【完結】±Days

空月

文字の大きさ
58 / 75
EXTRA(番外編)

【季節ネタ】トリック・オア・トリート! 2人目

しおりを挟む



 「こんばんは。早速ですが、Trick or Treat?」

 「こんばんは、ミスミ。もちろんお菓子をご馳走します。ってことでほら」

 「パンプキンパイですか。美味しそうですね」

 「素人が普通に作っただけの品だけど。まあわかってて来てんだからいいか」

 「ええ。では遠慮なくいただきます。……そういえばついさっきユズが『悔しいけどおいしい! でも悔しいー!』とか言いながら走っていくの見たんですけど、何したんです?」

 「何してんのユズ恥ずかしいホント恥ずかしい。そもそもなんで走って帰ってるの。あんたもだけどユズも車で来てなかったっけ」

 「だから後ろからユズの家の車が追いかけてましたよ」

 「捕まえて乗せてから騒がせてやればいいのに……」

 「あれが愛情なんでしょう。多分」

 「ヤな愛情だな。まあ関係ないからいいけど。……しかしお前年々衣装がグレードアップしてない?」

 「そりゃ、成長してるので」

 「いやそういう意味でなく……それもあるけど。だんだん凝ってきてるよね。モチーフは同じだけど」

 「似合います?」

 「似合う似合う。可能な限り近付いてほしくないくらい似合ってる」

 「……それ、褒めてるんですか?」

 「褒めてるよ一応」

 「一応ですか……」

 「そういえば毎年吸血鬼なのは何で? 好きなの?」

 「確かに好きと言えば好きですけど。貴方が言ったからですよ」

 「……言った? 何を?」

 「初めてハロウィンの仮装やったときに、『似合うね』って」

 「……それだけで?」

 「それだけとは何ですか。似合うと言われたら嬉しいでしょう普通」

 「いや、吸血鬼のコスプレが似合うって言われて喜ぶのもどうかと思うけど」

 「コスプレじゃなくて仮装ですよ。魔に扮することで魔から逃れるんです」

 「あー、そういえばそういう謂われだったね。でももう年齢的にアウトじゃない?」

 「ここ本場じゃありませんし」

 「……あっそう。やめる気ないわけね」

 「もう恒例になってますし。やめるなんて言ったらユズ辺りがごねますよ。それに楽しいですし」

 「楽しいのこれ」

 「楽しいですよ。貴方も諦めて相手するようになってくれましたし」

 「そりゃ、無視しても無視しても『Trick or Treat?』って言われ続ければ相手してお菓子あげる方が得策だって思うっての。イタズラも無駄に凝ってくだらないのばっかりだったし」

 「私たちなりに考えたんですけどねぇ」

 「ちなみに今年の仕込みはなんだったの?」

 「これです」

 「……何これ」

 「いわゆる血袋というやつですね。これを口に仕込んでいきなり吐血してみようかと」

 「……それイタズラって言うの?」

 「びっくりしません?」

 「まあびっくりはするだろうけどさ……」

 「限りなく血に似せてますけど染みにもならないし成分的には栄養剤なんですよ」

 「なんでそんな無駄なオプション付いてるの」

 「だって絶対飲み込みますし。服にも付きますし。うっかりすると床にも落ちますし」

 「……うん、そうだね」

 「なんですかその反応」

 「なんかもう面倒になった」

 「相変わらずストレートに言いますね。ユズ辺りだったら泣きますよ?」

 「さすがに泣きはしないと思うんだけど。凹むかもしれないけどそれはいつものことだし」

 「というか私も傷つきます」

 「ソウデスカ。それは悪かった」

 「……。とりあえず次が詰まってるみたいなんで帰ります……」

 「うんそうして。……あ、そのパイ、切り分けるとき気をつけて」

 「……? 崩れやすいとかですか」

 「いやそれは多分大丈夫だけど。中がね、ちょっと」

 「生焼け……ではないですよね?」

 「それは保障しない」

 「え。……いやそれでも食べますけど」

 「嘘だよ。焼き具合は計ったし大丈夫。……っていうかそれ一人で食べる気? ホールだけど」

 「だってせっかく貴方の手作りなのにもったいないじゃないですか」

 「その精神がわからん。まあいいけど。どうせあんた太らない体質だしね」

 「大事に食べさせてもらいます。それでは」

 「……。うーん、仕掛け、うまくいくかな。試作品では切ったらちゃんとソース出てきたけど、そもそも血に見えるだろうか。あとパンプキンとベリーソースって食べ合わせ的にどうなんだ? イける気がしたけどミスミって舌肥えてるしなー。まあいいや、不発だったらそれはそれで」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

処理中です...