【完結】±Days

空月

文字の大きさ
12 / 75
無理やり転校編

意外と世間は狭かったりする

しおりを挟む


「ああ、1限が終わったね」

「2限って何だったっけ?」

「特殊授業ですよ。……確か今日は新しい講師が来るはずですが」

「特殊授業? そんなのもあるわけこの学校」

「この学校っつーか、特別クラス限定だけどな」

「予定だと芸術家でしたよね、カンナ」

「そうだよ。資料によれば結構若い男だったはずだけど……」

「……それって、そこ……教室の前に居る人、じゃ……」

「へぇ……って、あ、」

「? どうしたの――」

「女神っ!!」

「!?」

「……お久しぶりです、浅見さん」

「女神、女神、本当に女神? 僕が幻視しているわけではないよね?」

「夢でも幻でもないですよ。……それより、何度も言っていますが、女神という呼称はやめてください。私もドン引きですが周りもドン引きですから」

「でも、女神は女神だよ。それより、どうしてここにいるの? 女神は公立の学校に行ったと聞いていたのだけど」

「ちょっとした事情がありまして。浅見さんこそどうしてここに?」

「僕のパトロンの関係で、ここの『特別クラス』っていうのに話をしに来たんだ。ええと、確か『特殊授業』講師ということになるのかな」

「……なるほど。あなたにそんな物が務まるのかという疑問はともかく、事情はわかりました」

「女神それちょっと酷い……でもそういうとこが好きっ!」

「色んな意味で問題な発言は控えてください浅見さん。本当に変わってませんね。少しは真っ当になったんじゃないかと淡い期待をしていたんですが」

「今更僕が変わると思うの? それより女神、今日は暇?」

「暇じゃないです」

「そろそろ僕のところ来てくれる時期だよね? せっかくだから今日来て! じゃないと僕女神欠乏症で死んじゃうよ」

「人の話は聞いてください。っていうかその女神欠乏症っていうネーミングはどうかと思います」

「だって女神、なかなか来てくれないし。約束してくれたのに酷い」

「私も忙しいんですよ」

「……来ないと石膏像作ってやる」

「……石膏像?」

「気にするなカンナ」

「文脈からすると脅しみたいですけど――」

「油絵も水彩画も描いてやる。最高傑作創ってやる。アトリエに全部飾って、奏ちゃんには裸婦画送ってやる。今日会ったからより正確に描けるし。依頼で書いてるやつも全部女神モチーフに描き直してやる」

「……浅見さん」

「ふんだ。女神が悪いんだからね。女神が来ないから女神の代わりに女神を描くんだもん。僕我慢したもん。来てくれなかったのは女神だもん」

「何歳児ですかあなた。幼児退行しないでください。ただでさえ子供っぽいのに。……わかりました。今日は無理ですが近日中に伺いますから」

「近日中じゃやだ」

「いい年して駄々をこねないでください」

「だって明確な期限がないと女神バックれそう」

「『バックれる』って……誰から聞いたんですかそんな言葉」

「みっちゃん」

「またあの人ですか。相変わらずろくなことしませんね。……バックれませんよ。近日中が気に入らないなら明日にでも伺います。それならいいですか?」

「……うん」

「石膏像も油彩画も水彩画も依頼品の書き直しもやめてくれますね?」

「……」

「や・め・て・く・れ・ま・す・ね?」

「ちぇー……わかった」

「何でそんな名残惜しそうなんですか」

「言ったでしょ? 女神は僕の女神なんだから、本当はいつだって見て、触れて、愛でたいんだって。でも女神も奏ちゃんも駄目だって言うから我慢してるんだよ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください」

「ちっ、やっぱりつっこんできたか」

「今本気で舌打ちしましたね!? ……じゃなくて、何なんですか、裸婦画とか触れていたいだとか!」

「っていうかそれ以前にどういう知り合いなの!? 何か家にしょっちゅう行ってるみたいな会話だったけど!」

「…………こ、恋人……とか……?」

「い、いやそれだったら流石に僕たちだって気付くだろうし、違う、よね……?」

「何であんたらがそんなに動揺するわけ? まぁ恋人ではないけど」

「女神女神、この子達何?」

「せめて誰って訊いてくれませんかね。……手前の4人は幼馴染で、我関せずでニヤニヤしてるのがついさっき知り合った人ですよ。幼馴染のことは話したことあるでしょう」

「嬢さん、ニヤニヤは酷いっつーかそこはかとなく悪意を感じるんだけど」

「えーっと、奏ちゃん曰くの『害虫』?」

「――…そんな形容してたんですか、兄さん」

「うん」

「全く……」

「ナチュラルにスルーはヒデェよ嬢さん……」

「『そうちゃん』で『兄さん』ってことは――」

「……もしかして奏さんのお知り合いなんですか、その人」

「そういうこと。まさかこんなところで会うとは思わなかったけど」

「恋人じゃなかったんだー! 良かったぁ~…」

「……うん、よかった……」

「いやだからなんでそんな安心してるんだあんたら。マジで謎過ぎるんだけど」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

処理中です...