず、『人間』を手にかけなければならない瞬間が、来るのだと。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる